【怪談】天袋から伸びる手
これは友人が子どもの頃の話です。
友人の部屋は二階にある和室で二歳年上の兄と共同で使っていました。布団を二組並べて寝ていて、頭のすぐ上には勉強机、足元には押し入れがありました。
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友人と兄は仲が良く、寝入るまで毎晩おしゃべりをしていました。
ある晩、兄がぽつりと言いました。
「最近さぁ、金縛りに合うんだよね。」
「金縛り?」友人は興味深々で聞きます。
「そう、真夜中に目が覚めると身体が固まったように動かなくてさ、必死でお前を呼ぼうとするんだけど声も出ないんだ。それに…」
「それに?」
兄は口をもごもごさせて言いよどみますが、友人がせっつくとまた話し始めました。
「天袋が勝手に開いたんだよ」
それから何日か経った夜のことです。
ガタン
大きな音で友人は目を覚ましました。
何の音だろう?隣にいる兄に声をかけようとします。
しかし声が出ません。身体もまるで自分のものではなくなったかのように動かなかった、と友人は言います。
(金縛りだ…)
ガタン
そのとき友人は気づきました。
天袋がゆっくりと開き始めている。
恐ろしくて目をそらしたくても、視線を動かすことも目を閉じることもできません。
キキキ… ガタン
ゆっくりゆっくり開いた隙間から伸びてきたのは、
異形のものの手でした。
「鬼の手みたいだった」と友人は言います。
気付くと朝になっていました。気を失っていたようです。
夢だったのか、とほっとして兄に話しかけます。
「兄ちゃん、俺さぁ」
視界の端に天袋が映りました。
隙間が開いている天袋が。
その後しばらくして友人家族は引っ越してしまったのでもう確認のしようがありませんが、天袋には一体なにが住んでいたのでしょうか。
そして、そこに今もいるのでしょうか。
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