松葉杖がこんなにツラいとは
生まれて初めて使う松葉杖。
腕の力だけで全体重を支えて歩く。
頭ではスイスイ動けるつもりだったが、実際に歩いてみると、とんでもなくつらい。10歩も進めば肩や腕がプルプル。50メートルはおろか、10メートルだって気が遠くなるほど遠く感じた。
娘の幼稚園参観で、当日突然始まったパバママリレー。ついおだてられて走ってしまい、トホホの靭帯断裂。東京、京都、大阪の三都市を毎週末渡り歩く生活の私には、約半年におよぶ松葉杖生活は本当につらかった。ガラガラ引いていたスーツケースを、リュックサックに変えた。
はじめの1ヶ月は、ギブスのかかとにヒールがついておらず、完全に肩と腕に頼っての松葉杖歩行。自宅から会社までわずか徒歩10分のところ、1時間以上かかることも。これはさすがにつらかった。遅刻しそうになって、タクシーに飛び乗ることもしばしば。あきらめて途中からはマンション前からタクシーに乗ることにした。
そんなこんなで、怪我をした私は、1つのルールを決めた。いま私が倒れると、我が家の四拠点生活(※)がなりたたなくなる。
※東京で働く私、京都の実家で暮らす娘、大阪にある我が家、沖縄で働く旦那の四拠点。
だから身体の負担がかからないように、少しでも楽なほうを選ぶこと。そのためにはお金に糸目をつけないこと。毎週末の帰省で娘に会いに行くために、体力温存が一番だ。
大学院にはタクシーで通った。はじめは電車で通ってみたものの、電車だとエスカレーターまで遠回りして歩くのがつらく、早々に断念した。怪我をしてはじめて、からだの不自由なかたの大変さをつくづく実感した。人生でこれでもかというくらい、タクシーを活用した。
その時に購入したのが、くるくるまわるキャスターつきの黒い丸いす。せめて部屋の中では座りながら、移動が楽になるのではと購入したのだ。愛着がわいて、いまでも捨てられず、我が家で大活躍している。
帰省したとき、京都と大阪の移動では、娘とたっぷりの荷物を車にのせて帰っていたが、右足の甲の怪我をした私は、ブレーキやアクセルがふめないので、車の運転は断念。運転ができなくなったので、沖縄から帰省してくる旦那に、京都経由で帰ってきて貰うことになった。
みんなの力を結集し、相変わらず、四拠点を繋いだ我が家の生活は、さらに高度に進化していった。