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大学3年生の私がBtoB SaaSのマーケティングスキームを構築した話

はじめまして、CHILLNNでBizdevインターンをしている石蔵(@yui_ishikura)です。
CHILLNN(チルン)および関連会社の水星に学生インターンとしてジョインし、1年半が経過しました。大学とCHILLNNの二刀流で、週3日ほど勤務しています。

さて、今回は「私がCHILLNNのマーケティングスキームを構築する中で実践したこと」について、出来る限り具体的にお話ししたいと思います。
知識も経験もないゼロからのスタートだったため、失敗談も含めてお伝えします。

この記事はこんな方におすすめ!
・BtoBマーケティングの仕組みづくりに関心がある人
・デジタルマーケティングの仕組みづくりに関心がある人
・CHILLNNについて知りたい人


CHILLNNとThe Model

CHILLNNは、宿泊事業者向けSaaSを運営する京都発スタートアップです。おかげさまで事業は急速に成長しており、2022年12月時点の年成長率は357%でした。(すごい!)

そして昨年、事業が0→1フェーズ(PMF)から1→10フェーズ(GTM)にシフトしたことをきっかけに、The Modelを参考にBizdevの責務を以下の通り分解しています。

出典:Salesforce「営業効率を最大化する「The Model」(ザ・モデル)の概念と実践」

これからお話する内容は、(非常に有り難いことに)The Modelで言うところの”マーケティング”の仕組みづくりを任された私が、4ヶ月間ひたすらインプットとアウトプットを繰り返した軌跡です。

ちなみに、CHILLNNは事業成長スピードに人材採用が追いついておらず常に人が足りない状態です。
そのため完全分業体制というよりは、各々が1日に2~3件の商談やCS面談,HR業務を捌きつつ、自身の責務領域(マーケ,IS,FS,CS)を追っている、というゆるやかな分業体制がリアルです。4ヶ月間マーケティングのみに注力できる方には物足りない内容かもしれませんが、ご容赦ください!

なにをやってきたのか

それでは、本題に入りましょう!
私が実践したことを以下の時系列に沿って説明します。ざっくり1ヶ月目は戦略設計、2~4か月目は施策の実行とROIの計測という内容になります。

1. ミッションの策定

はじめに、CHILLNNにおけるマーケティングのミッションを策定しました。マーケティング活動の軸となるミッションを定めることで意思決定のスピードが向上するだけでなく、他部門との意思疎通の円滑化にも繋がるため、最初にミッションを策定するのはおすすめできます。

社内Notionに記されたミッション

このミッションは、池田紀行さんのnoteを参考にしました。マーケティング施策の基本が分かる素晴らしい記事ですので、お時間ある方は是非!

2. マーケティング戦略の再設計

CHILLNNは2021年に本格ローンチしたサービスです。
1→10フェーズで爆伸びするためには、従来の(=ローンチからPMF達成までの)マーケティング戦略を洗い直す必要があり、下記の順序でマーケティング戦略を再設計しました。

2-1)内部・外部環境分析
2-2)セグメンテーション・ターゲティング
2-3)バリュープロポジションの明確化


戦略設計に取り掛かる前に、もしあなたが一人でマーケティングに取り組む若手なら絶対にやるべきことがあります。それは、戦略設計のロードマップを作成し、チームに共有すること。そして、その際に「〇〇まで完了したタイミングで合意形成MTGを行う」ことを伝えます。これだけであなたは自由に動くことができ、しかも方向性を大幅に間違うことも無くなります。


2-1)内部・外部環境分析

マーケティング戦略を設計する上で一般的なフレームワークとされる3Cや4P,SWOT分析を行い、内部・外部環境を整理します。このあたりのフレームワーク活用方法はインターネットにも本にも沢山解説されているため今回は割愛します。

2-2) セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング

環境分析の後は、CHILLNNを利用してほしい顧客を明確化するためのセグメンテーションを行いました。

セグメンテーションでは、縦軸と横軸を設定し市場を細分化しますが、軸の設定はつまずきやすいポイントですね。ここでは「いくつかの変数を試して最も相応しい組み合わせを選ぶ」という流れがおすすめです。一般的には下記のような変数が指標として利用されます。

・デモグラフィック(人口統計的変数)
・ジオグラフィック(地理的変数)
・サイコグラフィック(心理的変数)
・ビヘイビアル(行動変数)

