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ゼロから始める伊賀の米づくり54:これまでの経験や積み重ねを活かし、5年目の田植えに臨む
2020年1月、父から実家の米作りを継いで5年目の田植えシーズンがやってきました。
家族経営の兼業米農家という形式上、口伝や暗黙知で伝えられてきた業務フローやプロセス。それらをきちんと見える化し、共有知として遺していこうと始めた記録も、今回で54回目です。
前回は、田んぼに水を引き込み、代掻き作業を行った際の気づきについてまとめました。
今回は、田植え作業の際に気づいたことについてまとめたいと思います。
昨年の教訓から今回に活かしたこと
苗の植付本数の設定
田植えの際は、田植え機を使用します。
田植え機にはいくつかの設定が可能ですが、昨年はいくつかの設定を失敗してしまったことがありました。
今回は、その失敗を活かすべく細かい調整に取り組んで臨みました。
まず一つは、苗の植え付け本数の調整です。
田植え機の背面には苗を積み込むスペースがあり、背面下部の爪で苗を摘み、地表へ植え付けていくという構造をしています。
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昨年は、この苗を摘む本数が多すぎる設定となっていたため、危うく注文していた苗が足りなくなってしまうところでした。
そこで、今回は苗を摘む本数の設定を少なくしてから田植えに臨みました。
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今回は植付本数を最少に設定し、従来よりも苗の消費量を少なくしつつ、田植えを終えることができました。
今回の教訓は、また来年以降、苗を発注する際の参考に活用することとします。
肥料の散布量の調整
また、昨年は肥料の消費量も多すぎたため、1枚目の田んぼの時点で発注していた肥料を消費し切ってしまい、こちらも設定を失敗していました。
今回は先述の植付本数と同様、肥料の散布量も調整し、適正な消費量のもとで作業を終えることができました。
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今年の田植えを終えて
「何事も準備が8割」を再確認
今回の田植えは、自分が田植えを継いで以降、歴代最速で作業を終えることができました。
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5回目の田植えとなるとある程度、作業のフローも頭に入っており、機械類の操作にも慣れていた、ということがあります。
また、発生しうるトラブルの想定と、その対処のシミュレーションの精度も高く行えていたように思います。
田植え機のメンテナンス、作業を分担する上での報連相、作業の参加する一人ひとりの力量感など、おおよその想定がうまくハマったのではないか、というのが作業面での所感です。
農作業はプロジェクトマネジメント、プロジェクトファシリテーションの観点が重要な営みであると、5年目に入って痛感します。
人だけではなく、機械や自然を相手にし、それらの活動が複雑に影響しあう農作業は、不意のトラブルや想定外の出来事によって予定が狂ってしまう、ということもよく起こり得ます。
そんな中で、可能な限りのシミュレーションをしつつ、トラブルの芽を摘む準備に手間隙をかけることの大切さを改めて実感する機会となりました。
さらに、家族のそれぞれの役割分担やチームワークは、昨年までのコミュニケーションや経験による信頼構築に掛かっています。ありたい未来の共有は、数年かけて試みてきました。
今年はそれらの積み重ねと、昨年までの経験を踏まえた改善が上手く組み合わさってくれたように思います。
心地よい家族観や距離感、コミュニケーションの見直し
もう一つ大切に感じたのは、ワーキンググループとしてではない、家族のあり方の変化をわかちあっていくことです。
毎年恒例の5月連休中の田植えですが、この営みは1人ではとてもできません。
少しずつ自ら作業に乗り出すことも増え、ホストとして場をホールドしようとする母や、東京から帰ってくる弟なしにはなかなか難しいものです。
田植え機の操作も、弟が分担しながら担ってくれることで本当に助けられています。
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4年前の父の他界をきっかけに、それ以前と大きく体制が変わる中で継続してきた米作りですが、少しずつ各々のできることを増やしながら柔軟な対応、作業の進行もできるようになってきたように思います。
今年も事故なく無事に終えられて、本当にありがたいことです。
私の好きな本の一冊で、『トランジション』という本があります。
人は人生の大きな転機……就職、結婚、独立、家族との死別といった出来事をきっかけに、内面にも大きな変化が現れます。そしてその変化とは「それ以前の自分から新しい自分へ生まれ変わるプロセスである」とし、この内面の変容プロセスを著者はトランジションと呼んでいます。
人生の折々のタイミングで行われる通過儀礼を現代的な解釈で紹介したトランジションですが、私たち家族はまさにトランジションの最中にいました。
そして、大きな転機をきっかけに起こった変化を少しずつ受け入れ、内面を変容させながら新しい家族のあり方を見出そうとしているタイミングなのかもしれません。
そういった中で、互いにとって今、心地よいと感じる家族観や距離感、コミュニケーションのあり方が見直されつつあり、そのことが今回の円滑な田植えのプロセスの中にも現れたように感じています。
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父が大切にしてきた土地や家、田んぼも尊重しつつ、今を生きる家族にとって心地良いバランスを探りながら、丁寧にコミュニケーションを取りつつ続けていく。
明確な答えは今もまだないですが、互いを大切に思うこと、その表現を家族同士だからと当たり前と思わず、また、面倒くさがらずに真摯に行なっていく。うまく進めていくには、これに尽きます。
氏神様や実家の仏壇の前で手を合わせ、今年も無事に終えられたことに感謝しつつ、今年も豊作とできるよう協力し合いながら取り組んでいければと思います。
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