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【読書記録】コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装―スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04

今回の読書記録は、SSIR Japan編『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04―コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』です。

今回の読書記録では、『コレクティブ・インパクト』という概念を提唱し、広く世に伝えたにジョン・カニア氏(John Kaniaマーク・クラマー氏(Mark Kramer)が共著者として加わっている論文を中心に読み解き、コレクティブ・インパクトとは何か?についてまとめていこうと思います。


本書の構成

本書『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04―コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』は、スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)のグローバル・ファミリーであるスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版(SSIR-J)によって発行された書籍です。

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版 04―コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装

本書『コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』に限らず、SSIR-J出版の書籍は、各号ごとに設けられたテーマに関連する論文やコラムを集め、編集されたものであり、本書もまた『コレクティブ・インパクト』を中心テーマにおいた複数の論文・コラムが翻訳、掲載されています。

今回の読書記録では、『コレクティブ・インパクト』という概念を提唱し、広く世に伝えたにジョン・カニア氏(John Kaniaマーク・クラマー氏(Mark Kramer)が共著者として加わっている論文である以下の3本を中心に読み解き、コレクティブ・インパクトとは何か?についてまとめていこうと思います。

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出すCollective Impact』(『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』に収録)

コレクティブ・インパクトの実装に向けてChanneling Change: Making Collective Impact Work

コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現であるCentering Equity in Collective Impact

本書『コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』ではコレクティブ・インパクトに関連して、日本人の実践者たちによる以下の興味深い論考も掲載されており、これらの論文はSSIR-Jでも閲覧が可能となっています。

井上英之:
ソーシャルイノベーションの2つの系譜とコレクティブ・インパクト

鎌田華乃子:
決定権限がある側と一般市民の「パワーの差」をいかに解消するか

吉岡マコ:
当事者の声を守り「対等な連携」を進めるために何が必要か

新井和宏:
「奪い合う関係」を「与え合う関係」に変える仕組みとは

後藤宗明:
リスキリングにおいて官民連携の核になるものは何か

鬼澤秀昌:
コラボレーションで生じる「わかりあえなさ」とどう向き合うか

濱川知宏:
セクターを越えて社会を変えていけるのはどんな人か

小田理一郎:
70~80点の短期的な成果を長期的なシステム変化につなぐには

齋藤潤一:
「チャレンジの総量」を増やす際の障壁をどうやって取り除くか

羽生田慶介:
なぜ日本では企業とNPO・NGOの連携が進まないのか

菅野拓:
「やっかいな問題」の解き方としてのネットワーク:災害復興の鍵を握る「ハブ」は何をしているのか

野村恭彦、加生健太朗:
30人から始めるスローイノベーション:地域の社会課題に取り組む実践共同体のつくり方

『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』

また、そもそも『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)』が提唱する『ソーシャルイノベーション』とは何か?についてまとめた記事も事前に公開しておりますので、よろしければそちらもご覧ください。

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)とは、2003年にスタンフォード大学で創刊され、アメリカのNGO研究に端を発したソーシャルイノベーション専門メディアです。

社会課題をより効果的に解決する目標に向かい、公共・企業・非営利セクターの「境界をなくすこと」「対話の橋渡しとなること」をめざして創刊されました。

なお、2003年の創刊号のエディターズ・ノートでは、ソーシャルイノベーションについて以下のような定義がなされています。

『社会の課題とニーズに対して、まったく新しい解決策を発明し、支援を得て、社会に実装するプロセス』

“the process of inventing, securing support for, and implementing novel solutions to social needs and problems.”

ソーシャルイノベーションの再発見: 誰が未来をつくるのか
Rediscovering Social Innovation

その後、2008年にスタンフォード大学のジェームズ・A・フィルズ・ジュニア(James A. Phills Jr.)、クリス・ダイグルマイヤー(Kriss Deiglmeier)、デイル・T・ミラー(Dale T. Miller)によって発表された論文の中で以下のような表現に改められました。

社会課題に対するまったく新しい解決策で、既存の解決策よりも、高い効果を生む・効率が良い・持続可能である・公正であるのいずれかを実現し、個人よりはむしろ社会全体の価値の創出を目指すもの

A novel solution to a social problem that is more effective, efficient, sustainable, or just than existing solutions and for which the value created accrues primarily to society as a whole rather than private individuals.

