この籠、なんの籠??
秋の虫の鳴き声に耳を澄ませたのは、いつの時代の人々も変わらない。
今回は私の作っている竹籠が何に使われたのかをご紹介したいと思う。
この丸い形状からは想像が難しいかもしれないけれど、この籠は「虫籠」である。
竹でできた虫籠はよく見られるが、おそらくほとんどが四角い形をしていて、木枠に縦に丸い竹ひごを嵌め込んだものがメジャーだと思う。
どちらかといえば、鳥籠を想像してもらった方がよいかもしれない。
欧米だと金属でできてますね。
写真は東南アジア、ラオスで撮った鳥籠だ。
竹の生育地では、必ずと言っていいほど見られるものである。
だが、虫籠としての使用は他では聞いたことがない。これほど細かい網目の物がないからかもしれない。
中に虫を入れ、上から重しとなる頭(かしら)と呼ばれる部品を乗せていた。中にはヒノキの枝を差した木製の曲げ物を入れ、そこに松虫や鈴虫など鳴き声のきれいな秋の虫たちを遊ばせた、とある。
そして虫のいない季節には、籠と組紐の部分だけを軒下につるして風流を楽しんだ。
そちらの鑑賞法には詳しい記述や絵図が見られていない。
だが、この籠の影が縁側に落ちるところなどを想像すると、それはとても趣のあるものだったろうと感じるのである。
この神社の社家の人々は日々の生活を詳しく日記に書き残している。おそらくはその記述を詳しく調べれば、もっと多角的に籠に触れる記述を見つけることができるだろう。
ただ、崩し字で書かれているので、私一人の力では難しく、根気のいる作業になるとは思うが…。
モノクロ写真に色をつけるように、少しずつ竹籠を生きた伝統としてカラフルな姿で蘇らせることができたら、と思っている。