工業製品価格下落の影響は、アメリカも日本と同じ
日本の消費者物価が伸びない原因の一つは、工業製品価格が下落するからだと、「消費者物価はなぜ上がらないのか?」で述べた。
これは新興国工業化の影響だ。なかでも、中国工業化の影響が大きい。
これに対しては、、つぎのような反論があろう。中国工業化の影響なら、どこの国も同じはずだ。では、アメリカの消費者物価が上昇しているのはなぜか?
確かに、アメリカの消費者物価(総合)は、図1のように上昇している。
図1 アメリカの消費者物価(総合)の推移
これは、日本の消費者物価がは90年代以降一定だったのとは明らかに違う動きだ(「消費者物価はなぜ上がらないのか?」の図2参照)。
実は、日米の違いは、工業品以外にあるのだ。
まず、「食品、エネルギー関係を除く財」を除くと、図2のように、アメリカも90年代の中頃以降、ほぼ一定だ。
図2 アメリカの消費者物価(食料品とエネルギー関係を除く財)
「消費者物価はなぜ上がらないのか?」で見たように、日本もそうだった。つまり、中国工業化の影響は、アメリカもほぼ同じように受けたのだ。
日米の違いは、サービスの価格の上昇だ。
日本の場合、「消費者物価はなぜ上がらないのか?」で述べたように、 サービスも2000年以降一定になった(指数は、1995年が 94.4で、2017年が 100.3 )。消費税の影響を考えれば、0.9%しか上昇していない。
ところが、アメリカの場合、図3に示すように、サービスの価格の伸びがきわめて大きいのだ。
図3 アメリカの消費者物価(エネルギーを除くサービス)
指数は、1995年から2018年までに、実に88.4%も上昇している。
これは、高度サービスが増加したからだ。
日本でサービスの価格が目立って上昇しないのは、そうしたサービスが登場していないからだ。ここに、消費者物価が伸びない原因がある。