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日本銀行は、形式的には、金融緩和政策を継続するとしている。しかし、実際には、密かに緩和政策から脱出しようとしている。 日 銀は、2013年4月4日の「量的・質的金融緩和の導入について」(いわゆる「異次元金融緩和」)において、「長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」 とした。 さらに、2014年10月31日の「量的・質的金融緩和の拡大」(追加緩和)において、「長期国債の保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよう買入れ
2017年には、賃金が高い伸びを示した産業があった。 表1にみるように、製造業の伸び率は1.3%であった。注目すべきは、賃金水準が低い医療福祉も、1.6%という高い伸び率を示したことだ。 こうした数字から、日本でもいよいよ賃金の上昇が本格的になり、経済活動の好循環が始まると言われることがある。 しかし、それは、数字のトリックにすぎない。個別の産業での高い賃金上昇率にまどわされてはならない。 実際、全産業の賃金上昇率は、2017年で0.4%でしかない。2016年に
2016年から17年にかけての企業活動は好調だった。その大きな理由は円安が進んだことだ。 「為替レートで振り回される企業利益」で述べたように、日本の企業活動は、為替レートで大きく左右される。 2015年の秋からは円高が進行した。後で見るように、この期間には、企業の売上高も利益もあまり好調でなかった。 ところが、下図に見るように、円ドルレートは16年9月の1ドル 102円をピークとして、その後は円安になった。 とくに、16年11月には、アメリカ大統領選でトランプ
アメリカの賃金所得の動向を見ると、産業別に著しい違いがある。 まず製造業の賃金所得の動向を見ると、図1のとおりであり、1990年代末から現在まで、あまり大きな変化はない。 図1 アメリカ 製造業 賃金所得の推移(単位 年間、百万ドル) しかし、サービス産業のなかの「専門的、科学技術的サービス」(Professional, scientific, and technical services)は、図2に見るように、1990年代末から現在までの間に、3倍近くに増加して
日本の消費者物価が伸びない原因の一つは、工業製品価格が下落するからだと、「消費者物価はなぜ上がらないのか?」で述べた。 これは新興国工業化の影響だ。なかでも、中国工業化の影響が大きい。 これに対しては、、つぎのような反論があろう。中国工業化の影響なら、どこの国も同じはずだ。では、アメリカの消費者物価が上昇しているのはなぜか? 確かに、アメリカの消費者物価(総合)は、図1のように上昇している。 図1 アメリカの消費者物価(総合)の推移 これは、日本の消費者物価が
日本銀行は、金融政策の目標として「消費者物価の対前年上昇率を2%にする」こととしている。 しかし、実際の値はこれとほど遠いので、2018年4月には、これまで「2019年度ごろ」としてきた目標の実現時期に関する記述を削除した。 7月28,29日の政策決定会合においては、物価見通しの引き下げを議論する予定だとみられている。 この機会に、消費者物価がなぜ上昇しないのかについての突っ込んだ議論が必要だろう。以下では、その議論の基礎として、日本の消費者物価の長期的動向を見る
「鶏卵の自給率は13%」 農水省の発表によると、こうなっている。 すると、スーパーで昨日買った卵は外国産か?不思議なことだと思う人が多いだろう。壊れやすい卵を運ぶのは大変だし、腐るから早く運ぶ必要がある。輸送費も大変だろう。 しかし、そんな心配は無用だ。あなたが昨日買った卵は、まず間違いなく、国内で産み落とされたものである。それなら、なぜ卵の自給率は、13%という低い数字になるのか? 鶏が食べる飼料が輸入だと、その鶏が産んだ卵は、国産とはカウントしないからで
国ごとの経済成長率には、かなりの差がある。これを、長期的な観点から見ると、つぎのとおりだ。 図1に示すように、中国の実質GDPの成長率は、1980年から2010年頃までの期間を通じて10%程度だったのに対して、日本とアメリカの実質GDP成長率は、80年代には5%程度だったが、90年代以降は5%未満に低下した。 図表1 日米中の実質経済成長率(%) この結果、世界のGDPに対する比率も、図2に示すように、かなり大きく変わった。 日本のGDPの世界GDPに対する比率は
日銀が発表した6月の短観で、大企業製造業の景況感が、2期連続で悪化した。5年半ぶりだというので注目を集めている。 製造業景況感悪化の理由として言われているのは、原油価格上昇などに伴う原材料価格の上昇を転嫁できないということだ。新聞報道は、このような日銀の説明をそのまま伝えている。 これは、「物価が上昇すればすべて良くなる」という日銀の論理に基づく解釈だ。 しかし、消費者物価の動向を見ると、図2のとおりであり、これまでと同じように、輸入価格の上昇が転嫁されて、上昇し
産業別の現金給与総額を見ると、下表のとおりだ。 調査産業計では27.7 万円だが、製造業が32.3 万円と、これより高くなっている。 これに対して卸売業、小売業は24.8万円、医療、福祉は20.9万円と、平均より低くなっている 調 査 産 業 計 276,663 鉱業,採石業等 310,578 建 設 業 346,269 製 造 業 323,133 電気 ・ ガス業 448,084 情
「医療介護従事者が全体の4分の1になる」で、 今後の日本経済で人手不足が深刻化すると述べた。では、それによって賃金は上昇するのだろうか? 「毎月勤労統計調査」の賃金指数によって、日本の名目賃金の長期的な推移を見ると、図1のとおりだ。調査産業計で見ると、1997年をピークとして、その後は傾向的に低下している。 2010年頃以降はほぼ横ばいになった。 最近の名目賃金の上昇率を見ると、図2のとおりだ。0.5%程度の上昇率でしかない。 図2 名目賃金の対前年比(%)