キャロットラペでなんとかなる精神と、実際なんとかなってる身体
「フランス人女性は、降り注ぐ太陽を浴びるバカンスの前にキャロットラペをボウルにたっぷり食べます」
という内容の文章が、キャロットラペという存在とのファーストコンタクトだった。
思えば多感だったあの頃、元水泳部だった私は色白(ついでに言うとそこに黒髪と赤リップ)になることに強い憧れがあり、紫外線対策に関するあらゆる情報が欲しくて仕方なかった。
多分今ならSNSを一生見てインプットするであろうが、当時はスマホすらなかった…ではどうしたかというとティーン向けからミセス、時にはシニア向けまであらゆる世代を対象としたいろんな雑誌を読み漁っていた。マキアやボーチェなどに載っていたお小遣いで買えないような日焼け止めレビューの情報に接しては、きっと塗り広げるだけでうっとりするんだろうな…大人になったらいつか…と夢想にも近い憧れを抱いていた。
(ちなみに大人になった今も私は当時使っていた一本398円の日焼け止めを愛用していて、長年慣れ親しんできその皮膜感やコスパの良さがなんだかんだ気に入っている。)
そんな日々の中で、ジャンルでいえば海外に暮らす女性たちのライフスタイル特集だったページに冒頭の文が掲載されていたのである。キャロットと名がつくからにはにんじんであろうが、ただでさえにんじんを積極的に求めていくタイプではなかったのにあまつさえボウルにたっぷりって…と全然腑に落ちなかった。その違和感が故に今も覚えているのだろうと思うが、今やわたしはキャロットラペを毎日食べている。
お弁当を持参して働いているが、まぁお弁当というのは美味しく楽しいものの準備が5秒で終わる行為ではないのでなるべく効率化を図り続けてきた。そんな中で、美容目的よりも保存が効くつくりおきとしてのキャロットラペのポテンシャルに気付いたのだ。塩と酢をしっかり馴染ませるので、冷蔵庫に入れておけば日曜の夜に作ってから金曜のお昼までずっと美味しく食べられる。それを知ってから、かれこれもう2ヶ月近くお昼に鶏胸肉と玄米と昨晩の残りの野菜おかずとキャロットラペをちびちび食べる生活を続けている。
またこれが飽きないのだ。年をとるごとに酸っぱい味付けが好きになったからか毎回新鮮に美味しい。結構アレンジも効くのだ。最近はバルサミコを少し多めに入れて粒マスタードをたっぷり馴染ませる作り方をしているが、これがまた美味しい。レモン汁を多めにしてハーブを振っても美味しいし、レーズンを風味付程度に入れても良い。
そんな生活をしているものだから、ワンチャン私はキャロットラペを過信している節がある。キャロットラペ食べてればなんとかなる。し、実際健やかなのでなんとかなっている。数値的なものではないが、スッキリと気分良く過ごせていればそれはもう、ひとつの健康なのだ。と、思いながら今日も持参した。
高い日焼け止めはテクスチャーと香りがいいだけじゃなくて、激務の日々の中でそれでも美しくいたいと願う朝を包み込むみたいに癒してくれるし、フランスのバカンスにお馴染みのキャロットラペは日本で暮らす私がバタバタとタッパーに詰めて出かけていってもちゃんと美味しくて体に優しい。憧れのものたちの真の良さは、そのものたちに接しなければ、つまり大人にならなければわかんなかったことだ。そしてその都度すばらしい。
あぁ、次はどの憧れに触れようか。
キャロットラペ、大好き。