6.ハイフィデリティ(High Fidelity)を読んで 読書感想文
・あらすじ
主人公ロブは35歳のレコードショップ店主。ある日、同棲中の恋人ローラが理由も告げずに出ていってしまう。「なぜ彼女は出ていったのか」「恋愛対象としての自分に何か欠点があったのでは?」理由のわからないロブは、過去の恋愛経験を紐解くことによって、自分の欠点、ローラの気持ちを理解しようと試みる…
・感想
僕がこの本を手にした理由は2つあります。
1つ目は同タイトルの映画版が面白かったから。
登場人物の会話。レコ屋や主人公の家のセットにある様々なレコード。これらには音楽好きにはたまらない引用やアイテムが散りばめられていて、小説版にはより多くのそういったものがあるのではないかと考え、この本を手に取りました。
2つ目は何か人生におけるヒントがあるのではないかと思ったから。
特に恋愛に関して。自分はそういうのが苦手だから、同じ音楽好きの主人公の話なら自分に活かせるものがあるのではないかと思い、この本を手に取った。
結果としては、2つのうち1つを得ることができました。それは前者の方です。
小説版ではページをめくるごとに、アーティスト名、曲名、映画名までもが膨大に出てくる。作者の知識量に打ち負かされながら、ページを捲らなくてはいけないことは、勉強になると同時に辛かった。
しかも巻末についている注解ページは40ページにもわたり、114の注釈が打たれていると気がついた時には、この筆者こそがロブ、もしくは同じくレコード店員のバリーやディックなのではと思ったほどです。
後者の方も得れるものがなかったわけではない。
それは小説から人生のヒントなんか得ようとするなということ。同じ音楽オタクでもロブは恋愛相手には事足りていた。それなりに恋愛もしてきたし、10人以上の女と寝たことがある(そう書いてあった)。
世の中の音楽オタクはバリーやディックのような人の方が多いと思う。でもその二人を題材にして書いたって、面白いストーリーはできない。
「小説はエンタメだ、自分の人生に重ねすぎたらダメなんだ」
…ということを知るには少し遅すぎたと感じる。
ただその中でも一つ、心に残ったシーンがある。
それは浮気性であるロブがローラに結婚を切り出すシーン。
ロブはこれまで結婚により人生が縛られることを恐れていた。家族のために働かなくてはいけない、むろん女遊びもできなくなる。それは嫌だった。
しかし、愛する人が出ていき、自分の存在を見つめ直したところ、彼女の存在があることで自分の存在があることを悟る。
結婚という足場をしっかりと持つことで、人生に意味が生まれ、長年苦しめてきた恋愛において悩むことがなくなり、逆説的に自由になれる。
主人公は30代。
30代はそういうことを決断する歳なのかもしれない。
・まずは、映画版から見てほしい
映画版はロブ役にジョン・キューザック。ローラ役にイーベン・ヤイレ。そして、バリー役にはジャック・ブラックと豪華俳優が担当しています。
また、前述した通り音楽や映画の小ネタも随所に挟まっており、アメリカやイギリスのサブカルが好きな人にはハマること間違いなしです。
そして気に入ったら、そこから小説版へと移行してくれたら嬉しいです。
ご清聴ありがとうございました。
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