ソーシャルイノベーションの再発見: 誰が未来をつくるのか
Rediscovering Social Innovation

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版(SSIR-J)

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版(SSIR-J)はスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)のグローバル・ファミリーとして2021年に創刊された、ローカル言語版です。

2021年8月に出版された『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』を皮切りに、2023年11月現在まで延べ6巻がSSIR-Jによって発行されています。(最新号は『コミュニティの声を聞く。』)

『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』にて掲載された、共同発起人・井上英之さんのSSIRとの出会いや日本に紹介しようと考えた背景、そこに込められた思いは、以下のリンク先でも一部公開されています。

なお、2023年11月2日に、このスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版(SSIR-J)は、事業終了とアナウンスされました。

突然のお知らせに私自身も驚いたのですが、よくよく読み込んでみると、継続されるコンテンツも確認できます。

今回のアナウンスによれば、有料会員向けのサービスは閉鎖・終了していくものの、ウェブサイトに集められた記事は今後、一般公開されていくとのことです。

コレクティブ・インパクトとは?

以上、『コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』を読み解く前提情報について見てきました。

では、改めて『コレクティブ・インパクト(Collective Impact)』とはどのようなものでしょうか?

コレクティブ・インパクトの前提にあるのは、以下のような課題意識です。

社会を変えるためには「コラボレーション」が必要だ―これは何十年も前から言われてきたことであり、さまざまな形のコラボレーションが模索されてきたが、多くの成果は出ていない。

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す

ここからは、コレクティブ・インパクトの概要およびこれまでのアプローチとの相違点、成功条件などを紹介します。

コレクティブ・インパクトの概要

コレクティブ・インパクト(Collective Impact)』とは、2011年にジョン・カニア氏(John Kania)とマーク・クラマー氏(Mark Kramer)がスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー(SSIR)に寄稿した論文『コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す(Collective Impact)』がきっかけで世界中に広まった新しい社会変革のアプローチです。

社会を変えるためのコラボレーションについて従来の方法論とは異なるコンセプトを提示したこの論文は、発表後の10年間で100万回以上のダウンロード、学術誌において2400回以上の引用されるなど、世界中の環境問題、社会問題に取り組む実践者たちにも大きな影響を与えました。

2011年に発表された上記の論文において、筆者らは以下のようにコレクティブ・インパクトを定義しています。

コレクティブ・インパクトとは、異なるセクターから集まった重要なプレーヤーたちのグループが、特定の社会課題の解決のために、共通のアジェンダに対して行うコミットメントである。

the commitment of a group of important actors from different sectors to a common agenda for solving a specific social problem.

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す
Collective Impact

そして2022年に発表された『コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現であるCentering Equity in Collective Impact』では、2011年以降の10年間の実践と学びを通じて、以下のようにコレクティブ・インパクトは再定義されることとなりました。

コレクティブ・インパクトとは、集団やシステムレベルの変化を達成するために、ともに学び、連携して行動することによってエクイティの向上を目指す、コミュニティの人々とさまざまな組織によるネットワークである。

Collective impact is a network of community members, organizations, and institutions that advance equity by learning together, aligning, and integrating their actions to achieve population and systems-level change.

コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現である
Centering Equity in Collective Impact

マーク・クラマー氏マイケル・ポーター教授(Prof. Michael Porter)によって2000年に創設され、ジョン・カニア氏も取締役を務めるFSG(Foundation Strategy Group)は、リーダーシップ開発や社会的事業の研究に取り組むアスペン・インスティチュート(Aspen Institute)と共にコレクティブ・インパクト・フォーラム(Collective Impact Forum)を立ち上げました。

コレクティブ・インパクト・フォーラム(Collective Impact Forum)では、共通の目標に向かって集合的なインパクトを生み出すコレクティブ・インパクトの活動を促進するための、さまざまなリソースを提供しています。

コレクティブ・インパクトは、日本国内においては2010年代後半から注目されつつあります。

2018年には日本財団の助成を受けた日本ファンドレイジング協会NPO法人ETIC.が共同でコレクティブ・インパクトを題材とした実務者研修を実施しているほか、東京・渋谷では企業・公共・非営利組織といった多様なステークホルダーの集うイベントが開催されました。

2019年には内閣府によるコレクティブ・インパクトの海外事例の調査研究の発表、2021年以降はデロイトトーマツウェルビーイング財団(DTWB)によってコレクティブ・インパクトに着目した社会課題解決促進のための助成事業が実施されており、今年度で第3回を数えています。

アイソレーテッド・インパクトとコレクティブ・インパクト

2011年に初めて提唱されたコレクティブ・インパクトには、それまでの社会変革やソーシャルイノベーションの動き方との違い、それらの活動に伴う従来型のコラボレーションとの違い、という2点を挙げられます。

