食卓旅行・プレーンヨーグルト編
いつかどこかのインターネットで出会った「食卓旅行」という言葉が本当に好き!
異国や遠い街の料理を楽しむだけでも楽しいのに旅行だなんて夢みたい。食卓、と言うからにはお家でレシピを作って楽しむのもまた然り。
あ〜すごいなぁ。
家にいながら五感は海の向こうに出会える…幸せなことだと思う。もちろんそれはお料理だけにとどまらない。今この時代においては食材のそれぞれや一品の朝食であってもいろんな国に思いを馳せることができるなぁと思う。
例えば、プレーンヨーグルト。
原材料名を見たら北海道産の牛乳を使って作られているという。北海道、めちゃ大好きだ。ひんやりとした空気も豊かな食べ物も信じられないくらい美味しい。ハァ…今年は行きたいなぁ…としみじみ思いながら、500g入りの容器からスプーンに取ってお皿に小分けに盛る。
普段私ははちみつやジャムをたっぷりかけて食べるのだが、先日ふと手元の
アカシア蜂蜜
という表記が気になった。
はて、アカシア。思えば私はアカシアという植物についてピンと来ない。ハチミツの木としてしか接点がないかもしれない、もしかして日本にはない木なのだろうか?
そう思って調べてみた。
そしたらもう、びっくりした!
昼の太陽みたいなふわふわの黄色い花、花、花!アカシアってこんなに可愛い花なのか…。
そして、次に調べるのはこれがどんな場所に育つ木なのかということである。「アカシア はちみつ 国」で検索…したところ、これまた驚いたのだが、黄色くてふわふわのアカシアの花とは違う種類の、白い花を持つハリエンジュという木がハチミツのアカシアらしい(ニセアカシアと言われたりするのだそうだ。ニセ…)。
気を取り直して産地だが、名産地と言われる場所はハンガリーや中国なのだそうだ。ハンガリー。卒業旅行で中欧に行った時に訪れたブダペストは素晴らしい場所だった。
完成された都市のような印象しかなかったが、白い花が咲き誇る場所がどこかにあるのだ。ミツバチが生涯集められる蜂蜜はティースプーン一杯程度だと以前養蜂家さんの番組を見たときに知ったが、名産地と言われるとなるとどれほどの蜜蜂たちと、咲き誇るハリエンジュがあるのだろうか。
その途方もない風景を想像して思わずため息をついてしまった。きっと、さぞ美しいだろう。
ところで最近、ハマっているヨーグルトの食べ方がある。青い香りがするタイプのちょっといいオリーブオイルをくるりとひと回しかけ、そこにハーブ塩を散らして食べるやり方だ。
今までハチミツの甘さを楽しく食べる方法のひとつだったヨーグルトを甘くせず、むしろ塩を振って食べる。そのことを先月の私が知ったらエ?と思うかもしれないが、これが本当に美味しいのだ。ブラータの中身のような、こういう種類のチーズという印象になる。そして、この方法に辿り着いたきっかけも食卓旅行なのだ。
料理の得意な友人が以前「ザジキソース」というギリシャの料理を振る舞ってくれたのだが、これが本当に素晴らしかったのである。水を切ったプレーンヨーグルトに薄い輪切りのきゅうりと刻んだミントやディルをメインにハーブをたっぷり入れ、ニンニクとオリーブオイルと塩胡椒と少しのレモンで味付け。この「さわやかのかたまり」みたいなソースをジューシーなラムの肉団子にかけて食べたのだが、知らないはずの味わいだったのにただただ嬉しい気持ちになった。初めて訪れた場所で海を見た時の気持ちみたいだった。
口の中に吹き抜けるギリシャの風を認めざるを得なかったあの体験が忘れられず、自分でも時々作るようになった。そしてふと「普通に食べるヨーグルトもしょっぱくしたら美味しくなるのでは?」と思って試してみたところ、病みつきになってしまったわけである。そんなわけで今や毎日イタリアのオリーブと熱海のハーブ塩が北海道産のヨーグルトの上で巡り合い、私へと運ばれていく。
食材というものは不思議だ。未知なるものたちがいとも簡単に出会うところでもある。私が食卓を通してどこかに往くのか、或いは貿易と巡り合いの果てに食材たちが私へと還るのか。
これからもテーブル越しに世界を味わう喜びを噛み締めたい。食卓は小さく、世界はものすごく広い。
プレーンヨーグルト、はちみつもオリーブオイルとハーブ塩掛けも、大好き。