業者もお客さまも推し仲間という時代
例えば・・・
工芸系のお店で、取り扱い作家としている作家の在庫を普段は一点も持たず、その作家をサイトやSNSなどで紹介する事もなく、数年に一度の展示会で売るだけ、しかもその展示会で「作家のオリジナル作品」の販売には力を入れず「受注会」がメインという方式を取るところがあります。それだと、お店としては仕入れが必要ありませんし、何かあった際の責任は作り手に行きますし、負担無く展示会をやりやすいわけです。もちろん、それは悪い事ではありませんが、そのような方式「しか」しないお店だと、その作家の作品はそのお店では買いたくない、他のお店で買いたい、となるお客さまが増えた気がします。
お店の普段の在庫として一点も持っていない作家という事は(仕入れてもスグに売れてしまうので普段在庫が無いように観えてしまうというのは別)そのお店は、お客さまから「実際にはその作家を好きではないし評価もしていないんだな」と捉えられるのは当然ですから・・・
普通にお客さまはそう感じますよね。お客さまに「あの作家のもの、取り扱っているよね?あの作品が欲しいんだけど」と言われると渋々取り寄せてそのお客さまに見せるだけ、というケースもそうですね。それと、一応、取り扱いはあるのに、その作家の作品を悪く言う店員さんがたまにおりますが、そういうのは以ての外です。お客さまは好きな作家の作品を観に来たのに、それを貶されたらもの凄く不快ですよね。そんな人いるのか、と思われるかも知れませんが、結構おられます。
年間に、少量でも仕入れ、展示会があれば、作品を借りてなるべく多くの人々の目にふれるようにしたり・・・そのように普段から扱っていて、普段から自分のサイトやSNSなどでその作家の作品の実用例の画像を上げたり、作家の考え方を実感をもって自分の言葉で紹介しているのなら「このお店は、この作家の作品が好きで評価もしているんだな、愛が溢れている♡やっぱり、ご自身の推しの作家を扱っているのよね♡」と感じますし、お客さまはご自分の推し作家が他者から評価されているのを観ると、その作家のファンとして嬉しくなりますよね。
お客さまにとっては、推し作家の作品の魅力についてお店の人と語り合い盛り上がって買うのは嬉しい事です。次もこのお店で、そしてあの担当さんから買おう、と思います。
器のお店などの場合、作家の個展の際に、次に行う他所のお店での個展の案内が置いてある事すらあります。
販売する側に「私は、この作家の作品や創作姿勢が好きです。推しております。だから、この作家が作品を作り続けられるようにサポートしたいし、この作家の作品を多くの人に広めたい」という姿勢があるわけです。
そういう「推し仲間」の連帯を自然に、お店とお客さまの間に出来るようにし、かつビジネスになるような仕組みにして行かないと、これからの「小規模の文化系ビジネス」は回らない気がします。
お客さまはSNSで、業者よりも素早く確実に作り手に直接アクセスして来る時代ですから。
例えばそれが和装であるなら、以前のように商売のためのズルい仕組みを伝統という事にし、色々な情報を不明瞭にし、お客さまに正しい情報を与えないようにしてボロ儲けなんて時代はもう来ないのではないでしょうか。
現代の手作り系文化は、どうやっても「小規模の文化ビジネス」です。アート系のように、価格が青天井に上がる事はありません。景気が悪くなっている昨今では、益々、誠実さと正直さと愛情という、商売ではある意味キレイゴトとされた事が必要な気がします。