【怪談】消えた死体
わたしが通うマッサージ屋さんの店主から聞いた話。
彼は職人気質で冗談をあまり言わないような男性だ。
「まぁ、この人からは何も聞けなそうだなぁ」と失礼なことを思いつつ、例のごとく怖い話はないか聞いてみると、意外にも「ある」という。
彼が小学生のころの話。
彼が住む町には所謂飛び降り自殺の名所になっている崖があり、昼間でも薄暗く気味の悪い雰囲気の場所なので近づく者はあまりいなかった。
ある夏の日、彼はあることを思い立った。肝試しにあの崖の下に死体があるか見に行こう。その夜、さっそく彼は悪友のAとBを連れて崖へと向かった。
崖の下は河原になっており、葦や背の高い雑草が生い茂っていて見通しが悪い。
結論からいうと、あった。
しかししんがりを務めていた彼は先頭を行くAの「きゃっ」という短い悲鳴を聞いてすぐに目を背けたので、目の当たりにすることはなかった。
彼らはすぐさま大人を呼びに行き、その場所へ案内した。
しかし、
なくなっていた。
そこにあったはずの遺体が、血だまりが乾いた跡だけ残して忽然と消えたのだ。
その後は迎えに駆け付けた親たちにこっぴどく怒られながらそれぞれの家に帰ったので現場がどうなったかは分からない。
そこに「あった」遺体が独りでに動き出してどこかへいったのか、それとも何者かが発覚を恐れて連れ去ったのか…
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