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SEOの視点から考える21世紀のサウナブーム | 【なぜサウナブームは起きたのか?】
2020年は空前絶後のサウナブームにより多くのサウナ愛好家が生まれ、日本全国のサウナ施設が賑わった年です。
このサウナブームは「いつ」から起こり、「どのように広がり」「いつまで続くのか」、そして「ポストサウナブームがどうなるのか」はサウナ愛好家のみならず温浴施設の経営者、観光業界、飲食業界、さらにはサウナ施設周辺のお店にとっても重要な議題となります。
ブームをちゃんと分析することで次の一手を考え、カルチャーの発展に貢献することができるからです。
今回私はWebマーケティングにおける手法の一つSEO(検索エンジン最適化)の考え方を用いて「サウナブーム」について考えていきたいと思います。
記事の前半は「サウナブームの歴史」から主要となるキーワードを抽出し、後半は「検索傾向からみるサウナブーム」について述べさせていただきます。
21世紀サウナブームの始まりについて考える
近年におけるサウナブームの始まりはどこか?と問われた時に指標となるのが2011年11月28日タナカカツキ先生による「サ道」の発刊日です。
サウナ界ではサ道以降、サ道以前という言葉があるようにサウナにおける一つの転換期が「サ道」の発売です。
また、サ道と同時期にプロサウナー「濡れ頭巾ちゃん」によるサウナブログ「湯守日記」が2011年より開始しました。(当ブログの最古の記事より推測)
2013年にはタナカカツキ先生による濡れ頭巾ちゃんとのインタビュー記事「いまサウナに行くべき理由」をQonversationsで掲載しております。
現在のサウナブームにおいて最重要ワードである「ととのう」に関して生みの親である濡れ頭巾ちゃんに直接質問をしているという大変貴重な内容となっており、「ととのう」という言葉の原点を垣間見ることができます。
100人いれば100人分のサウナ観というのがあると思うんですね。僕自身は、サウナは単に温浴して汗を流すだけのものではなく、もっと根源的なものだと思っています。それは何かと言うと、「自分に還る」ということなんです。 by.濡れ頭巾ちゃん
Qonversations掲載インタビュー「いまサウナに行くべき理由」より抜粋
2014年3月7日には日本初となるサウナ専門誌「saunner」が小学館SJムックより発刊されました。レビュー内に「前代未聞」という言葉があるように従来のサウナに対するイメージを一新することを目的に作られた本書の功績は大きく、サウナ好きを新たに生み出すきっかけとなったと推測できます。
同年に公益社団法人 日本サウナ・スパ協会により「サウナ・スパ健康アドバイザー」取得制度も開始しました。
多くのサウナー達が資格を取得しSNSのbio欄に記載するというブームメントが起こり、2014年から2015年にかけて有名サウナーや著名人、公式の組織による動きが一層と盛んになりました。
2015年3月7日(サウナの日)にフィンランドヴィレッジにて第1回SAUNA FES JAPANが開催され、年を重ねるごとに規模は拡大していき、2019年には初めて3日間の開催となり、2020年にも9月21日〜23日の3日間にかけて開催されました。
2015年10月15日には日本初のサウナ研究機関として「一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所(略称:サウナ総研)」が発足され、サウナに関する研究も活発化し始めたのが年になります。
2015年からモーニングで連載されていた「マンガ サ道〜マンガで読むサウナ道〜」の1巻が発売された2016年にはサウナブームにおいて最重要なコンテンツが発売されております。
写真家 池田 晶紀氏による写真集「SAUNA」や作曲家 とくさしけんご氏のアルバム「MUSIC FOR SAUNA」の発売のように「サウナを題材とした作品」が発表されました。
更に同年「人、旅をする」をテーマに創刊されたCoyoteにて世界のサウナを題材にした「Coyote No.60 SAUNA for Beginners」が発刊されました。
エストニアの無形文化遺産に登録されたスモークサウナ特集やサウナの本場フィンランドにおけるアーバンサウナやパブリックサウナ特集…と世界のサウナ事情について池田 晶紀氏の美しい写真とともに紹介されています。
フィンランドサウナへの憧れを増加させた1冊であることは疑いようはなく、現在のサウナブームの中でも重要参考書の一つとなっています。
2016年はサウナ業界が最も活発に動いた年で、おそらくサウナブームの始まりは「2016年」と言っても過言ではないかもしれません。
サウナ総研がWebマガジン「SAUNNERS」を開始してオリエンタルラジオの藤森 慎吾氏にインタビューを行い話題を生みました。
2015年の時点で「週4でサウナに行っている」と発言していたオリエンタルラジオの藤森 慎吾氏や「サウナ嫌いだったけど、サウナにハマってしまった」とブログでサウナを紹介したアーティストのヒャダイン氏のように「サウナ好き」を公言する有名人の増加によりサウナブームは爆発しました。