1つは、アイソレーテッド・インパクト(Isolated Impact:個別的インパクト)コレクティブ・インパクト(Collective Impact:集合的インパクト)という違いです。

いざ、社会課題を解決するためのNPO・NGOを支援しようというとき、多くの資金提供者(政府・自治体・基金・財団など)は多くの申請者の中から助成対象を絞るため、社会課題の解決に最も貢献する組織を見極めようとします。

そして、NPO・NGOなどの申請者もまた、自分たちの活動がいかに最大の効果をもたらすかを強調し、説明しようとして、同じ課題の解決に影響をもたらしうるその他の団体や要素と切り離した上で競い合います。

要するに、非営利セクターで最もよく見られるのは、私たちの言うアイソレーテッド(個別的)・インパクトのアプローチを用いた活動である。このアプローチでは、1つの組織で完結できる解決策を見つけ出して資金を提供する。そこには、「最も効果的な組織は、組織の規模拡大や活動の複製・再現によって、インパクトをもっと広げていけるはずだ」という期待もある。

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す

In short, the nonprofit sector most frequently operates using an approach that we call isolated impact. It is an approach oriented toward finding and funding a solution embodied within a single organization, combined with the hope that the most effective organizations will grow or replicate to extend their impact more widely.

Collective Impact

しかし、ある有力な団体1つがある社会課題を解決しきれるわけでもなく、ある有力な団体を支援したとしても、その団体がある課題解決のために適切な組織・活動規模にスケールするためには莫大な予算が必要となることもあり、アイソレーテッド・インパクト(Isolated Impact:個別的インパクト)には限界もあります。

また、筆者らは、2004年に発表したロナルド・ハイフェッツ(Ronald A. Heifetz)との共同論文『Leading Boldly』を引きつつ、技術的課題(Technical Problems)適応課題(Adaptive Problems)について言及しています。

問題の定義が明確であらかじめ答えがわかっており、単独または少数の組織によってでも解決策が実行可能な技術的課題(Technical Problems)の場合には、アイソレーテッド・インパクトも有効です。必ずしも、コレクティブ・インパクトでなければ解決できない課題とは限りません。

しかし、現在の社会課題の多くは、問題が複雑で答えがわからず、また、答えがわかっていたとしても必要な変化を実現するための単独、少数のプレイヤーが存在しない適応課題(Adaptive Problems)です。

これらの場合、効果的な解決策にたどり着くためには、その問題の利害関係者たちが学習し、自分たちの振る舞いを変えることを通して解決策を生み出す必要がある。

In these cases, reaching an effective solution requires learning by the stakeholders involved in the problem, who must then change their own behavior in order to create a solution.

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す
Collective Impact

以上のような背景から、アイソレーテッド・インパクトに代わるコレクティブ・インパクトへの移行に世界中で注目が集まりつつあります。

従来型のコラボレーションとコレクティブ・インパクト

コレクティブ・インパクトは従来型の社会課題解決のコラボレーションとの比較も行われており、『コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す』の中では簡潔な表にまとめられています。

上記の論文で紹介されている従来型のコラボレーションとは、以下のようなものです。

資金提供者のコラボレーション
同じ課題解決を支援することに関心を持ち、共同でリソースを拠出する資金提供者のグループ。

官民パートナーシップ
特定のサービスや便益を実現するために、政府と民間セクター組織の間で形成されるパートナーシップ。

マルチステークホルダー
共通のテーマに関わる、異なるセクター間の関係者による自発的な活動。

ソーシャルセクターのネットワーク
公式/非公式を問わず、目的意識に基づいて緩やかにつながった個人や組織のグループ。

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す

上記に挙げた従来型のコラボレーションの多くは、以下のような特徴が1つまたは複数確認でき、これらの弱点を乗り越えていくアプローチとしてコレクティブ・インパクトが紹介されています。

・短期的・即興的なコラボレーションである
・共通のインパクト測定システム、サポートを行うインフラに欠けている
・ある狭い範囲に絞った目標を定め、限られた関係者間で実施される
(包括的なアクションプランを持たず、他のセクターへの働きかけも行わない)

社会課題解決のためのコラボレーションの一種としては、コレクティブ・インパクトは以下のように表現されています。

コレクティブ・インパクト
異なるセクターの重要プレイヤーによる、特定の社会課題解決に向けた共通のアジェンダへの長期的コミットメント。その行動の基盤には共通の測定システム、相互に補強し合う取り組み、継続的なコミュニケーションがあり、独立したバックボーン組織のスタッフが支援している。

『コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す』

以下、『コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す(Collective Impact)』の中で述べられたコレクティブ・インパクト成功のために重要な5条件について紹介します。

コレクティブ・インパクトの重要な5条件

『コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す(Collective Impact)』の筆者らは典型的なコレクティブ・インパクトの成功例を見る中で以下のような5つの重要な条件を発見しました。

1.共通のアジェンダ(Common Agenda)
すべての参加者が課題に対する共通理解を持つこと、合意したアクションに基づき共同アプローチを取るなど、変化に対する共有ビジョンを持つこと。ある課題に対して、必ずしもすべての側面においてコンセンサスを取る必要はない。

2.共通の測定システム(Shared Measurement Systems)
共通のアジェンダを実現していくため、活動に関わるコミュニティ全体、すべての参加組織が枠を超えて共有する測定基準及びシステム。

3.相互に補強し合う取り組み(Mutually Reinforcing Activities)
共通のアジェンダ、共通の測定システムに基づいて、多様な関係者が各自の得意とする活動を奨励し、相互に補強し合いながら活動する姿勢。多様な組織による均質的な取り組みや、個別組織のバラバラな活動(アイソレーテッド・インパクト)を意味するものではない。

4.継続的なコミュニケーション(Continuous Communication)
非営利団体、企業、政府機関など多様な関係者間の信頼関係や共通システムの構築のために必要となる、数年がかりの定期的な会合などの場。筆者らの研究では毎月、場合によっては隔週1度のペースで開催され、その場には各組織のCEOクラスのリーダーが出席し(欠席、代理参加は無い)、それぞれの利益が正当に扱われているか等の確認の場ともなる。

5.活動をサポートするバックボーン組織(Backbone Support Organizations)
コレクティブ・インパクトをマネジメントし、イニシアチブ全体の支柱(バックボーン)となる独立した組織及びスタッフ。関係者間の関心を一点に集め、調整や対立の仲裁を行い、高度に構造化されたプロセスを提供する。コレクティブ・インパクトの好例であるストライブ(Strive)では、バックボーン組織の初期の要件として、プロジェクトマネジャー、データマネジャー、ファシリテーターの3つの役割を定めた。

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す
Collective Impact
上記を基に記述

コレクティブ・インパクトの実装に向けて

以上までが、コレクティブ・インパクトに関する概要です。

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す(Collective Impact)』は、2011年に発表されて以降、大きな反響を呼び、筆者らは具体的な実践に対する詳しい情報やアドバイスが求められるようになりました。

そのような背景から2012年に発表されたのが、『コレクティブ・インパクトの実装に向けて(Channeling Change: Making Collective Impact Work)』です。

この論文では上述のバックボーン組織の具体例や、多層型コラボレーション(Cascading Levels of Linked Collaboration /Different Levels of Linked Collaboration)などに関する詳しい言及がありますが、今回の読書記録ではコレクティブ・インパクト実践のための前提条件コレクティブ・インパクトが辿る3つのフェーズについて簡単に紹介します。

コレクティブ・インパクトの前提条件

コレクティブ・インパクトの取り組みを立ち上げる前に整えておくべき前提条件として、筆者らは以下のように述べています。

コレクティブ・インパクトの取り組みを立ち上げる前に整えておくべき前提条件が3つある。それは「影響力のある招集者」「十分な財源」「変化を望む危機感」だ。これらすべてがそろうことで、これまで協働しなかった人たちをコレクティブ・インパクトの取り組みに引き込み、連携を支えて活動を軌道に乗せていくまでに必要な機会と機運が生まれるのである。

コレクティブ・インパクトの実装に向けて

Three conditions must be in place before launching a collective impact initiative: an influential champion, adequate financial resources, and a sense of urgency for change.Together, these preconditions create the opportunity and motivation necessary to bring people who have never before worked together into a collective impact initiative and hold them in place until the initiative’s own momentum takes over.

Channeling Change: Making Collective Impact Work

また、この中でも圧倒的に重要な要件として、「影響力のある招集者(たち)」……さまざまなセクターで活動する経営者クラスのリーダーたちの存在を筆者らは強調しています。

コレクティブ・インパクトのフェーズ

続いて、コレクティブ・インパクトの実践において明確に区分3つの過程を筆者らは紹介しています。

そのフェーズとは以下のようなものです。

フェーズ1:活動の立ち上げ
・主要プレーヤーの置かれた状況と進行中の取り組みの把握
・変化の道筋を描くための社会課題に関する基本データの収集
・初期のガバナンス構造の確立(影響力があり誰からも信頼されるリーダーに参加してもらうなど)

