【映画評】「怒り」 本当のあなたは何者なのか
八王子で発生した夫婦惨殺事件の犯人は未だ見つかっておらず、犯人の山神は、以前として逃走したまま
懸賞金が懸けられ、TVの公開捜査へと踏み切られたときに、東京・房総・沖縄でそれぞれ静かに暮らしている三人の主人公たちの生活が、大きく揺らぎ始めるー
本当のあなたは、一体、何者なのか
犯人の山神ではないのかー
東京ー
ゲイの青年が、いわゆるハッテン場で男と出会い、住むところのない彼を家に住まわせ奇妙な共同生活を始めるが、山神を思わせる身体的特徴に、次第に彼のことを犯人ではないかと疑い始め、混乱しー
房総ー
漁村にふらりと現れた男は、前職の経歴と名前を偽っていて、恋人の愛子とその父親は、真面目に働くがどこか他人と距離をとりたがるその男への信頼感が次第に揺らぎ始め、混乱しー
沖縄ー
米兵にレイプされ、心に大きな傷を負ってしまった少女
その少女に心を寄せる少年は、ある日孤島で自活して生活する風変わりな男と親しくなり、その男の奇妙な言動を疑い、混乱しー
いつも近くにいる、あなたのことは本当は何もわかっていないのかもしれないという、現代における「つながり」の危うさを、三人称で重層的に描くことに成功した本作
三人の主人公たちを取り巻く人間関係も重厚に練られていて、それぞれが独立した複雑な事情を抱えている
ミステリーの要素もふんだんに盛り込み、この三箇所の土地にいる誰が山神だったのか、そして何が「怒り」だったのかがラストに向かって綺麗に収束されていく、見ごたえのある作品