月乃
いつも孤独を抱きしめながら、放課後のほとんどを書店で過ごしていた中学時代。銀色夏生さんの詩集に心がふるえて、詩を書き始めた。 今も孤独を愛し、書くことで心を満たす。 ツキノポエトリー創刊です♡
そっと足を踏み入れた20字小説の世界。 掬っても掬っても指の隙間からこぼれてしまうような星の砂…そんな言葉たちを綴っていけたら。
なにげない日常だったり、ふらりと立ち寄った過去や、ふと思い出した記憶を拾い集めて、言葉の花束にしてみたい。 切り取ったシーンをそのままに ノンフィクションを始めてみる。 人生のカケラを集めた月乃のキリトリエッセイ集♡
「ツキノは、なんでいつも寂しそうなの?」 唐突すぎるチアキくんの言葉が、わたしの小さな胸をぎゅっと締めつけた。 小学六年生の時に好きだったチアキくん。 すごく優しくて、アイスホッケーをやっていて、クラスで一番小さかったわたしの2.5倍くらいはある大きな身体の男の子だった。 ああ、わたし寂しそうな顔してるのか。しかも、いつもって。知らなかったな。ただの根暗な少女じゃないか。 でも、チアキくんがわたしを見ていてくれたってことがすごく嬉しかったのだ。 チアキくんと両思いだと
そよ風のような毎日ばかりは望まない 突風や竜巻や木枯らしの日があるから 人生はおもしろいのだと風や星が笑う 木は風に揺らされるたびに強くなって 太くなり枝をつくり葉を散らしながら その根っこは大地へと深く深く伸びて クリスタルの地底世界へ繋がっていく 個であり全であることを知ってもなお 自信をもてずに燻ってるわたしなんて 星にまぎれて流れてしまえばいいのに 自分の不甲斐なさと添い寝をしながら うすくなっていく部屋の空気を集めて 自分の思い込みだけでつくった檻の中 蠍座の
真っ白な時間が積もっていく音 たとえ耳が壊れてたって聴こえる 張りつめた空気が静寂を奏でて さらさらと降りつづく雪のリズム まだだれも足を踏み入れたことのない 降り積もった新雪のベッドに横たわって 仰向けになって舞い降りてくる結晶を 切ない気持ちで待ってるのが好きだった 花びらみたいにハラハラと散って 渇いた唇に張りついて溶けていく あの冷たい感触は憶えているのに あの日の空の色だけ思い出せない ずっと詩を書いていた 白だけの世界で たったひとりで 涙を凍らせたまま
不思議なくらい身体がふわりと軽くなって 神秘的な解放感に満ちてゆく 自由度がぐんぐん上がっていくのを感じる 時代の大転換期の真っ只中で わたし達は次の今を自分の意思で選んでいく 信じられないかもしれないけど 信じたくないかもしれないけど これまでの経験すべては魂が決めてきたこと それを思い出し本質に還っていく この人生をやりたくて選んできたのはわたし もう魂はやりたいことしかできなくなる もう何があっても自分に嘘がつけなくなる もう一度、ここからはじめよう
あなたがあの日くれたのは 四つ葉のクローバーじゃなくて 季節はずれのシロツメクサの冠 花言葉は「わたしを思って」 願いは叶わないまま 日記の最後のページに閉じこめて 悪い夢の続きを見ているみたい もっと触らせて欲しかった心の奥 永い永い眠りにつくその前に シロツメクサ / 月乃
冬空の隙間から白い声 ずっと雪を待っている 凍える心はふるえるだけ 燃えているのは太陽だけ 厚手のコートの内側に 君の気配だけ忍ばせて 今日もひとりきり歩いていく 空はまだ雪を降らせてはくれない 持て余してるものが何かさえ わからないままで 言葉なんか役に立たなくて 雪が咲く空に散ってゆくのは涙 ただ、君を待つように ただ、雪を待つ 雪を待って / 月乃
まだ満ちていない未完成の月 まんまるにはまだ少し足りないけれど いびつなカタチがなんだか可愛くて いつまでも眺めていた紺色の空 寒いからもう入れば。と、あなたが言う うん、もう少し。と、わたしは答える 小さなベランダに落とした白い息と 星が消えた街にそっと置かれた宵の月 未完成のままでも いいのかもしれない いつか完成する未来があれば じゃあ完成した未来の先には どんな未来が待ってるの ねえ、未来に未来はないの 月はなにも答えてはくれないけれど あるのは目の前の今
