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消費者物価はなぜ上がらないのか?

 日本銀行は、金融政策の目標として「消費者物価の対前年上昇率を2%にする」こととしている。
 しかし、実際の値はこれとほど遠いので、2018年4月には、これまで「2019年度ごろ」としてきた目標の実現時期に関する記述を削除した。

 7月28,29日の政策決定会合においては、物価見通しの引き下げを議論する予定だとみられている。

 この機会に、消費者物価がなぜ上昇しないのかについての突っ込んだ議論が必要だろう。以下では、その議論の基礎として、日本の消費者物価の長期的動向を見る。

 まず、消費者物価指数(総合)の対前年比を見ると、図1のとおりだ(単位%)。

図1 消費者物価(総合)の対前年比の推移

 1970年代に石油ショックがあって消費者物価は高騰したが、それから脱却して以来、対前年伸び率は低下した。 85年以降で2%を超えたのは、 85年、89、90,91、そして 2014年だけだ。
 このうち、89,90,91には消費税の影響がある(消費税導入は89年4月)。 その後、税率の引き上げが、97年4月(3%から5%へ)、14年4月(8%へ)に行われた。97年と14年で消費者物価が上昇しているのは、このためだ。
 なお、09年は、リーマンショック後の原油価格高騰 の影響だ。

 総合指数の水準をみると、図2のとおりだ。

図2 消費者物価(総合)の推移

  90年代の半ばからほぼ一定で変化していない
 指数は、95年が 97.6 、17年が 97.6なので、消費税の影響を差し引けば、20年間で5%低下したということになる。
 (なお、ここでは、消費税率の引き上げ分だけ物価が上昇するとした。実際には、物価上昇はこれより低い。2回の消費税増税の影響は3%程度とも見られる。その場合には、「20年間で3%低下」ということになる)

  の価格をみると、95年が 100.7で17年が 100.4だから、消費税の影響を差し引けば、20年間で 5.3%の 低下ということになる。

 財の中で工業製品を見ると、図3のように、価格は低下はもっと著しい。

図3 工業製品の価格の推移

 すなわち、95年に 106.6だったのが17 年に100.5なので、消費税の影響を差し引けば、20年間で 11.1%の 低下だ。
 このように、消費者物価の下落は、工業製品の価格低下によってもたらされている

 なお、サービスの価格の推移を見ると、図4のとおりだ。

図4 サービスの価格の推移

 95年に 94.4であったものが17年に 100.3になっている。
 消費税の影響を差し引けば、20年間で0.9%だけ上昇したことになる(上述のように消費税の影響が3%だとすれば、2.9%の上昇ということになる)。






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