上記の変数で上手くいくケースもあると思いますが、CHILLNNの場合はターゲティングに効くセグメンテーションとは程遠いため、考えられる変数(ADRや室数・OTA掲載数・系列施設数など)で何度か試行しました。結果的に縦軸を室数に、横軸を最低客単価に設定することで落ち着きました。

見ずらいですが、下図のようなイメージです。

ここから、各セグメントの解像度を高める作業に移ります。

下の画像のように、セグメント別にカードを作り、属性をまとめていきます。室数や最低客単価の基本情報に加え、このセグメントがターゲットにしている宿泊客は誰なのか?どんな価値を提供しているのかを言語化します。

さらに、より客観的な評価を加えるため6Rで分析をブラッシュアップします。

6R
・Realistic scale(市場規模)
・Rate of growth(成長性)
・Rival(競合の状況)
・Rank(優先度)
・Reach(到達可能性)
・Response(測定可能性)

最後に企業独自の評価基準を加え、セグメンテーションは一旦終了です。
出来上がったセグメンテーションを総合的に判断し、ターゲティングを行います。

今回は、このタイミングでCEOとBizチームに集まってもらい合意形成を行いました。

2-3) バリュープロポジションの明確化

ターゲットまで決まればあとはバリュープロポジションを定め、実際に施策を実行するのみです。

バリュープロポジションとは、「誰が顧客」であり、その顧客の「ペインポイントは何で」、その顧客に対して「どのような価値を提供する」「何で(製品カテゴリー)」、それは「どのような機能」によって成立しているか。それは「競合製品や既存のソリューションと比べて」どう違うのか、をシンプルに明らかにするものです。

『PMFへの第一歩: バリュープロポジション (フォーカスと再現性) 原健一郎 | Kenichiro Hara』より一部引用

バリュープロポジションを定めるまでの大まかな流れは以下のとおり。

①顧客のペインを洗い出し&優先順位付け
②ペイン別にバリュープロポジションを定義
③絞り込み&ブラッシュアップ

私はこの”ペインを洗い出す”段階で苦戦しました。

冒頭でお話ししたとおり、私は普段から商談やCS面談で多くの宿泊事業者さんから直接お話を伺っているため漠然としたペインは分かるのですが、なんとなく表面をすくったものに感じるというか、クリティカルな課題ではないように感じて…。

ここでメンバーからアドバイスをいただき、各セグメントの主要経営指標を掘り下げることにしました。
そのセグメントはADRを高めたいのか、維持したいのか?送客手数料を下げたいのか、それほど気にしていないのか?リテンションレートを高めたいのか、そもそも追ってないのか?

これらをCEOとBizチームで議論し、主要経営指標から浮かび上がったペインをもとにバリュープロポジションを定めました。

(なんと、ここまでで早くも1ヶ月が経過してしまいました!週3稼働だとこれが限界かもしれないけど、本当はもっとスピード感がほしかった。。)

バリュープロポジションを定義する際に非常に参考になった記事↓

2-4)ユーザーインタビュー

さて、一通りの戦略が設計できた段階で、仮説検証のユーザーインタビューを実施することをおすすめします。オフィスの中で作り上げたペルソナは単なる妄想に過ぎないからです。

最初はユーザーインタビューに若干の苦手意識があったのですが、下準備でかなり緩和できますので、同じように苦手意識がある方は是非こちらの本を読んでみてください。

メンバーに紹介してもらった本ですが、インタビューの手法について非常に丁寧に解説されており、私のようなインタビュー初心者にはハマると思います!

3. 施策の実行

残った3ヶ月間で実施した主な施策は以下の通り。

3-1)メールマガジン
3-2)ウェビナー
3-3)リスティング広告&LPO
3-4)ホワイトペーパー
番外編)単発マーケティングキャンペーン

toBマーケティングでは複数販路を立ち上げないことには高さを出しづらいため、とにかく販路開拓を意識して取り組みました。

3-1) メールマガジン

メルマガは、認知→興味関心フェーズにおける最重要施策だと認識しています。

「BtoBマーケティングの定石」によると、メルマガは一度メールアドレスを取得するとほぼ無料で送り続けられるため、マス広告のようにコストを垂れ流し続ける施策に比べて圧倒的にパフォーマンスに優れています。
しかも、 配信回数と解除率に相関は無いため、恐れず高頻度で配信することで確実な成果を得ることができます。

高頻度で配信するために最初の2~3週間で取り組むべきことは、メルマガの型化です。たとえば以下のように配信内容をいくつかのパターンに分け、それぞれにテンプレートを作成します。

・導入事例紹介
・プロダクトの機能解説
・業界の最新トレンド解説

これにより作成コストを最小化し、属人性を99.9%排したレギュラー施策として運用できます!

