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【怪談】夜の釣り客

わたしの知人の話。

彼は釣りが趣味で、特に人の気配もなく存分に釣りに集中できる夜釣りが好きだった。

夜の海は幻想的だが、月の光に照らされてぬらぬらと揺れる真っ黒な水面に引き込まれそうで時たまぞっとすることもある。


強い引きがあり、これは大物だと期待しながら慎重にリールを巻いていると、後ろから声をかけられた。


「釣れますか」

中年の男性だろうか。野太い声だった。

「今やっと今日初めての当たりですよ」

そう言いながら振り返ると、

そこには誰もいなかった。



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