フェーズ2:インパクトに向けた組織化
・ステークホルダー同士の共同による共通の目標と測定基準の確立
・バックボーン組織など活動を支える基盤の構築
・共通の目標と測定基準に向けて多数の関係組織の足並みをそろえるプロセスへの着手

フェーズ3:活動とインパクトを持続させる
・優先順位の高い分野に対する協調的な取り組み
・体系的なデータの収集
・共通の目標に向けた進捗を確認しながら積極的に学び、軌道修正できるような、持続可能なプロセスの準備

コレクティブ・インパクトの実装に向けてを基に記述

なお、筆者らはコレクティブ・インパクト実践に関して、「既に存在しているコラボレーションを土台にすること」「コレクティブ・インパクトの土台が整うまでには時間がかかること」を強調しています。

ステークホルダー同士の協働が生まれ、機能不全に陥った社会システムの根本的な改善につながる土台ができるまで、フェーズ1〜2だけでも半年から2年、フェーズ3の実践には10年かそれ以上に及ぶことがある、というのが筆者らの見解です。

エクイティ(構造的差別の解消)とは?

2011年に発表された『コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す(Collective Impact)』において、筆者らは以下のようにコレクティブ・インパクトを定義しました。

コレクティブ・インパクトとは、異なるセクターから集まった重要なプレーヤーたちのグループが、特定の社会課題の解決のために、共通のアジェンダに対して行うコミットメントである。

the commitment of a group of important actors from different sectors to a common agenda for solving a specific social problem.

コレクティブ・インパクト : 個別の努力を越えて今こそ新しい未来をつくり出す
Collective Impact

そして2022年に発表された『コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現であるCentering Equity in Collective Impact』では、2011年以降の10年間の実践と学びを通じて、以下のようにコレクティブ・インパクトは再定義されることとなりました。

コレクティブ・インパクトとは、集団やシステムレベルの変化を達成するために、ともに学び、連携して行動することによってエクイティの向上を目指す、コミュニティの人々とさまざまな組織によるネットワークである。

Collective impact is a network of community members, organizations, and institutions that advance equity by learning together, aligning, and integrating their actions to achieve population and systems-level change.

コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現である
Centering Equity in Collective Impact

この点に関して、『コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』のEditor’s Noteでは以下のように触れられています。

エクイティ(equity)」は日本語で「公正」と訳されることが多い言葉ですが、この論文内では主として「構造的差別の解消」という言葉を当てました。この「エクイティ」が本文中に56回出てきます。2011年に発表された論文には一度も出てきません。カニアとクラマーら6人の著者はこう述べています。「エクイティの問題を置き去りにしてきたことが、コレクティブ・インパクトの取り組みがうまくいかない最大の原因になっていると気づいた」

Editor’s Note:コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装

以下、10年間の実践と学びの中で見出された、コレクティブ・インパクトの取り組みの成功に不可欠な要素であるエクイティについて見ていきます。

社会課題の歴史的・構造的経緯とエクイティ

2022年に発表された論文は、コレクティブ・インパクトの活動においてエクイティ(equity:構造的差別の解消)を中心に据えることの重要性を強調し、エクイティをコレクティブ・インパクトの中心に据えた戦略についての紹介を行いました。

そして、このエクイティの定義について筆者らは、アーバン・ストラテジーズ・カウンシル(Urban Strategies Council)の定義を引きつつ以下のように述べています。

エクイティとは、社会における機会や、結果としての現状、代表性における格差を体系的に評価し、これらの格差を重点的なアクションを通じて是正していくことで達成される、公平性(フェアネス)と正義(ジャスティス)のことである。

この定義は、何代にもわたり深刻で複合的な周縁化(マージナライゼーション)と抑圧をもたらしてきた構造的な阻害要因を認識し、それによって成長と成功の機会を奪われてきた世界中の多様なグループや住民のニーズに応えようとするものだ。

コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現である

Equity is fairness and justice achieved through systematically assessing disparities in opportunities, outcomes, and representation and redressing [those] disparities through targeted actions.

This definition speaks to the needs of many different groups and populations that function daily under structural constraints that have for generations curtailed their ability to thrive, resulting in severe and compounding marginalization and oppression, regardless of where they live in the world.

Centering Equity in Collective Impact

この論文の中で取り上げられる構造的差別は、主として人種差別です。(例えば、「黒人」の「女性」というアイデンティティを持つ人々は、より不利な立場に置かれがちです)

これまで社会の周縁に押しやられてきた人々とは誰か?

そういった人々は「なぜ」「どのような経緯で」周縁化されることとなったのか?