また、メルマガに取り組む場合は、いくつかの企業のメルマガに登録することから始めると良いでしょう。タイトルからCVまでの動線設計は様々なので、自社サービスに適した型を見つけるまで何度も試行することをおすすめします!

3-2) ウェビナー

CHILLNNでは、大きく分けて2種類のウェビナーを定期的に実施しています。

①新規顧客獲得を目的としたウェビナー
②CSを目的としたウェビナー 

短期的に見るとメルマガほどROIが高い施策ではありませんが、長期的に見るとやらない手は無いくらいの効果があります。

そしてこれも、最初に型化することが大切です。

・企画からクロージングまでのtodoを詳細に定義し、1回あたりのコストを最小化すること。
・スライドは最初期の段階で(可能であればデザイナーが)テンプレートを作成し、品質を一定に保つこと。
(・余裕があれば、サムネイルのデザインは毎回新しいものを作成した方が当然集客力は高まります。CHILLNNではなかなか出来ていないですが…。)

これらを意識すると、意外と低コストで実施できます。
ウェビナー終了後はレポートを作成したり、アーカイブ動画を配布したりという形でコンテンツを再利用すると尚良いですね!

3-4) リスティング広告&LP改善

試行した中で唯一、未だに掴めていない施策です。
広告運用のナレッジが殆ど無かったため、初期に社外マーケターの方に相談しFBを受けながら走り出しましたが、まだ効果実感はありません。。

書けることが無いので、出稿設定の際に参考になった記事をご紹介します。

3-4) ホワイトペーパー

顧客とのコミュニケーションの起点になる『神施策』です。メルマガと同等か、それ以上にROIが良い施策と言えます。

余談ですが、クラウド人事労務ソフトSmartHRさんも、ホワイトペーパーに軸足を置いてマーケティング活動をしているそうです!(半年で29本は凄すぎる)

前述したメルマガやウェビナーとの相性も非常に良く、CHILLNNのマーケティングでもかなり優先度高く取り組んでいます。メルマガと同様に内容をいくつかのパターンに分け、それぞれにテンプレートを作成することで、なんとか月3~4本のペースで公開しています。

番外編)単発マーケティングキャンペーン

上述したレギュラー施策だけではなく単発のマーケティングキャンペーンも実施しているため、番外編としてご紹介します!

直近では、ユーザーインタビューをきっかけに企画された「開業応援キャンペーン」を実施しています。
CHILLNNでは、下記のような単発施策用のLPを最小工数で実装するためのワークフローをエンジニアに構築してもらっているため高速でPDCAを回すことができます。まだ同様の仕組みが設計されていないスタートアップのマーケティング担当の方は、一度エンジニアチームに相談することをおすすめします!

どんな成果が出たのか

以下は、「新規のリード獲得数」をまとめたグラフです。
(※横軸が時系列、縦軸が累計リード獲得数。リード獲得数は実数ではなく、2022年1Qに獲得したリード数を「1.00」とした際の累積数。)

宿泊需要が急激に落ち込んでいた1年前と市況が異なるとはいえ、YoY672%はかなり良い数字ですね!特に今期(2023 1Q)は過去一の成長率となりました。

全体を通して言える、やっておきたいこと

どんなに忙しくても必須でやるべきことは以下2点です。

①属人性の排除とナレッジの蓄積・共有
②ユーザーインタビュー

ご紹介したマーケティング施策を継続的に実施するためには、仕組みを構築する際に属人性を排し、いつでも誰にでも業務を委譲できる状態を意識する必要があります。

たとえば毎月のレギュラー施策としてメルマガ10回,WP5本,広告運用,LPO,ウェビナー1本を実施した場合、どう考えても一人でこなせる量ではなくなり、ギリ捌けたとしても新たな販路開拓が後手に回ってしまうためです。どれだけ忙しくてもNotionなどの社内データベースでナレッジを共有し、運用可能な状態をつくりましょう。

また、ユーザーインタビューも大切です。前述したとおり、どれだけロジカルに設計しても、オフィスの中で作り上げたペルソナは妄想に過ぎないからです。とにかくユーザーインタビューを重ね、仮説検証を繰り返しましょう。

終わりに

最後までご覧いただきありがとうございます。

CHILLNNでは、一緒に働く仲間を募集中です!
手前味噌ですが、本当に素敵なメンバーばかりですので、少しでも気になる方は覗いてみてください!


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