あなたみたいな人は きっとあなたしかいない
水平線に落下していく真っ赤な夕陽 受け止める覚悟で飛び込んだら傲慢 掴めないとわかっていて手を伸ばす ないものねだりが好きなだけの煩悩 悲しみの瞬間と喜びの瞬間が交わる その絶妙なポイントで命を燃やして その一瞬という奇跡を味わいながら 空で咲いたような彩雲に目を細める 不器用なのに器用なふりをしていて 自分じゃない自分を生きてしまって とてつもなく後悔しているけれども そんな日もあったっていいんだよと 本当はそんな不器用な自分が好きで 大好きだよって抱きしめたい夜だよ
瞼の向こう側に朝の気配を感じて ゆっくりと今日という白き世界を 受け入れていく準備をはじめる 視界に現れる色彩の散らかりを まっさらな心で見つめながら 今日の生まれたてのわたしに そっと「おはよう」と声を届ける ずーんと頭が重いのは 昨日の想いを持ち越してしまったから まつ毛がふるえてるのは 夢の中で流せなかった涙のせい 秋の深まりを堪能する暇もなく 駆け足でやってくる冬を捕まえる もうすぐわたしに降りかかる さまざまな雪の色を想像した わたしの冬はあたたかい 灰色の
記憶の蓋をひらいてウミガメの産卵 ぽろぽろと産み落としてく言葉を 丁寧に文字にして並べていった月夜 本当はすぐ光にあてたかったけど 外側の反応が急に怖くなってしまった 行き場をなくてしまった言葉達は ひっそりと引き出しの中で息をころす 一度空気に触れてしまったものを またわたしの中へ戻すことはできない どうしてこんなにも怖いんだろう 誰かに認めて欲しいわけじゃないのに ただ自分の記憶を整理したいだけ 誰かを傷つけるとかもうそんなことに 怯えるのはキレイゴトでズルくて 傷つけ
今日はチンアナゴの日なんだって笑。 みんなにイイコトがありますように♡
空が青いというだけの真実が完璧すぎて わたしはその完璧さに不安になってしまう 作り物みたいに縁取られた雲が笑いながら バカだなぁ君は。そう言って流れていく わたしは今、 どれだけ自分を知っているんだろう わたしは今、 自分を生きてると言えるのだろうか 変えられるものと変えられないもの コントロールできるものとできないもの 十分わかっていたつもりだったのに 我儘になってしまった心を悔やんでいる ただ青いだけの空がそこにあって ただわたしで在るだけの今がここに ニーバーの
今日は朝からちょっと心がぐずぐずしていたんだけど。それどころじゃないくらい大変なことが起きてしまった。仕事も手につかず、とりあえず落ち着くため散歩に。歩きながら空見てたら、転びそうになった笑。落ち着こう。ふらっと立ち寄った本屋さんで気になっていた本を買って休憩♡
見たくない夢をみて 泣けないのに涙だけこぼれて 見たかった夢を忘れて 泣いているのに涙さえ出ない 甘えてる場合じゃなかった 諦めてる場合でもなかった 萎んだ心も褪せた空も変わりゆく あの偽物みたいな雲だって流れて 手が届きそうで届かないのがやっぱり月 追いかけても逃げてゆくのがやっぱり月 とらわれるのは苦しくて それが愛だと言われたらもっと苦しくて だからわたしはどこまでも月でいたかった だれも立ち入ることのできない領域で 月にさよなら / 月乃
小さな夜に鍵をかけて 星たちの行列を眺めていた 瞬くのを待っている 流れるのを待っている ちぎれた夜を貼り合わせて たよりない眠りの中を彷徨う 浮かび上がる夜の輪郭の中で 別な夜が影になっていった 海を思い出して両手を広げた 夜の木漏れ日の中を泳いでいく 夜の中を飛び魚のように跳ねる 夜の中にしか見えない虹をみた わたしはずっと夜だった ずっと夜だった / 月乃 _✍︎ ヒトリゴト。 アトリエにこもって仕事をしている。 集中しすぎて頭がぼぉーっとしてきた