2017年には「サウナブーム」という言葉自体が使われ始め、例えば「サウナ・水風呂・外気浴」で“今年一番ととのう”動画としてヤマハWEBムービー「サウナとトリシティでととのった!」篇がYouTubeで公開された際に「サウナ人気沸騰中」とキャッチコピーがつけられ、サウナブーム到来と様々なメディアで取り上げられています。
※動画は現在非公開
2017年には下北沢でアウトドアサウナイベント「CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA」が完全招待制で開催され、2回目の2019年には1月19日〜3月17日の約2ヶ月間という長期間で開催されました。
2017年11月11日にはととのえ親方"こと松尾 大氏と秋山 大輔氏によって<プロサウナーによるプロサウナーのための専門ブランド「TTNE PRO SAUNNER」>がデビューしました。
更に同年にはフィンランドサウナが数多くの施設に建設されることになり、東京ドームの温泉施設「スパ ラクーア(Spa LaQua)」やサウナと睡眠に特化したサウナ施設「ドシー恵比寿」がオープンするなど大きな動きがありました。
また2017年11月23日には現在のサウナブームにおいて最重要ポータルサイトである<日本最大のサウナ検索サイト「サウナイキタイ」>と<サウナ専門の口コミメディアサイト「サウナタイム」>がリリースされました。
2018年にはサウナ施設にコワーキングスペースや経営者がサウナについて語るイベントが増加し「ビジネス×サウナ」というブームが起こりました。
代表的なのがスカイスパYOKOHAMAのリニューアルで、副業やノマドブームが起きていたこともあり、需要と供給が一致し大きな話題となりました。
「ビジネスパーソンこそサウナに行くべき!」をテーマに多くの記事が登場したのも2018年の特徴です。
サウナ関連の記事に対して「ととのう」はキラーワードのように紹介されており、「瞑想」「マインドフルネス」「トリップ」「トランス」「ディープリラックス」と言ったワードとともに魅力を語る傾向にあり、数多くの著名人の名前とともに「サウナ浴」が新たなカルチャーであるとして締め括られています。
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以上のことから、「サ道」「ととのう」「フィンランドサウナ」という3つのキーワードがサウナブームを起こした引き金となり、結果としてサウナ熱が沸騰し、サウナブームが本格的に起こったのは2016年辺りであると推測することができます。
サウナブームにおける重要なキーワード
①「サ道」
②「ととのう」
③「フィンランドサウナ」
Googleの検索トレンドからサウナブームが起きたタイミングを推測してみる
■キーワード:「サウナ」
Googleの検索エンジンで「サウナ」の検索ボリュームは135,000とひと月に135,000回ほど検索されているため、現在「サウナ」は影響力の高いキーワードとなっています。
※上記にはYahoo等の他検索エンジンの検索ボリュームは含まれておりません。
「サウナ」の検索推移を見てみると、2019年8月から急激に検索され始めていることが分かります。
2019年7月19日から2019年10月4日にかけて放送された「ドラマ サ道」と重なる時期で、検索傾向から読み解くとサ道の影響により「サウナ」に興味関心を抱き、サウナブームに爆発的な火が付いたと推測されます。
また、検索のピークは2020年2月で特に2月16日〜22日にかけてが最も多い傾向にあります。
2019年12月に都内最大級のサウナ施設「かるまる」がオープンし、12月28日にはドラマ サ道の年末SPが放送されています。また、2020年1月14日にBS朝日にて「サウナを愛たい」が特番で放送されていることも影響の一つであると考えれれます。
WOWOW初のサウナ番組となる「サウナーーーズ ~磯村勇斗とサウナを愛する男たち~」の放送がプレスリリースされたのが2020年1月31日で、周辺日に磯村勇斗さんによるインタビュー記事が公開されており、話題になっています。
2019年夏からサウナに興味関心を持つ人が急増し、投稿頻度が増えたことで「サウナ」を目にする機会も増え、2020年2月にピークに達したと推測できます。
サウナに関連するキーワードで「サウナ 効果」の検索傾向も2020年2月にピークを迎えています。
「サウナ 効果」は<サウナに入ることで得られる効果が知りたい>という検索意図を持つキーワードであることが検索結果より推測できます。
サウナが「健康に良いのか否か」というのはこれからサウナを始めたい人にとっては最重要な情報で、サウナブームのおかげで最新の情報が提供できている状態が「安心性」を生み、サウナブームの後押しになったと推測できます。
また、関連キーワードとして、2017年11月23日にリリースされた日本最大のサウナ検索サイト「サウナイキタイ」の検索傾向を調べてみると2019年8月より検索数が増加し、2020年1月にかけて急増していることから、サ道による「サウナへの興味関心」とサウナイキタイによる「サウナ情報の充実」が重なりサウナブームを爆発させたと想定されます。