周縁化された人々は、その歴史的・構造的な不公正の中でどのような経験をしてきたのか?

コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現であるを基に記述

このような背景を時間をかけて理解をしようとしない限り、周縁化された人々が構造的な差別から解消され、その能力を最大限発揮していくことはできない、と筆者らは述べています。

また、人種におけるエクイティ実現のためのリソース、ツール、フレームワーク等は、心身の障害、性的指向、ジェンダー、階級、カースト、民族、宗教といったその他のさまざまな分野にも応用可能であると、筆者らは付け加えています。

無意識化される人々の特権・パワーの不均衡

日本人である私たちがもう少しエクイティについて探求するために、スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー以外の文献も活用しながら視野を広げてみようと思います。

『コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現である(Centering Equity in Collective Impact)』の中で述べられた構造的差別に関連すると思われる記事は、簡単に調べてみただけで以下のようにいくつも確認できます。

あなたは優位な立場かもしれない 気づきにくい"特権"とは―NHKハートネット

履いている「下駄」とそれが生み出す「構造的差別」―デロイト トーマツ コンサルティング

構造的差別を根絶するために組織文化をどう変えるべきか―DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

また、私が探求してきたテーマに関連して構造的差別を紐解くと、プロセスワークの提唱者であるアーノルド・ミンデル(Arnold Mindell)は、人が意識する・しないに限らず備わる能力やパワーであり、コミュニケーションに影響をもたらすものとしてランク(Rank)という概念を用意しています。

ランクの例としてミンデルは、肌の色、 経済階級、ジェンダー、性的指向、教育、宗教、年齢、専門知識、職業、健康、心理状態、スピリチュアリティなどを挙げており、ランクの性質について以下のように述べています。

私たちは誰もが何らかのランクを持っており、それをどれくらい自覚しているかが言動に現れる。ランクに注意が払われない時、コミュニケーションは混乱し、人間関係の慢性的な問題がさらに悪化する。

アーノルド・ミンデル『対立の炎にとどまる』p79

ランクは麻薬である。自分のランクが高くなればなるほど、それがいかに他者へ負の影響を及ぼすかに気づきにくくなる。

アーノルド・ミンデル『対立の炎にとどまる』p79

ランクは心のわずかな動きに表出する。自分が属する文化において最も優遇される集団の一員であれば、自分は普通だと考え、自分のようではない人を軽視してしまう。

アーノルド・ミンデル『対立の炎にとどまる』p84

ランクは本質的に悪いものではないし、その乱用を避けられないわけでもない。自分のランクを自覚すれば、自分だけでなく他者のためにも活用できるようになる。

アーノルド・ミンデル『対立の炎にとどまる』p85

エクイティ実現へのアプローチとして、世界的なファシリテーターであるアダム・カヘン氏(Adam Kahane)Justice(正義/公義)に着目しています。

アダム・カヘン氏は、90年代に南アフリカの民族和解および民主化プロジェクトにファシリテーターとして参画して以降、これまでに世界50カ国以上において企業、政府、市民社会のリーダーが協力して困難な課題に取り組むプロセスを整え、設計、ファシリテーション、オーガナイズを行なってきた第一人者です。

今年3月に来日された際の講演では、以下のようにお話しされていました。

私が見落としていたのは、「公義(justice)」でした。(中略)公義とは、不公正を減らそうという衝動です。(中略)コラボレーションによる社会システムの変容には、公義が必要です。システムを効果的に変容するためには、すべてのステークホルダーの参加が必要です。自分が不当に扱われていると考えるステークホルダーは参加しようとしません。彼らは、自らの力で変容に影響を与えようとしなかったり、力を行使して変容を妨げたりします。公義を活用しないコラボレーションでは、社会システムの変容はできません。

アダム・カヘン氏特別講演イベント
「コラボレーションをみつめ直す:いかに違いを超えて、システムを変容するか?」講演録

エクイティを中心に据えるための5つの戦略

『コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現である(Centering Equity in Collective Impact)』の筆者らは、このエクイティ(構造的差別の解消)をコレクティブ・インパクトの活動の中心に据える戦略として、以下5つの戦略について紹介しています。

1.データと文脈に基づき、取り組みの的を絞る
エクイティへの合意に基づき、社会的・歴史的な構造の理解および周縁化された人々に注目した再分類データの収集。これに加え、インタビューを用いた社会の端に追いやられた人々の人生経験への聞き取り・関わりを合わせ、戦略作りに反映する。

