見出し画像

漆9:漆のベースとなる木材

おはようございます。
今日は久しぶりの快晴、この陽気が勢い余って場所によっては30℃に迫ろうかという位春を飛び越して夏を感じられるような日になりそうだ。

さて、今日は漆を塗るベースとなる素材を見ていきたい。


一般に漆器と言われるものの素材は木しかないものかと思っていたが、木曾ヒノキやケヤキなどの高級木材を使用したものから樹脂製(プラスチック製)の工業品まで品質は実に様々あるようだ。
しかし、今日は伝統的な漆器の素材、天然木をまとめたい。

漆器に使われる天然木はお椀、お箸、重箱、折敷など形状、用途、価格等によって木の種類が使い分けられている。

お椀に使う木の種類

お椀に使う木としては、ミズメザクラ、トチ、ケヤキが代表的。
ミズメザクラやトチは山奥で生育したものが多く、ケヤキは比較的人里近くで育つ。木目が粗いと変形しやすいことから50年以上生育した年輪が細かい木が使われる。なおミズメザクラは「水目」桜と書きますが、カバノキ属の 落葉広葉樹で一般的な桜のようなサクラ属ではありません。
これらの木々に共通していることは、加工した後に温度や湿度の変化に対して変形が少ない木であること。中でも変形が少ないのはミズメザクラで、次ぎがケヤキ、トチの順になり、価格もミズメザクラが一番高くなります。
ケヤキの長所は「木目が美しいこと」で、漆器の素材として最高級の木とされる。この美しい木目を生かして拭き漆仕上げなど木目を出す仕上げに向いている。
トチの長所は比較的「安くて軽いこと」で、軽さを求める大きめの器にむいています。軽いという半面、欠けたり凹んだりする可能性が高い。
変形が少なく丈夫なミズメザクラは薄く木地をひくことで軽さを実現することができる。
他にも栗や松、杉を使ったお椀もありますが、特に高い加工技術が必要で作家の方などが1点もので製作するような 素材といえるだろう。

重箱やお盆に使う木

産地ではお椀など木をくりぬいてつくる製品を「丸物」と呼ぶのに対して、重箱やお盆、折敷などマットのように平らな 「板」を素材にした漆器を「角物(もしくは板物)」と呼ぶ。
因みに、折敷は器の下に敷きこむもの。 お盆と似ているが、お盆は食器を運ぶものであるのに対し、折敷は食器の代用にも使われ、直接料理を盛りつけて使うこともできる。 古くは木の葉を折って敷いていたことから、折敷という名がつけられたといわれる。

昔から「角物」に使われる天然木は 「カツラ(桂)」「ホウ(朴)」「イチョウ(銀杏)」が中心だが、最近では輸入材の「米ヒバ」が多く使われていることが多い。
それぞれ、 フシが少ないことや耐水性があること、しなりや粘りがあり曲げて作る形状にも適していること、カンナや ペーパー掛けなどの加工がしやすいこと、加工したあとの狂いや反りが少ないことなどの条件を満たしている 木材が選ばれている。
光沢ある黒や朱などの伝統的な漆塗り仕上げの漆器において素地の木目は隠れてしまうことから、「木目がきれいなこと」という条件は必要ありません。漆器づくりの観点では、最終的な価格も想定しながら必要な要素がそろった素材を選んで使う必要があるのだ。
その点で「米ヒバ」は価格面で安く、素材面でも漆器に適している材料ですが、「輸入材である」という点で、素地まで国産材にこだわるお客様には受け入れられないところがある。しかし、角物用の木材は最低100年 以上の樹齢のものがよいといわれるなかで、限られた国産の材料だけにしぼって漆器づくりに取り組むことは価格設定や品質維持の観点での課題があるのも事実。価格と品質のバランスが重視される今の時代のニーズにあった漆器づくりをする上で選択肢を広げるという点で役割を担っている。