サウナイキタイの検索傾向は右肩上がりで急増していることから「サウナ施設」に関する情報を知りたいユーザーや「サウナを通じた交流」を求めているユーザー、「自身のサウナ体験の共有」をしたいユーザーが多いと想定されます。
今後のサウナブームにおいてこの検索傾向は重要性が高く、「施設情報」「交流の場所」「体験の共有」をいかにして魅力的に提供するかで更なる発展が見込める可能性があります。
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■キーワード:「サ道」
「サ道」では2016年あたりから検索ボリュームに動きが見られますが、これは「マンガ サ道〜マンガで読むサウナ道〜」の1巻が発売された2016年とかぶります。
2018年辺りから頻繁に検索される傾向となり、ドラマ開始前にボリュームが増加していき、放送開始とともに検索数が増大しています。
ピークは7月〜8月でそれ以降は下降傾向にあります。
今後漫画やドラマに動きがあれば検索は増加すると思われますが、一旦「サ道」自体のブームは落ち着きを見せていると思われます。
■キーワード:「ととのう」
「ととのう」も2020年の2月にピークを迎えていますが、検索が伸びたきっかけは「サ道」です。
2018年の9月から10月にかけて急増しており、同時期に掲載が開始されたヤマハ発動機株式会社の「バイクとサウナとサウナ飯でととのう漫画」やサウナの展望について語り合うイベント「サウナイト」やサウナに関連するコンテンツが多く掲載された時期と重なっています。
2015年〜2017年にかけて一部の愛好家でサウナブームの土台が出来上がり、芸能人を中心にサウナの良さを発信し始めた時期が2018年辺りが多く、そのタイミングで「ととのう」が一般層にも広まり出したタイミングであると想定できます。
また、「ととのう」というキーワード自体は検索自体は落ち着いている傾向にありますが、この先まだまだ重要キーワードとしてハネる可能性もあるため、動向は見逃せません。
■キーワード:「フィンランドサウナ」
※フィンランドサウナの2010年8月に検索数が増加しているのは同年に開催されたサウナ世界選手権での死亡事故が要因であると考えられます。
フィンランドサウナのピークは2019年3月で同時期の行われた「サウナの日(3月7日)」のイベントが大きく関係している可能性が考えられます。
また、サ道の影響を「フィンランドサウナ」自体は大きく受けていないことから、まだ一般層には広く浸透していない可能性も考えられます。
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サウナブームの歴史と検索傾向のトレンドから、2016年にサウナブームが起こり、サウナブームが爆発したのは2019年7月から8月にかけてで、きっかけは「ドラマ サ道」のヒットが影響していること仮説しました。
また、ドラマ サ道以前にもサウナブームを引き起こせる土台がしっかりしていたこともブームを後押しした要因であると考えられます。
「ドラマ サ道」放送後にサウナブームを後押しした要因
・サウナイキタイによる「サウナ情報の充実」
・サウナ関連の書籍が流通しており手に入りやすい
・サウナに関するコンテンツが多く提供されている
・サウナが健康に良いことが医学的に証明されている
・多くの著名人がサウナにハマっていることによる安心感
・サウナに関するイベントが開催されており足を運びやすい
まとめ:なぜブームは起きたのか?を考えることは大切
SEO(検索エンジン最適化)は検索傾向やキーワードのトレンドからマーケティング施策を立案したり、集客の改善を行う施策となりますが、考え方として「検索傾向からユーザーの動向を読み解く」ことが重要です。
例えば「サウナ 効果」が急上昇ワードとしてトレンドに上がっている時、ユーザーは「サウナに興味はあるけど効果はあるのだろうか?」や「サウナに入ることで自分にどんなメリットがあるのだろう」といったことに関心を抱いていると仮説を立てることができます。
その仮説をもとに「サウナに入ることで起きる効果」について専門的な視点と医学的根拠で正しく価値のある情報を提供をすることで、仮説が当たればユーザーを集客することができます。
ユーザーが何を求めているのかを予測するのがSEOの考え方ですが、今回はその手前段階の「なぜ現在のブームは起こったのか」に注力して考察してみました。
ブームが起きたきっかけとして「サ道」や「サウナブログ」の存在があり、そこから有名人のサウナ好き宣言や公式組織の公的な活動、サウナをテーマにしたオシャレでクールなイベント、マインドフルネスやコワーキングスペースといったビジネスパーソンを引きつけるコンテンツの提供といった要素が複雑に絡み合って爆発したと想定されます。
このような出来事は今も起こっていて、それがブームを衰退させるか発展させるかのトリガーとなるのは間違いありません。
冷静にサウナブームを分析して次に求められるものを提供できれば更なる発展が見込めると思います。
2021年のサウナカルチャーはどうなっていくのか…今からとても楽しみです。
続編「SNSマーケティングの視点からサウナを考える」
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