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自分にしか出せない色は苦しさの中にある

 重い話というか、つまらない話を書く。  私は来年の1月で28歳になる。平成9年生まれ。丁丑(ひのと・うし)    27や28歳になると、自分の周りがどんどん変化していくのを感じる。 友人の一人は母親になり、違う友人は来年の3月に結婚する。もう一人の友人は30代のうちに起業したいと言って仕事に打ち込んでいる。フリーターのような生活をしている友人もいるが、彼女は彼女なりの夢というか人生の目標があるので20代を無駄に過ごしているわけではない。  障がい者になる前の私は今の年齢

韓国の記憶④

 全州二日目  韓国での二日目。はじめて迎えた全州の朝。昨夜の熱すぎるオンドルのせいですっかり寝不足。オンドルが熱すぎて寝れなかったとミギョンに訴えたら今夜からベッドで寝なさいとのお言葉。オンドルの温度は調節できないのか訊ねてみると出来るという。じゃあ私が床に寝ると言うと温度を下げてもそれでも暑がると思うよ、とのこと。余所の家のオンドル事情は聞きそびれたので知らない。  窓開けたんか?と訊かれたので暑かったから開けたというと物騒だから絶対にアカンと言われた。〇姦されたり強盗

韓国の記憶➂

全州にて初日  全州に着くとバス停までミギョンが彼氏と迎えに来てくれていた。昨年まで兵役に就いていたという彼は日本人男性にはない精悍さというか、落ちつきがあった。あとで気づいたのだが、この落ち着いた雰囲気はミギョンから紹介された韓国人男性皆に共通していた。やはり兵役のせいなのだろうか。  そしてホテルに向かいチェックインをしようとするとミギョンがホテルはキャンセルして私の家に泊まれという。さすがにそれはちょっと無理だよと言っても聞いてくれない。親切なんだがやや迷惑でもある。

韓国の記憶②

 全州へ  高速バスはサービスエリアを全州に向けて出発した。  私はトイレからバスに戻ろうとして自分が乗ってきたバスが分からなくなってしまい、たくさんのバスの周りを右往左往していたけど、たまたま一緒のタイミングでバスを降りた老夫婦の姿を見つけ、何とかバスに戻ることが出来た。あの老夫婦のことを覚えていなかったら、もしかしたらバスに戻れなかったかもしれない。そうだとしたらどうなったんだろう。でもまあなんとかなったんだろう。  夕暮れ時の山間部をバスは走る。だんだんと陽が沈んでい

韓国の記憶➀

仁川から全州へ  大学生のとき、韓国語なんて全く話せないのに韓国に行った。仲良くなった留学生のユンさんの実家を訪れることになって、半年前に留学を終えて帰国していた彼女のもとに向かうために単身韓国を訪れた。  仁川空港に着いて苦心惨憺何とか苦労しながらも入国して、バスターミナルに向かい切符を買う列に並んだ。いざ自分の番が来て切符売り場のおばちゃんに「チョンジュ」と伝えるのだけど一向に通じない。仕方がないから紙切れに「全州」と書いてみせたらどうやら漢字が読めないらしい。おばちゃ

※ショッキングな内容を含みます。そういうのが苦手な方には、読むのをおすすめしません。 「あの時、水道工事で断水してるのを知らなくて、うんこをしたから困ったよ」  ミスドで辻が、ポン・デ・リングを手にとってしみじみと語り出した。大学時代の話らしい。  仕事の帰りにコンビニでたまたま出くわして、ちょっと茶でもしようと云うことになった。コンビニとミスドの間には、不動産屋とクリーニング屋と昭和っぽいブティックが入っていた。前を歩きながら、今時こんなブティックで服を買う人があるんだろ

スキの重み(独り言)

今日は記事お休みします、と言いながらも少しだけ思ったことを書いてみる。 自分もnoteや𝕏で毎日スキやいいねを頂くし、そのことがとても有難い。リアル生活では手軽に味わえない自己肯定感をいただいているし、励みになっている。同じ思いを返したくて、自分も毎日スキやいいねを送っている。 この重みについて、可視化できたらいいのに、という話。 同じスキでも、ほとんど内容読まずに押すスキと、スキ10個以上押せたらいいのに、のスキは同じ顔をしている。 自分の場合、スキをして下さる皆さ

