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Books_書評

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読んだ本の紹介記事をまとめています。 何かのお役に立てたら幸いです。
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#書評

『派遣添乗員ヘトヘト日記(梅村達/三五館シンシャ)』を読んで、初めて「ツアー旅行」に行ってみたくなった。

「一人旅」vs「ツアー旅行」旅が好きだ。とりわけ、一人旅が好きだ。 それは、自分が旅に求めるものの中で、「非日常」や「未知」といった要素が大きいからだ。 例えば個人的には、日本人が少なければ少ないほど良いし、日本語が少なければ少ないほど望ましい、と考えている。 そして何より、全てをその瞬間の自分だけの判断で行えるという自由さは、何ものにも代えがたい。 その一人旅の対局にあたるのが、本書の主な舞台となるいわゆる「ツアー旅行」だろう。 本書に関心を持ったのは、同シリーズである

『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。( 幡野広志/ポプラ社)』を読んで、人生の残り時間を数え始めた。

もし自分が、「余命◯年」と宣告されたとしたら。 きっと絶望を覚えながらも、その「残り時間」は、「少しでも長くあってほしい、できる限り大切にしたい」と思うものかと、漠然と想像していた。 しかし、そんな風に思えるのはむしろ、とても幸福な状況なのだと思い知った。 次の二文に描写される、著者の闘病の日々は壮絶だ。 ・当時のぼくはたとえ余命が3か月であっても、その3か月を我慢できる自信がなかった。今日にでも、明日にでも、散弾銃で胸を撃ち抜きたかった。 ・僕が自殺を考えていた当時、

『自分の時間を取り戻そう(ちきりん/ダイヤモンド社)』を読んで、「生産性」とは何かを考える。

「このビジネスは生産性が高い(or 低い)な」 「もっと生産性を考えて仕事をしないと!」 たとえば会社の中でも、ごく普通にこのような会話が聞かれるようになった。 では、「生産性」とは何だろうか? 自分もあまり意識せずにこの言葉を使ったり聞いたりしていたが、突き詰めて考えてみると、イマイチよくわかっていない気がした。 その答えを明確に示してくれたのが、本書だ。 まず、次の一文に、本質がシンプルに凝縮されているように思う。 ・生産性とはあくまで「自分が手に入れたいもの」をい

『運動脳(アンデシュ・ハンセン/サンマーク出版)』を読んで、ジョギングを始めた39の夜。

とうとう引っかかってしまった。人生で初めてだ。 振り込め詐欺でも、美人局でもない。健康診断の数値の話だ。 しかし、それなりにショックな出来事だった。 振り返ってみると、ここ数年はめっきり運動の機会が減っていた。 以前は、週5でフットサルをするなど、かなり運動好きな方だった。 しかし最近は、転勤・引っ越しなどによる環境の変化や、テレワークの影響から、すっかり運動不足になってしまっていた。 今回の健康診断の結果も、恐らくこの運動不足が大きな原因の一つではないだろうか。 そんな

『黄金のアウトプット術(成毛眞/ポプラ社)』を読んで、インプット偏重だった人生を省みる。

子どもの頃から、「本を読むのは良いことだ」と言われてきた。 両親は二人とも本が好きで、書店に行けば、本だけは自由に買い与えてくれた。まだ電子書籍なんてなかった時代だ。 そんな環境もあってか、私は小さい頃から、図書館に一日中入り浸っているような子どもだったらしい。 ところが。 「インプットだけで、本当に価値があるのだろうか」ということを、大人になってからは薄々感じ始めていた。 たとえば日本には昔から「本の虫」という言葉がある。子供の頃の自分を象徴しているような言葉だが、最近で

『会うたびに「感じのいい人」と言わせる大人の言葉づかい(齋藤孝/大和書房)』を読んで、テキストベース社会の生き方を考える。

「最近の若い者は・・・」、 その昔、ドラマや小説、漫画の中でよく目にしていたセリフだ。 気づいたら、そのセリフを言うような年代に、自分が突入していた。絶望か。 若手世代と接していると、「言葉の選び方」に違和感を覚えるシーンが増えてきた。 いや、もちろん上の世代にもそういう人はいるし、自分だってそういう時もあるんだろうけど、最近如実に増えてきた、と感じる。 それはおそらく、「テキストベースのコミュニケーション」の比重が高い社会になってきた、ということも関係しているのだろう。

『読みたいことを、書けばいい(田中泰延/ダイヤモンド社)』を読んで、ビジネス書なのに声を出して笑った。

ビジネス書を読みながら、声を出して笑ったのはいつ以来だろうか。 そう自問してすぐに、「いやそんなことは初めてだ」、と気がついた。 「青年失業家」を名乗る、元・電通のコピーライターであった著者による、『読みたいことを、書けばいい。』。 この本を読了した時に感じた最初の感想だ。 同作は、いったい何の本なのだろう。 文章術の本なのかと思えば、就活本のような気もする。 そもそも、ビジネス書のつもりで読んでいたが、お笑いの本のような気もする。 「トラック運転手」 「プノンペンのジ

『メガバンク銀行員ぐだぐだ日記(目黒冬弥/フォレスト出版)』を読んで、「半沢直樹」よりも深い銀行員の世界を知る。

新卒での就職活動当時(2005年頃)、大学が経済系の学部だったこともあり、同期は金融機関に就職する者が多かった。 銀行、証券、生保、損保などなど。 その中でも、とりわけメガバンクに進む者に対しては、「固い選択をしたなあ」という印象を持っていた。 この本のことを知ったのは、最近の日経新聞の広告欄だった。 舞台となるのは「M銀行」。大規模なシステム障害のニュースもまだ記憶に新しかったし、もともと他の会社や職業にとても興味があるたちなので、Kindleでサンプル試読の上、購入して

『まだ東京で消耗してるの?(イケダハヤト/幻冬舎)』は、2016年に現代を予言していた。

率直に驚いた。この本の出版が2016年だったと知った時の感想だ。 現在でこそ、地方移住やリモートワークといった概念は市民権を得てきているが、コロナのはるか前に出版された同著は、まるでその潮流を予言していたかのような内容だ。 自分の読書記録では、2016年に紙の本を購入し、2022年にKindle版を購入していた。 そして今回、改めて3回目の読了を終えて、その先見性に唸るばかりだった。 これは、現代でこそ読むべき内容かもしれない。 むしろ、初版当時はまだ世間から理解されに