2.プログラムとサービスに加えて、システム・チェンジに重点を置く
コレクティブ・インパクトの実践者の多くは3つのレベルの解像度でシステム・チェンジを捉えている。構造の変化(政策、活動、資金の流れのシフト)、関係性の変化(個人間、組織間の関係性、繋がり、パワーダイナミクスの変化)、革新的な変化(メンタルモデル、世界観、そして社会問題を理解する背景となる物語の変化)である。

3.連携・協働における力関係を意図的に変える
影響力の大きな組織やコミュニティのリーダーがトップダウンの意思決定を行うのではなく、エクイティへの合意に基づいて集められたデータや物語の共有、協働を通じてパートナーたちに意思決定の権限を共有していくこと。

4.コミュニティの声を聞き、コミュニティとともに行動する
外部からの救世主的なあり方ではなく、自分もまた変わるべきシステムの一部なのだという意識からコミュニティに関わり、コミュニティと共に活動を進める。

5.エクイティ実現のためのリーダーシップとアカウンタビリティを築く
運営委員会メンバー、資金提供者、パートナー組織、コミュニティの住民などコレクティブ・インパクトのすべてのステークホルダーにリーダーシップを分散し、エクイティ実現のための行動・振る舞いをそれぞれの現場で時にリスクを負いながらも実践していくこと。

コレクティブ・インパクトの北極星はエクイティの実現であるを基に記述

終わりに

本書に出会うまでの私の旅路

以上、『コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』を私なりの視点から読み解いてきました。

私が本書を手に取るきっかけを遡ると、2013年に遡ります。

当時は東日本大震災の発生からまだ間も無く、日本社会全体にこれまで通りの働き方・生き方をしていていいのか?といった疑問・懸念が人々の中に湧き起こっており、身近な友人や仲間たちの間でも地方への移住や転職といった形で新たなライフスタイルが模索されていました。

それと共に、社会に対する新たな関わり方としてソーシャルビジネス、社会起業家といった存在や、異なる関係者間の利害関係の調整、異なるセクターを超えて共通するビジョンを描くためのマルチステークホルダーダイアログ、ホールシステムアプローチといったものを震災復興まちづくりでの活用にも注目が集まっていたように思います。

当時の私は関西圏の仲間たちと共に、青少年のメンタルヘルス学生社会起業家育成のためのアイデア発想・交流プログラムにファシリテーターや運営として携わるという形で、個人や個別のセクターを超えた協働、社会に発信していく取り組みに触れていました。

地元・伊賀の森林公園にて仲間たちと合宿中の様子

その後、特定非営利活動法人場とつながりラボhome's viに参画した私は、ファシリテーションについての探求を深め、その方法を企業・団体への提供していくのですが、その最中で組織の構造的な壁に直面します。

当時の私は組織の変革のための関係者を集め、あるいは組織の壁を越えて多種多様な人々が集まる場を設計し、運営しようと試みていました。

しかし、たとえその場で素晴らしい対話が実現できたとしても、ワークショップやプログラムの場から本来の持ち場に戻った人々は、その組織での文化に引き戻されてしまい、変化が持続できないということが発生してきました。

人や組織のポテンシャルをより良く発揮していける叡智を届けていくこと』を当時の活動の目的としていましたが、このような状態では根本的な変化は起こりません。

そんな時に出会ったのが、組織を構造から眺め、構造の変容と人の内面の変容を同時に扱うことを提案する『ティール組織(Reinventing Organizations)』という組織論と、一人ひとりの創造性から活動が広がる中で自然と組織化されていくという捉え方をする『ソース原理(Source Principle』という知見でした。

ソース原理(Source Principle)とは、イギリス人経営コンサルタント、コーチであるピーター・カーニック氏(Peter Koenig)によって提唱された、人の創造性の源泉、創造性の源泉に伴う権威影響力創造的なコラボレーションに関する洞察を体系化した知見です。

2019年の来日時、『ティール組織』著者フレデリック・ラルー氏(Frederic Laloux)によって組織、経営、リーダーシップの分野で紹介されたことが契機となって初めて知られることとなったソース原理(Source Principle)。

ソース原理について初めて日本に紹介された邦訳書『すべては1人から始まる(原題:Work with Source)』を参照すると、ソース(Source)とは、あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、最初の無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割を意味しています。

The role emerges naturally when the first individual takes the first vulnerable step to invest herself in the realisation of an idea.

Tom Nixon「Work with Source」p20

また、本書中の用語解説では、『脆弱なリスクを取って、ビジョンの実現に向けて自らを投資することで、率先して行動する個人のこと』と説明されています。

An individual who takes the initiative by taking a vulnerable risk to invest herself in the realisation of a vision.