塗り箸に使う木

毎日の食事で使うお箸にはさまざまな素材が使われおり、そのお箸にも漆が使われた塗り箸がある。
半世紀ほど前まで日本人が使用してきた塗り箸の素材としては耐久性にも優れた竹が中心だったが、その後はより硬くて 丈夫で反りなどの変形が少なく価格的にも安い材料が海外から輸入されるようになった。現在の塗り箸市場では輸入材が多く使われており、代表的なのはパプアニューギニアから輸入される硬くて重い「マラス」と呼ばれる木材。フォークリフトのパレット用に使われるほどの強い木で、原木のまま輸入して日本の工場で箸の形にカットして塗り箸の素材に使います。
マラスより少し価格が高く、同様に強度もある材料が「鉄木(てつぼく)」です。その名のとおり鉄のように幹が硬い木という ことでお箸の素材としてよく使われます。鉄木は東南アジアを中心に生育している樹木です。
なおマラスや鉄木より価格が 10倍以上する縞黒檀(しまこくたん)などの「唐木(からき)」が塗り箸に使われることもある。この場合は美しい素地の 木目を生かすような塗りが施される。
木のお箸は原木の状態からまず板にしてさらに細い箸の形にカットして素地をつくる。「板」という字が「木が反る」と書くように木を素材とした薄いもの、細いものは「反り」が最大の課題になります。反りは木の年輪と関係があり、成育した場所の環境変化が大きい木ほど年輪がはっきりして反りの可能性が高いといわれている。塗り箸に関しては、四季のある日本の樹木よりも気温が安定している東南アジアの樹木のほうが反りの可能性が低い分、お箸に適した素材といえる。

木を原料にした新素材

今まで、一つの素材でベースを作るケースを見てきたが、合板を原料にした漆器づくりも行なわれます。
合板は繊維方向が90度違う薄い板を重ねあわせて圧縮接着してつくった板で、国内ではベニア板などの呼び方で知られている。繊維方向が異なる板を重ねることで、板特有の「反り」が発生しにくいことが合板の最大のメリットです。また、木を原料にしていることで、本漆との相性がよく天然木同様の工程で漆塗り仕上げができるというメリットもある。
漆器業界ではシナノキを原料にしたシナ合板が多く使われている。40年ほど前まで漆器業界では合板を使わずに一枚板による「反り」の修正に時間をかけていた。木地を乾燥させて反ったらカンナで平らになるように削り、また反ったら削り、その繰り返し。合板の導入により木地づくりの作業において反りを修正する手間が極端に省けたのだ。合板を素地として使う漆器の種類は主に重箱の底板、フタ板、お盆、お膳などに使われます。ただし、小口(合板の側面のカット部分)が粗くなるため漆を綺麗に塗る事が難しいため、小口が 表に出ないような使い方をします。たとえば重箱の場合、底板に合板を使い、側面には一枚板を使うようにします。
中質繊維板は、おがくずなどの木材チップ(木質繊維)を原料に接着材を混ぜて板状に圧縮成型した素材でで、MDF(medium density fiberboard)と呼ばれることもある。 反りが発生せず、本漆塗りができる素材として「最も安価」なメリットがある一方で、接着剤による成型品のため水に弱いことや天然木や合板に比べて重いというデメリットがあります。このため、漆器の素材として使用する場合は、水を使う食器には使用せず、文庫やフォトフレームなど水を使わない用途の漆器に使われる。

天然木を使うメリット

天然木素材の漆器は合成樹脂素材よりも軽く、熱が伝わりにくいため熱い汁物をいれても持ちやすく保温力がある。また、漆との相性もよく塗り重ねるほどさらに丈夫な器になっていく。傷んでも修理ができる点も木製漆器の特徴だ。
一方で最近は、プラスチック素地にウレタン塗装をした「近代漆器」と呼ばれるものもあり、その耐久性を活かして給食などで使われるケースもある。


*上記の情報は以下のリンクからまとめています。

『漆器』=『高級品』というイメージが強く日常生活で使うイメージが持たれにくい中で、やはり敷居が高くなってしまっている。そんな中で、漆器産地では用途や製品価格にあわせて漆器の素材に使う木を選びながら、より手軽に湿気に慣れ親しんでもらえる様に、クオリティを落とさず伝統に縛られすぎず価格を抑えられる素材探しというところでも革新していってくれているのだ。
どんなに素晴らしい技術でも文化でもそれが引き継がれていくことでより価値が増す。そういった意味で伝統文化を継承されている職人さんたちは、常に開拓者としての心意気を持って取り組まれている。だからこそ、僕らそのサービスを受け取る側も、世の中にものが溢れかえる中でそういったものに価値を置き、消費ではなく文化に対する投資として購入して行くことで、双方で文化を守るということが初めて社会としてできるのだと思う。


僕は幸せになると決めた。
今日もきっといい日になる。
一歩一歩、着実に歩もう。


皆様も、良いGolden Weekを。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?