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夏の星座を通して見るフィレンツェの作品 11 ヘラクレス座

盛りだくさんのヘラクレスのお話も、今回で締めくくりです。

ヘラクレスはケルベロスをハーデスから借りるために冥界に降りた時、メレアグロスという英雄の亡霊から頼み事をされていました。妹のデイアネイラをぜひ頼むと言われていたので、彼女がいるカリュドーンにやってきます。評判場通り美しかった彼女にすぐに惹かれたヘラクレスは恋のライバルを打ち負かし、妻として彼女を連れ帰ります。

旅の途中二人が川を渡ろうとした時、増水していたためデイアネイラには無理でした。
そこでたまたま出会ったケンタウロスのネッソスが二人を対岸まで乗せる事を申し出ます。ヘラクレスは泳いで渡れたので、奥さんだけ頼みました。

しかし美しいデイアネイラを見たネッソスは邪な気持ちを抱き、襲いかかります。


ジャンボローニャ 「ネッソスを倒すヘラクレス」 1598年 ランツィの回廊



ヴィンチェンツォ・デ・ロッシ 「ネッソスを倒すヘラクレス」 1568年 ヴェッキオ宮殿


英雄と言うより悪鬼の様


彼女の叫び声を聞いたヘラクレスは、以前退治したヒュドラの毒を塗った矢で倒します。ネッソスは息絶える前、何とかヘラクレスに仕返しをするために、デイアネイラに嘘を吹き込みます。

「いつか、ヘラクレスが別の女性に心奪われることがあったら、自分の血を浸した服を彼に着せるといい。そうすれば、気持ちを取り戻すことができる。」

彼女はネッソスの言葉を信じ、血をとっておきます。

後にヘラクレスはかつての婚約者候補だった、オイカリアのイオレー王女を連れ帰ります。嫉妬に駆られたデイアネイラはネッソスの血をヘラクレスの服に浸し、従者に夫の元へ届けさせようと考えました。本当は血が、致死の毒に侵されていると知らずに。


ヘラクレスが服に袖を通したところ、たちまち焼けるような痛みが広がり、脱力感に覆われます。

彼は最後の力を振り絞って側の木を引き抜き、自らを焼くための火葬台を作ります。息子たちに火を放つよう言いますが出来なかったのでできれば通りかかった羊飼いに点火してもらい、生きながら焼かれたのでした。

その時、ゼウスが雷鳴と共に彼の体を天に引き上げ、オリンポスに連れて行きます。散々ヘラクレスを憎み嫌がらせをしてきたヘラも、彼の壮絶な最期を知りヘラクレスと和解します。神々の仲間入りをさせ、娘のヘーベーと結婚させてくれました。

一方、デイアネイラは事の次第を知り、罪悪感に駆られて自殺しました。


ヘラクレスは前回も触れた通り、キリスト教でもキリストの前身として重視されているので、西洋の芸術を見る際に彼の物語を知っているとぐっと楽しめます。

参考になさってみてください。

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