練習の3つの段階

こんにちは、辰巳です。

ピアノ講師、音楽講師の皆さま、

生徒さんが、「とりあえず楽譜通り弾けました」という所から先へなかなか進んでくれなくて、もどかしい!と思われたご経験はないでしょうか?


生徒さんからは「間違わずに弾けてるんだから良いんじゃないの?」のオーラが出ているものの、

先生としては、もっと弾き込んで、自分のものになる所まで弾きこなして欲しい、

と思っているような状況です。

この壁、取っ払いたいと思いますよね( *´艸`)


演奏って、「音を楽譜通り弾けたら終わり」ではなく、むしろそこからが「スタート」なんですよね。演奏が面白いのはそこから先です。それを生徒さんにも分かって欲しいけれど、、


でも、まだその感覚が分からない生徒さんにはどう伝えれば良いのでしょうか。


そんな時に「練習の3つの段階」のお話が役に立つかもしれません。

今日はピアノの練習における3つの段階についてのお話です。


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ピアノを含めた楽器や、スポーツなどの「技能」の習得には3つの段階があります。


①課題が何か知る「認知の段階」

②正しい反復が繰り返される「遂行する連合の段階」

③無意識に遂行出来る「自律の段階」


言葉がちょっと難しいですね。

①〜③を自転車に例えてみましょう。

「認知の段階」は、自転車に乗る方法を知る段階です。まずハンドルを持って、サドルにまたがる、それからペダルを踏み込む、はじめはグイッとシッカリと、、、

ピアノの練習で言うと、指や腕の正しい動かし方を知る段階です。

この「認知の段階」では、主に「教えてもらう事」、つまりインプットがメインになります。


課題の認知が出来たら次は「遂行する連合の段階」でしたね。

ほとんどの技能的な事は、単一の動作ではなく、いくつかの動きの連合により成立していますよね。

自転車でいえば、ハンドル操作をしながらペダルを漕ぎ、同時にブレーキは軽く握り、さらに上半身でバランスを取りながら視線は進行方向へ、、、と複数の動作を、バラバラに遂行するのではなく「連合した1つの動き」にしてゆく段階です。

ピアノの練習で言えば、楽譜を見ながら指を動かし、体は重心の位置を調整し、さらに音を耳で聴きながら、足はペダルを踏む、、、

と、かなり多くのバラバラの動きを「連合」させなければいけません。

この段階では主に「正しい動作を反復する事」がメインになります。

自転車で言えば、広場などでお父さんやお母さんに見てもらいながら何度もチャレンジしている段階、

ピアノであれば、レッスンで教わった事を、その場で先生に見てもらいながら何度か練習したり、それを家で1人で繰り返し練習している状態です。ピアノは、右手と左手で違う動きをするだけでなく、強さのバランスを変えたり、さらにペダルはまた別のタイミングで踏んだりと、「連合」させるのにみんなはじめは苦戦するでしょう。


この段階が最後までゆくと、「目的の技能」はほぼ習得できた状態と言えるでしょう。つまり「楽譜通り弾けている」状態です。

しかし、ここでの習得はいわば「頭が習得している段階」なのです。考えながらであれば出来る、という感じです。

練習にはもうひと段階ありましたね。


最後は「自律の段階」です。

自律とは、意識しなくても勝手に機能してくれる事です。自律神経は眠っていても機能しますよね、そんなイメージです。

つまり、「やり方を意識しなくても体が勝手に動く」。これが「自律の段階」です。

自転車であれば、運転は無意識に出来て、別の事を考えていてもいつの間にか目的地に到着するような状態です。

ピアノであれば、舞台で頭が真っ白になっても指が勝手に最後まで弾いてくれるような状態です。


そして、そう。


演奏で1番楽しいのは「自律の段階」なのです♪

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「楽譜通り弾けたらヨシ」の生徒さんは、「自律の段階」の手前がゴールになってしまっています。

「弾けている」と「弾きこなしている」の違いはこのラインなのです。

そして、多くの生徒さんは、この両者を混同してしまっています。その結果、「楽譜通り弾けたらヨシ」という感覚になってしまうのです。


ここで大切なのは、「自律の段階」の存在を、先生が認識している事ではなく、生徒自身が認識しなければいけないという事です。

そこで先生に求められるのは、「自律の段階」の存在や必要性をいかに伝わるように説明出来るのかという事なのです。

先ほどのように、自転車を例に出すのも良いですし、生徒さんにとって分かりやすいスポーツや動きに例えてあげるのが良いと思います。

さらに、生徒さんが小学生であれば、説明しながらイラストを描いてあげると、さらに伝わると思います(^^)


「どうしてやらなければいけないのか?」

その必要性を理解すれば、難しい事でも子供はチャレンジできるのです。

先生の伝える力、説明力の見せ所ですね( *´艸`)


うまく伝われば、生徒さんは自主的に動き出します。そうなれば、先生はとても楽チンなのです♪


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ここまでは主に、「自律の段階」へのステップアップのお話でした。

しかし、一つ前の「遂行する連合の段階」でも注意したい事があります。

ここでは、覚えた動きを「反復する」段階でしたよね。

しかし、どれだけ反復練習しても成果が上がらない生徒さんもおられますよね。

練習してもしても全然出来るようにならない、、、、

そんな時は、1つ前の「認知の段階」が、きちんと完了していない可能性が高いです。

「課題」を正確に認知できてはじめて反復練習は意味を成します。

ある程度練習しても習得出来ないテクニックがある場合は、1つ前の段階に戻る事がポイントです。

、、、と、こんな事は先生方なら当たり前の事かもしれませんが、大切なのは、その事を生徒さんが理解しているかどうか、です。

というわけで、ここでもポイントは、

「1つ前の段階に戻る必要性を伝える力」

つまり、先生の説明力なのです。


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余談ですが、、、

自転車ってピアノの演奏と似ている所が多いと思うのです。

先述の「3つの段階」もそうですし、

重心移動で動く事や、

不安定だからこそ出来る細やかな動きや速い動き(自転車は止まると倒れる不安定さのお陰でかえって走行が安定します、補助輪付きで安定しすぎると小回りも効かずスピードも出せません)、

また、自然なリタルダンドは、ブレーキ操作に似ています。この感覚の分かる生徒さんは、rit.を見た瞬間に急にテンポを落とすような事もなくなります。

、、、などなど、、、

自転車に限らず、共通点の多い物を探してみると、もっと説明上手になれそうですね♪


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今日は「練習の3つの段階」のお話でした。

先生方は、わざわざこんな段階を意識しなくても、無意識にこういった流れで練習をされてきた事と思います。

ピアノに限らずいわゆる「もとから出来る人」は、このような事を無意識に出来るタイプなのでしょう(センスのある人とは、これが無意識に出来ている人だと私は思っています)。

課題を早く正確に認知し、的確な方法で反復練習をし、身体が覚えるまで繰り返す。そうやって上達されてきたのだと思います。

しかし、みんながそうではありませんね(^^)


先生の役割は「3つの段階を自分が出来る」事ではなく、

「3つ段階の必要性と方法を、相手に伝わるように説明する」事なのです(^^)

繰り返しになりますが、生徒さんが自分から「自律の段階」を目指してくれるようになれば、先生はとっても楽チンなのです( *´艸`)

レッスンは益々楽しくなると思います♪

説明のもっと具体的な方法や、ケースごとのアプローチなど、コロナが落ち着いたら勉強会を開きたいなと思うのですが、、いつになる事やら(^_^;)


お読みくださってありがとうございました♪







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