仕上げについて
染めの加工が一通り出来上がると、必要に応じて金彩や刺繍の加工をしたり、挿し色を顔料で調整したりします。
仕上げの作業です。
金彩や刺繍は、染め加工の失敗を隠すために行うものと思う人もいるかもしれません。実際にそのように使われることもありますが、多くの場合金彩や刺繍の仕上げの加工は、染めを引き立たせ、より華やかに表現する為の手段です。
必要以上の加飾は、染めの品格を損なうこととなります。染めの加工と調和させ、更に素晴らしいものにする事が仕上げの作業の目的です。
当工房では、金銀粉による仕上げが主です。
(月の部分が金糊摺り込み技法、花等のそれ以外の部分が金くくり技法です。)
*金くくり技法*
「金線描き」「筒描き」とも呼ばれます。
友禅染めで表現された模様、中でも糸目の部分を、その上から金線でくくってゆく技法の事を指します。
筒を使って、糊の代わりに金線を置いて行く技法なので、基本的には糸目糊置きと同じ方法で行います。なので筒の作り方は糸目糊置きと同じです。
金属の粉には、青金や赤金、白金等…色々な色味の違いや、本金やアルミ等の種類の違いがあるので、染めの加工をみて、必要なものを選択します。
金線の細い、太い、光沢の違い等で作品の出来は大きく影響されます。
効果的に、必要な場所に必要なだけ必要な量をバランス良く置く事が大切です。
*金糊摺り込み技法*
面で金銀粉の加工をしたい時に用いられる技法です。
カッティングシートを使った技法で、型染めに似ています。
加工が必要な面をデザインカッターで切り抜き、金属の粉を専用の接着剤で溶いたものを小さな刷毛を使って生地に摺り込みます。
金加工は他にも様々な技法があります。
工房では、摺り込みに使う金を接着剤で溶いたものを、筆を使って彩色していく事もあります。
箔を貼る場合や、特殊な金加工の技術が必要な場合、当工房では外注に出す事もあります。
適材適所、必要なところに必要な技法を使います。
*顔料による上描き*
布が染め上がって、金仕上げをしても、今ひとつ文様にメリハリが無い場合は、顔料で少し彩色補正し、メリハリをつける場合もあります。
補正的にわずかにする場合もありますし、最初から、地色が染め上がった後、絵のように顔料で描くことを想定して、最後に文様を顔料や金銀粉で描きする場合もあります。