詩|ずっと夜だった

   小さな夜に鍵をかけて 星たちの行列を眺めていた 瞬くのを待っている 流れるのを待っている ちぎれた夜を貼り合わせて たよりない眠りの中を彷徨う 浮かび上がる夜の輪郭の中で 別な夜が影になっていった 海を思い出して両手を広げた 夜の木漏れ日の中を泳いでいく 夜の中を飛び魚のように跳ねる 夜の中にしか見えない虹をみた わたしはずっと夜だった ずっと夜だった / 月乃 _✍︎ ヒトリゴト。 アトリエにこもって仕事をしている。 集中しすぎて頭がぼぉーっとしてきた

Father complex

「今夜、飯食いに行くか?」 「うん。行く。」 「じゃあ八時に、西口の改札な。」 こんなふうに私は時々、父親と会っていた。 会いたい時に会えるようになったのは、15年ぶりだった。当時、私は美容院でアシスタントとして働いていて、半年くらいの間だったけれど偶然にも父の勤務先も同じ沿線だったので、月に1、2回会って食事をするようになった。 待ち合わせ場所には、いつも私が先に到着する。私に気づいてちょっと小走りになる父の姿を見るのが好きだった。 「おう。待ったか?」 変わらない

1回だと普通の言葉なんだけど、2回繰り返すとなんだかち○こっぽい言葉4選

おはようございます! げんちょん史上最高にアホみたいなタイトルを思いついて、まだ記事を書き始めたばかりなのに既に達成感でいっぱいのげんちょんです。 #挨拶文を楽しもう #このタイトルよりアホなタイトル見た事ない 今日の記事はタイトルそのままの内容なのでこれ以上説明のしようがありません。 この記事を読んで他の人がどう思うかは分かりませんが自称『清楚な奥様』の2人はゲラゲラ笑ってくれるんじゃないかなぁと思うので、この2人に向けてセクハラ記事を作っていこうと思います! 記

『ノルウェイの森』をギリシャ神話として読む、という提案

遅ればせながら、村上春樹の『ノルウェイの森』を読んだ。 読もう読もうと思っていたのだが、周りに「読んだけど、あまり面白くなかったよ」と言われていた。その先入観で後回しにしてしまっていた。 実際読んでみると、「面白くない」と言いたい気持ちもちょっと分かる。 だが、私は「仮説」を立てることで、良い読書体験をすることができた。 いや、仮説とも言えない…もう「思い込み」の領域である。 「思い込み」とは、「ノルウェイの森がギリシャ神話である」というものだ。 私はハルキストではな

言葉の港(2024秋ピリカ受賞作)

老人は窓越しに海を見ていた。 「鉄の船」が去った後のさざ波が、港の静けさを際立たせた。 かつて、老人はこの港で働いていた。 次々に運ばれる積荷の中では、無数の文字がひしめきあって、口々におしゃべりをしていた。 文字は、他の文字と惹かれあって、言葉になった。 仲良しの文字同士は、物語になった。 愛し合う文字同士は、詩になった。 出稼ぎを望む文字同士は、情報になった。 くっついた言葉を、そっとつまむ。 一つずつ、「紙の船」に乗せる。 早朝から日が暮れるまで、ひたすらこの作

下書き再生工場跡地に現れる少女

ジャリ 乾いた砂を踏む音が聴こえるくらい静かだ。 当たり前だ。目の前にある建物には人の気配もない。 そもそもこんな辺鄙な場所に訪れる人もいない。 ここはかつて再生工場と呼ばれた場所。 この地にまた戻ってきてしまった。 この夏、お仕事案内所の掲示板に突如貼られた紙には『匠募集。下書き再生工場』とあった。 期間は短かったが、募集要項には『未経験でもOK。シフトは相談可能。』とある。 私は目が悪い。そしてあまり集中力がない。だから文字の読み間違いを頻繁にやってしまう。

「電球のかぐや姫」#下書き再生工場〜もう帰りたい〜

本田すのうさんの企画、#下書き再生工場。 誰かの下書きをお題として、別の人が執筆するという素敵な試みだ。私も参加したいと思い、とらふぐ子さんの「もう帰りたい」というお題を使わせてもらった。(素敵なアイディアありがとうございます!) ぜひ読んで!と言いたいところだが、いかんせんめちゃくちゃ長くなってしまった。(本編16080文字前後) でも、本音は…全部読んでほしい。 全部読まないと、この物語は終わらない。 全部読んでくれるためなら、何でもする。 まず、目次つきの章立て