望月の欠けたる事も無しと思へば
寛仁二年(1018)十月十六日 藤原威子立后
今日、女御藤原威子(ふじわらいし。もしくはたけこ)を以て、皇后に立つる日なり。〈前太政大臣藤原道長の第三女。一家、三人の后を立つるは、未曾有なり。〉・・・太閤(道長)、云はく、「祖(道長)の子(頼道)の禄を得るは、有りや」と。又、怜人(雅楽を奏する人)に禄を給ふ。太閤、下官(藤原実資)を招き呼びて云はく、「和歌を詠まんと欲す。必ず和す(返歌)べし」てへり。答へて云はく、「何ぞ和し奉らざるか」と。又、云はく、「誇りたる歌になむ有る