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ケッテンクラートで行く、終末旅行。

私は、絶望となかよくなることができるだろうか。

今まで生きてきた中で、唯一、原作からDVDからCD・サントラまで、出ているものすべてをそろえた作品がある。

3年前に放送された、少女終末旅行というアニメだ。いつかそのうち、紹介記事を書こうと思っていたのだけども。



最近になって懐かしくなり、全部通して見返したり読み返したりしていた。

文明が崩壊した未来の世界で、残された都市機構の中を食糧や燃料を探しながら旅する2人の話である。

絶望と、なかよく。
進化には、限界があるのかもしれない。
見て、触って、感じられることが世界のすべて。

冷静で理知的、車両の運転や修理を担うチトと、楽観的で考えることが苦手、体力仕事を任されるユーリの2人の会話でほとんどすべてが成り立ち進んでいく、少し珍しい物語構成をしている。

地上から上空高くまで何層にも渡る階層型の都市を、ケッテンクラートという半装軌車に乗って、少しでも都市機能が残っている可能性の高い上層を目指す。

刹那的で、一瞬一瞬を楽しそうに生きるユーリと、いろんなことを考えて記録を取ったり昔のことを知るのが好きな、少し心配性のチト。

文明というものに触れてこなかった2人が、自力で音楽や歌という存在に気づいたり、生命や進化という概念について考えたり、過去の世界や失われた文化に想いを馳せたりする。

全く正反対の彼女たちが、二人三脚で得ていく気づきとその会話劇が、この作品の最大の魅力である。

自分たちの生きた中からそういうことを見つけていく過程、そして、彼女たちには「わからない」という余白には、ちょっと世界がちがって見える「別の見方」と、私たちも気づいていない「新しい見方」が詰まっている。

ものすごく不便で、明日も知れぬ環境でも、彼女たちは当たり前のよう生きる喜びをもっている。

物語の設定に反比例するかのように彼女たちの毎日は明るく柔らかい。それは、「絶望となかよくしようよ。」と言えてしまうユーリと、そんな生活基盤を維持できるチト、この2人がいるからなのだろう。

自分が生きているこの世界が、不完全でも別にいいか、わからなくっても楽しめるかと思えるようになったのは、この作品のおかげだと思っている。

そんなこの作品の、いちばん心に残ってる一言。

「社会の利害とは無関係な場所にいるという点で、神と旅人は似ています。だから頼みたくなるし…祈りたくなる。」

拙い紹介で恐縮だが、どこか心にひっかかった言葉があったり、気になったら、ぜひ読んでみてほしいなぁと思う。

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