Tom Nixon「Work with Source」p249

また、現在未邦訳であるものの世界で初めてソース原理を書籍として紹介したステファン・メルケルバッハ氏(Stefan Merckelbach)は、この役割を担うことになった人について、特に「ソース・パーソン(source person)」と呼んでいます。

A source is a person who has taken an initiative and through that has become the source of something: we can call this a "source person".

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p17
Stefan Merckelbach「A little red book about source」
Tom Nixon「Work with Source」

トム、ステファンの両者に共通しているのは、ソース(Source)は特別な人だけがなれる役割ではなく、誰もがソース(Source)である、というものです。

アイデアを実現するために一歩踏み出すことは、社会を変えるような大きなプロジェクトの立ち上げに限りません。

自身の研究課題を決めること、就職を思い立つこと、ランチを作ること、休暇の予定を立てること、パートナーシップを築いていくこと等、日常生活の様々な場で誰しもが何かのソース(Source)として生きていることを両者は強調しています。

This applies not only to the major initiatives that are our life’s work. Every day we start or join initiatives to meet our needs, big and small.[…]Whether it’s making a sandwich or transitioning to a zero-carbon economy, we start or join initiatives to realise ideas.

Tom Nixon「Work with Source」p30

We take initiatives all the time: deciding on a particular course of study, going after a certain job, starting up a business, planning a special dinner. I can initiate a friendship or partnership, change my housing situation, make holiday plans, decide to have a child. Or I might step forward to join a project sourced by someone else.

Stefan Merckelbach「A little red book about source」p17

このソース原理について著者らとも探求・実践を重ねる中で必要に感じたのが、コレクティブ・インパクト及びコラボレーションに関する知見でした。

本当に生み出したい変化の対象が1人の人、1つの組織を超えたより大きな社会システムに及ぶ場合、組織やセクターを超えた協働が不可欠だと考えたためです。

そして、『ティール組織(Reinventing Organizations)』で紹介されている一人ひとりの全体性に基づき、存在目的(パーパス)へ向けて自律的な組織運営を行うアプローチを1つの組織を超えた範囲で応用すれば、それらはコレクティブ・インパクトの助けとなるかもしれない……。

そのような経緯からスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版(SSIR-J)に辿り着いたのですが、SSIR-J共同発起人である井上英之さんの言葉に出会ったことで私のこれまでの旅路が繋がるような感覚が得られました。

これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』にも掲載されていた『「わたし」から物語を始めよう』という記事の中に、社会を変えるために『「わたし(私)」という存在が「やってみる」こと』の大切さについて述べられていたのです。

旅路を振り返りを終え、次の一歩へ

現在の私の活動の方針は、2010年代の考え方から再定義された『人や組織のポテンシャルをより良く発揮していける叡智を次世代へ受け継ぎ、文化として育んでいく』というものです。

以前から『コレクティブ・インパクト』に関する探求を進めていこうとは考えていましたが、今回の読書記録を書く大きな転機となったのは、発行元のスタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版(SSIR-J)の事業終了のアナウンスでした。

これまでも私は、書いてまとめる・まとめたものを仲間たちに共有するというアプローチで組織論やファシリテーションの手法・哲学の紹介などを行ってきましたが、SSIR-Jの事業終了は私の中の何かを奮い立たせました。

そして今回、『これからの「社会の変え方」を、探しにいこう。』に続いて『コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装』のまとめを一通り終えられたことで、これまでの私自身の旅路の振り返りも行うことができました。

スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版(SSIR-J)の遺してくれたくれたものを継ぐ、というと少し大袈裟で烏滸がましいような気持ちもしますが……これらの知見を大切に仲間たちともわかちあい、少しでも次世代を生きる人々がそのポテンシャルを発揮していけるような助けとできれば幸いです。

この感覚や上述のまとめも、私自身の視点・レンズを通して描写されたものです。

このまとめを最後まで読んでいただいた皆さんに、何か気づきや発見などがあれば幸いです。

さらなる探求のための参考文献

世界はシステムで動く ― いま起きていることの本質をつかむ考え方

敵とのコラボレーション―賛同できない人、好きではない人、信頼できない人と協働する方法

社会変革のためのシステム思考実践ガイド―共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する

さらなる探求のための参考リンク

コレクティブ・インパクト、次の10年の課題と可能性

システムリーダーシップの夜明け:変化を起こすのではなく、変化が生まれるように導く

コレクティブ・インパクト実践論:企業と社会の利益は一致する



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大森 雄貴 / Yuki Omori
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