コノハナサクヤ 十二
ご近所の町中華を巡る。
「この辺りは意外と多いんだよね〜」
都内の様な人の群れもなく道の一本一本が広くて長い。お空が広い。
地元のひとは「何もないよ。」というけれど、お空と海があれば十分。ぜんぜん飽きない。どんどん好きになるばかり。
買い出しの帰り道。夕方の十七時すぎ。今日の目標地は半には店仕舞いらしくあきらめる。
どうしよう。お家でごはん作ろうかな。
来た道を戻る。
十七時半。来々軒前。十七時四十五分から。
最近は暗くなるのも早く、同時に一気に肌寒くなる。昼間の薄手で立っていると風がダイレクトに体温を攫ってく。
足は勝手に、止まらずに横断歩道を渡り来た道を戻り続けた。
…やっぱり拉麺が食べたい。
ランチで何度か入ったことのある中華屋さんに入ることに。
「すみません。葱チャーシュー麺お願いします。それと…」
ランチと同じ拉麺を注文。ランチでは
炒飯とデザートが付いていてリーズナブルなお値段。
夜は拉麺のみでそのセットよりもちょっぴりお高い。というか正規の値段なのだと思う。
お客さんがまだ私ひとりで拉麺だけなのもなんなのでサワーも頼んでみる。
中国人の料理人さんとウェイトレスさん。
店内ではお昼と同じく中国の曲が流れてる。
奥でお子さんが寝ているのがちょうど席から見えた。
この間のお昼に来た時はカウンター、テーブル席見事に満席。
お客さんがちらほら入り始める。
お仕事終わりのスーツ姿の方々。常連さんのよう。
「お待たせしました。」
拉麺が来た。
何の変哲もない拉麺だけれど、葱を和えてる辛味の香辛料があちらの方しかあまり使用しない味でそれがまたいつの間にか癖になり、再び食べたくなる。ちょい足し的新しい味が新鮮なんだと思う。
もう少し歩いた日本人ご夫婦のやられている中華屋さんもお昼はガテン系の中年男性で満席。子供からお年寄りまで安心していただける全く癖のない素朴な味。
二つの拉麺の違いは麺もスープもそれほどない気はするけど、このほんのり自己主張する香辛料と「嵩」くらいなものだろう。
いわば、ほんのり異国を主張もし続けるし、メガマックもしない町のハンバーガー屋さんは、この町で不動の子供舌中年男性の人気を誇る町中華屋さんと老舗連合として共存してる。
「ふーふー。」腹ぺこで一口めから思いっきり啜る。
「(あ!!?)」
そう。私は気づきました。
「(そう言えば、拉麺!無性に食べたくなってこの辺りけっこう食べ歩いてるけどわかった。王様だ。王様が拉麺好きなんだ。)」
そう、王様は戻って来てる。
かの有名な王様。ビャンビャン麺に感銘を受けたなどの言い伝えが残されていて、風の噂で知っています。
「(そっかぁ。辛いのっていうより麺がす…)」
「(ぼくです)」
「(麺好きだっ…)」
「(拉麺はぼくです)」
「(?!はしお?)」
はしおさんが意識化に入り込む。はしおは毎日ラム肉パーティー。ではない?
「(拉麺、好きなんだ)。」
故郷の味かな。最後の方は遠い異国で、記憶のなかの故郷の味が恋しかったりしたのかな。
「(あ!!!???)」
そう、私には幾つもの心当たりがありました。
幼少の頃の外食は九十五パーセント拉麺。
週一、土曜日の小学生の頃のお昼は拉麺、炒飯、お好み焼きのエンドレスローテーション。
初めてのアルバイト拉麺屋さん。
でもそれは、母親が拉麺が好きだからであって、、
「(えいこさん(おかあさん)、(無)意思疎通し易いんだよね」)」
やはり。
というかいつからはしおさんは居るのだろう。
母は詳しくはわからないけれど、蒙家側の方とご縁があるらしいとのことです。
その辺りは後後。知らないほうがロマンがあるだろうとも。
たしかにたしかに、たしかにぃ。。、(脳内過去回想)
世界のオタク代表くらいにはチャイニーズ宮廷ドラマが大好きな母。
天然だけど、たまに芯を突くことを言って来る、御神籤みたいな母。
謎の絶妙なタイミングで未来のことばをくれる母。
…。
ずっと居るんですね。
王様が戻ってきた。
…。
これからが楽しみ…
まさか。はしおさんずっと居ますよね。
色々あって、ありすぎて。一緒に乗り越えてきて。ほんとうの楽しみはまだまだこれから。いっしょに…
勝手に涙が溢れてくる。
拉麺食べましたよね。
私を使って、いや拉麺食べたのは私ですけど、はしおさんが食べたかったのでしょう?
拉麺代分働いてください。いやです。そんなのいやです。責任取ってください。
護衛として身バレした責任。一生護っていただかないと困ります。
もっと美味しい拉麺、あっ博多天神。また行きましょう…
まるで将棋の駒の様に