見出し画像

搾油率のはなし

雨が続く日が多くて、
不安定な天候に翻弄され、
収穫を無事終えることが出来たのは
初めての収穫から1週間が過ぎる頃であった。

お願いしたアルバニア人一家の仕事は早く、
収穫量は今年が一番多くて
普段ならここで、大喜びしたいくらいだけれど、
今年の一番の問題は、「搾油率」。

搾油は、コールドプレスの場合
温度を極力低く保つようコントロールされながら搾り取られるから
通常でも14%前後がトスカーナの標準値。
今年は異常に低いのだと、どこの搾油所でも話題になっていた。

「今日は8.7%という最低記録を出したわ。」
搾油所のシモネッタがそう言っていたのを思い出す。

オリーブオイルは、100kg単位で計算されるのだけれど、
数%違うだけで、オリーブオイルの量は大きく変動する。
初日の収穫では、たったの10.8%だった。
たったの…と思うは、こちらの都合だけれど、
「今日の搾油で一番高い率だったわ。」と、シモネッタは言ってくれた。
けれど、3〜4%違うだけで、
100kgあたりのオリーブのオイルの量は3〜4リットルほど変わってきてしまう。
1000kgで30〜40リットル、当たり前だけれど、もっと大きなところでは、
もっと多くの損害になる。

雨で引き延ばされた最後の収穫は初日の半分くらいの収穫数だった。

雨が降ってしまったし、きっともっと少ないかも…と思っていた。
そんな矢先に届いた、シモネッタからのボイスメッセージ。

「今日はフィレンツェでフェスタね。搾油率、あなたのところのが一番高かったわ。」

それでも11.5%。
多分、きっとどこも、今年はこんな感じかと思う。
雨が降るよりも前に収穫したアレッサンドロのところも、11%だったらしい。

搾油温度を高く設定すれば上がる搾油率は
だがしかし、「味」と反比例する。
質は下げたくない。

搾油代は、出来るオリーブオイルの量でなく、
収穫されたオリーブの量で決まる。
だから当然、搾油率が低ければ、
それはオリーブオイルの金額の高騰化につながる。

今年のオリーブオイルの値段が上がっている…

巷で噂される値段の話は、
世の中の情勢とかそういう理由からだけではなくって、
こうして毎回違う天候に翻弄されて出来るオリーブオイルの量によっても
大きく左右される…ということを
作り手の立場から書いておこうと思う。

いいなと思ったら応援しよう!