アメリカで成長する高生産性サービス産業
アメリカの賃金所得の動向を見ると、産業別に著しい違いがある。
まず製造業の賃金所得の動向を見ると、図1のとおりであり、1990年代末から現在まで、あまり大きな変化はない。
図1 アメリカ 製造業 賃金所得の推移(単位 年間、百万ドル)
しかし、サービス産業のなかの「専門的、科学技術的サービス」(Professional, scientific, and technical services)は、図2に見るように、1990年代末から現在までの間に、3倍近くに増加している。
図2 アメリカ 専門的、科学技術的サービス 賃金所得の推移(単位 年間、百万ドル)
生産性の高い新しいサービス産業が成長していることがアメリカ経済成長の原因であることは、「シリコンバレーを散策してみる」などで見たとおり、明らかなことだ。
それは、上で見たように、産業別の賃金にも表れており、それが「工業製品価格下落の影響は、アメリカも日本と同じ」で見た消費者物価の動向にも表われているのだ。
「消費者物価はなぜ上がらないのか?」で述べたように、日本の消費者物価が伸びない原因は、工業製品価格が下落するからだ。
実は、工業製品については、アメリカでも同じ傾向が見られる。それにもかかわらずアメリカの消費者物価が伸びるのは、サービス価格が上昇するからだ。これは、高度サービスが登場しているからだ。
日本経済が停滞するのは、アメリカのような「専門的、科学技術的サービス」が誕生していないからである(そもそも、統計にそのような分類がない)。
それが賃金の動向にも表れあ、そして、消費者物価の動向にも表れているのだ。