幽谷小夜子

怪談が好きです。人から聞いた怖い話を書いております。

幽谷小夜子

怪談が好きです。人から聞いた怖い話を書いております。

最近の記事

【怪談】警備員の怪

わたしの友人は女性の身ながらトラックのドライバーをしていて血気盛んではつらつとしているのだが、どうやら霊感があるようで興味深い話をたくさん聞くことができた。 今回は彼女が体験した出来事をひとつ紹介していこうと思う。 その日彼女は関東のとある県へトラックを走らせた。 到着が深夜になってしまい疲労もあり、現場の駐車場で朝まで寝かせてもらうことにした。どうせ作業員がいないと荷物も下ろすこともできない。 コンコンと窓を叩く音で目を覚ました。もう朝か、結構寝たような気もする。カ

    • 【切ない怪談】斎藤さんとガソリンスタンド

      ガソリンスタンドに勤める知人には、仲のいい常連のお客さんがいた。斎藤さんという、近所に住むおじいちゃんだ。 斎藤さんはとにかく頻繁にそこのガソリンスタンドに来ては、給油や洗車を頼みつつ知人や他の従業員たちと楽しくおしゃべりをしていた。 雨の日でも洗車したがるものだから、流石に今日はやめときなよと知人が止めるが「数百円でも売り上げに貢献してぇんだ」とにこやかに言う。 斎藤さんの両親は昔ながらのガソリンスタンドを営んでおり、雨の日も真冬の寒い日も手を真っ赤にして働いているの

      • 【怪談】消えた死体

        わたしが通うマッサージ屋さんの店主から聞いた話。 彼は職人気質で冗談をあまり言わないような男性だ。 「まぁ、この人からは何も聞けなそうだなぁ」と失礼なことを思いつつ、例のごとく怖い話はないか聞いてみると、意外にも「ある」という。 彼が小学生のころの話。 彼が住む町には所謂飛び降り自殺の名所になっている崖があり、昼間でも薄暗く気味の悪い雰囲気の場所なので近づく者はあまりいなかった。 ある夏の日、彼はあることを思い立った。肝試しにあの崖の下に死体があるか見に行こう。その

        • 【怪談】夜の釣り客

          わたしの知人の話。 彼は釣りが趣味で、特に人の気配もなく存分に釣りに集中できる夜釣りが好きだった。 夜の海は幻想的だが、月の光に照らされてぬらぬらと揺れる真っ黒な水面に引き込まれそうで時たまぞっとすることもある。 強い引きがあり、これは大物だと期待しながら慎重にリールを巻いていると、後ろから声をかけられた。 「釣れますか」 中年の男性だろうか。野太い声だった。 「今やっと今日初めての当たりですよ」 そう言いながら振り返ると、 そこには誰もいなかった。

          いじめっ子に「うちらの名前書いた遺書とか残して自殺すんなよ」と言われた話

          ここ数日、心がざわついている。というもの、Twitterを始めとするSNSで見たくはないワードを頻繁に目にするからだ。 「いじめ」 中学三年生の、もう数週間で卒業という時期だった。クラスメイトのボスのような女子にこんなことを言われた。 「うちらの名前書いた遺書とか残して自殺すんなよ」 何が愉快だったのかわからないけど、笑い声混じりにそう言ったのはその学年のボスみたいな存在の女子だった。それを聞いて一緒に笑った取り巻きたちのそのときの顔も鮮明に覚えている。 ここでは彼

          いじめっ子に「うちらの名前書いた遺書とか残して自殺すんなよ」と言われた話

          【不思議な話】虫の知らせ

          むし【虫】 の 知(し)らせ なんとなく良くないことが起こりそうな気がすること。予感がすること。 ※洒落本・真女意題(1781)「氷川から来た子と名ざしよふしたも、大かた虫のしらせだろう」 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 「何か怖い体験ってしたことない?」と聞くと、たいていはないという返事が返ってくるのだが、「でもあのとき…」と続くことが少なくない。 それはどれも「虫の知らせ」を感じた話だった。 わたしの知人が学生時代に友人たちと北海道旅行に

          【不思議な話】虫の知らせ

          【不思議な話】知らないおばさん

          何か怖い話ないの?と男友達に聞いたときのこと。 「怖い話はないけど、今考えてもあれ何だったんだって話はあるな」 まぁそれでもいいか、と友達の話を聞き始めた。 「子どもの頃な、関東に住んでたって言うたやん?」 今ではすっかり関西弁な彼は、小学校を卒業するまでは関東のベッドタウンに住んでいた。 大きな町ではなかったので近所のおじさんおばさんやクラスメイトの保護者はほとんど顔見知りだったという。 「学校の近くに大きい陸橋があって、登下校はそこを通っとったんや。家が近かっ

          【不思議な話】知らないおばさん

          【怪談】天袋から伸びる手

          これは友人が子どもの頃の話です。 友人の部屋は二階にある和室で二歳年上の兄と共同で使っていました。布団を二組並べて寝ていて、頭のすぐ上には勉強机、足元には押し入れがありました。 画像提供 https://www.photo-ac.com/ 友人と兄は仲が良く、寝入るまで毎晩おしゃべりをしていました。 ある晩、兄がぽつりと言いました。 「最近さぁ、金縛りに合うんだよね。」 「金縛り?」友人は興味深々で聞きます。 「そう、真夜中に目が覚めると身体が固まったように動か

          【怪談】天袋から伸びる手