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『光る君へ』第35話を観て・・・※ネタバレあり
みなさん、こんにちは。
『令和源氏物語 宇治の恋華 第二百三十二話』は明日9月19日(木)に掲載させていただきます。
本日は『光る君へ』第35話の視聴感想を掲載させていただきます。
タイトルは「中宮の涙」でした。
近頃情緒を育まれた中宮が女として花開く場面ですね。
御岳詣で
道長(柄本さん)は中宮・彰子(見上愛さん)のご懐妊を祈念するために御岳詣でに出かけることにしました。
神がお住まいになる山に詣でて祈願をするという、険しい道のりを命がけで行く荒行のようなものでしょうか。
長野県に御岳神社がありますが、その奥の宮を詣でたり、山岳信仰と民間信仰が結びついたもので、平安時代から室町時代に行われておりました。
道長一行が向かったのは吉野の金峯山寺です。
この辺りは山岳修行の霊場として、金峯山寺はまさに修験道の開祖・役小角(えんのおづぬ)が開いた寺です。
烈しい雨に降られ、時には崖から転落しそうになりながら、一行はなんとか9日かけて本堂へと到達します。
またもやBGM問題でどうにも首を傾げてしまいましたが、マーチ???
まぁ、行軍さながらですが・・・、ちょっとコミカルでした。。。
ともあれ心をこめて綴った願文を納め、皆で経を唱えながら願いの成就を祈りました。
伊周急襲
35話の最初から伊周(三浦翔平さん)が道長を襲うようなそぶりがありました。(34話の予告でも仄めかされておりましたが)
兄の元を訪れて、下賤の武人が出入りするのを何やら不穏と感じ取った隆家(竜星涼さん)は、兄の策略を懸念します。
案の定、道長一行が御岳詣でを終えた帰途に矢をつがえた武士たちを従えた伊周の姿がありました。
隆家は矢で狙われた道長を身をもって庇い、兄の愚行を知られないよう「この先で大きな石が落ちてきました。一刻も早くこの道を抜ける方がよろしかろうと存じます」と声高らかに兄を牽制しました。
弟に邪魔をされた伊周は苦言を呈しますが、兄を諌めることこそが自分の贖罪であると吐露しました。
若気の至りで花山院に矢を射かけてしまったことで家門の失脚につながったのを悔いているようでしたが、当時の関白家は横柄に天下を謳歌していたもので、定子が亡くなればどのみち失脚は免れなかったでしょう。
夕顔と若紫
一条天皇(塩野瑛久さん)はまひろ(吉高さん)の局を訪れ、夕顔の帖について「なぜ夕顔は死なねばばらなかったか」と問います。
まひろは人の思いと心ざまを物語に表しているので、帝が恐ろしいとおっしゃった六条御息所の気持ちもわかると答えました。
人の心には愛があり、それゆえに憎しむ心が生まれるものです。
その綾を表したのがまさに源氏物語であると私も感じます。
若紫の帖は大きな波紋を様々な人達に投げかけました。
中宮の御前にて、女房達は若紫を拐わかした源氏の行いを「強引」という者もあれば、関心の薄い父親の元に引き取られ継母に育てられるよりはマシだという者も・・・。
物語はそれぞれの捉え方があってよいと鷹揚に構えるまひろの姿が紫式部らしいと感じられた場面です。
そしてその物語に引き込まれた中宮は「若紫を源氏の妻にしてほしい」とまひろに懇願するのです。
それはあたかも自分と帝を重ねあわせたかのように。
そんな中宮の心の変化を見たまひろは帝への好意をそのまま伝えるべきであると励ますのです。
そこにちょうど帝のお渡りが・・・。
中宮は涙に濡れて「お慕いしております」と告白するのでした。
情緒が乏しいと不憫に思っていた中宮の成長に帝は心を揺さぶられ、とうとう夜のお渡りが実現しました。
道長とまひろ
御岳詣でから戻った道長はすぐさままひろの局を訪れます。
そして「若紫」の帖を読むのです。
若紫の有名な場面といえばやはりあの場面。。。
「雀の子を犬君が逃がしつるを・・・」
源氏が北山で雀が逃げてしまったと泣くどこか藤壺の宮に似た少女と出会う場面です。
私が書きおろした現代語訳では27話になります。こちら↓
道長とまひろが初めて出会った場面をベースにした創作、ということに劇中にはなっておりますので、二人は昔を懐かしんで思い出話をはじめます。
まひろは空想好きの少女だったので、道長に嘘をついたことなどなつかしく「とんだはねっ返りであった」と心安い場面でしたが、一転源氏と藤壺の不義密通のくだりには「どうした心積もりか?」と問います。
たしかにこの時代は男女の貞操観念があまりなく、公然とされなくても帝の女御が帝以外の男性と関係をもつといったことはあったでしょう。
しかし源氏が父の妻である藤壺の宮に手を出すなど、まさに「不敬」そして「不義」に他なりません。このような物語を帝にお見せしてよいものか、と普通ならば考えるでしょう。
そこを問いただそうと道長が考えているのではないかというところで、まひろから意外な言葉が飛び出しました。
「我が身に起きたことにございます」
我々視聴者は「あら~、ここで道長にバラしちゃった???」という気分ですが、道長はイマイチピンとこないモヨウ。
むしろ俺以外にも想う男があったのか?とショックを受けているようにも見えました。
「我が身に起きたことはすべて物語の種」と道長を言葉で煙にまいたまひろでしたが、局を後にした道長はふと足を止めました。
まひろの性格を考えてごらんなさい。
そんなに簡単に心を変える人ではないでしょう。
道長、ここに至り、賢子は自分の娘であると気付いたようでした。
私が書いた源氏と藤壺の再びの逢瀬の場面はこちら↓
今週の真宙君
なんとまひろの弟の惟規(高杉真宙さん)は、斎院の女房に手を出し、畏れ多い斎院のお邸に忍び、捕まってしまいました。
斎院に手を出していなかったのでギリセーフでしょうか・・・。
うまく和歌をひねり出したので、斎院に許していただけたということですね。
ここで斎院と斎宮について解説をしましょう。
天皇を頂点とする平安の国家では、帝の代わりに国の鎮護を祈念して未婚の内親王が神へお仕えしました。
遠い伊勢神宮にお仕えする姫宮を「斎宮」、賀茂神社にお仕えする姫宮を「斎院」と呼んだのです。
天皇の御世が変わると新しい斎院と斎宮が選出されます。
姫宮は二年の間、川で禊をして、肉食などを控えて精進潔斎をさないます。
その後に斎王として務めを果たされるのです。
源氏物語では、源氏の従姉妹である朝顔の姫が斎院に選ばれ、父親の式部卿宮がお亡くなりになるまで務められました。
そして六条御息所の姫は斎宮に選ばれ、潔斎の後に母親の六条御息所と共に伊勢へと下るのです。
この姫は後に「斎宮の女御」と呼ばれ、源氏の息子である冷泉帝の元へ入内します。そして中宮に冊立され「秋好中宮」となるのです。
さて、名実ともに帝の后となった娘の彰子にほっと安堵する道長とまひろ、いつものように二人で月を眺めているところを何者かが窺っています・・・。
召人の君、と道長の正妻・倫子(黒木華さん)にバレるのか???
では、また来週☆