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「アート×サウナ」の可能性について

サウナとアートの融合

2021年3月 - 8月に六本木にてチームラボによるアートとサウナの新しい展覧会「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木Solo Exhibition」が開催されます。

この展覧会は高級な場所でアートを見るのではなく、あなたが最高級な状態になってアートを体験することをキーワードに鑑賞者自身がととのうことでアートと一体化し、世界と再度繋がることを目的とした企画です。

チームラボといえば言わずと知れたデジタルコンテンツによるウルトラテクノロジスト集団で、アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など、様々な分野のスペシャリストによる集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジー、そして自然界の交差点を模索している国際的な学際的集団です。

代表作に《世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う》(2013年作)や《呼応するランプの森 - ワンストローク》(2016年作)などが挙げられ、「実験と革新」をテーマにデジタルと現実の境界線を曖昧にする作品を発表しています。

本企画は脳科学的にも非常に特殊な状態とも言われている「ととのう」という感覚にチームラボの視覚表現によって混ざり合った現実とデジタルの境界線に没入することで普段の感覚では気がつかない体験を得ることができるものです。


「サウナ」に「アート」を掛け合わせ、空間そのものを非現実的に演出した没入方の作品世界で「ととのう」ことで今までにない視点への気付きを得るというコンセプトは画期的で、今までのサウナ体験とは一味違う「哲学」的であり、思考にダイレクトで刺激を与える「サウナ」というアート作品を味わえると発表している説明文から推測できます。

「サウナ」によって研ぎ澄まされる感覚に芸術(文芸、美術、音楽、演劇・映画など)との相性がよく、新たな気付きを得れるのではないか?と考えたことがありますが、実際にこのような形でコンセプトと作品のイメージ写真を見るとチームラボの構築能力の高さにただただ脱帽しました。

特に私が感心したのは「アート」と「サウナ」の文脈を室町時代中期の文化である「淋汗茶の湯」と結びつけたところで、突飛とした思い付きのアイデアではなく、アートの文脈に則りサウナを「アートへと昇華」させたことです。

室町時代当時の風呂は蒸し風呂を指し、今のサウナに近いもので、室町時代の文化人は「サウナを楽しんだ後に芸術を嗜んだ」という事実を現代に落とし込む辺り流石「芸術集団(アートコレクティブ)」なだけあって素晴らしいです。

「映える」映像美や演出された非現実性に目が行きがちでスペクタル性だけを評価しがちなチームラボですが、アートとして表現することの価値やアートのルールに則ったコンセプトを提示する深い思考性も持ち合わせており、現代アートをサウナで体験し、思考を張り巡らせ、中世日本の文化を追体験できる本企画は「サウナ」の可能性を広げる展示会であると思います。


サウナを軸にしたクリエイティブの幅広さと深さ

サウナ体験は「サウナ⇨水風呂⇨外気浴」という一連のプロセスによって得られる交感神経と副交感神経の刺激や、血行をよくし脳へ血液を送ることなどによって引き起こされる感覚の覚醒やトリップ感、ディープリラックスな状態を指します。

チームラボのようにサウナによって自身の体が「認識すること」に対して敏感な状態の時に没入型の作品に鑑賞者が触れることで現実とデジタルの境目を曖昧にし、世界と自身を繋げるというパフォーマンスは「ととのう」を利用した芸術体験で、五感を刺激し、アートと一体になる感覚を味わうことによって新たな視点で世界を見つめ、新しい発見を見つけるというものです。

これはチームラボのような没入型の作品でなくとも同じような体験ができる可能性があり、「アート」と「サウナ」の組み合わせには様々な表現方法が眠っていると思われます。

芸術とは表現者あるいは表現物と、鑑賞者が相互に作用し合うことなどで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動を指し、表現範囲は多岐に渡ります。


チームラボと同じくクリエイティブカンパニーとして様々な作品を生み出すアートコレクティブである「ネイキッド」も「テントサウナ×プロジェクトマッピング」による非日常型のアートサウナ体験を提供しました。

心拍数によって変化する映像演出と、アロマの香りと音楽によって五感で非日常的なサウナ体験を楽しむといったものです。

自身の状態によって環境が変化するという視覚的変化は脳に刺激を与え、今までとは違う体験を得ることができる企画でした。


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サウナ×アートはファッションとも共鳴し、サウナをテーマに様々なファッションアイテムがデザインされました。

SEVEN STAR SAUNNER CLUB

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厳密には応用芸術の領域かもしれませんが、「サウナ」に対して理想の状態に近づく為のファッションはサウナ体験を加速させる要因としてサウナーから指示されており、高いデザイン性によりお洒落さもあり、機能美とデザインが見事に融合を果たしています。


サウナと芸能

芸能:芸術の諸ジャンルのうち人間をもって表現する技法のこと

サウナにおける芸能で最も身近にして現在進行形で発展を遂げているものとして「アウフグース」が挙げられます。

アウフグースはロウリュによって発生した蒸気をタオルを用いて風を送るもので、タオル捌きによって風を的確に送るだけでなく、視覚表現による演出や使用するアロマ水の香りや口上によって場を盛り上げる能力が必要となる芸能です。

五感を刺激する芸能のため今後さらに発展する可能性があるサウナ芸術といっても過言ではないでしょう。


また、サウナにおける芸能要素としてウィスキングが挙げられます。

ウィスキングはヴィヒタ(白樺などの枝葉の束)を使って身体を叩く行為のことで、マッサージや血流促進、殺菌などの効果が期待できると言われています。

日本ではまだ馴染みの無い文化ですがサウナの本場であるフィンランドではロウリュに次いで重要な要素と上げており、リトアニアやロシアでも盛んな文化です。

日本でもウィスキングを目的としたイベントが開催されたり、ウィスキングマスターとして活動している方もおり、アウフグースと同じく盛り上がりを見せ始めています。

ウィスキングもまた芸能としての要素があり、ウィスキングマスターによって個性があり、得られる効果だけでなく、エンターテインメントとしての要素も強い一面もあり、サウナ芸術と言っても過言では無いでしょう。


もちろん、これらは「芸術表現」として行われたものでは無い為「本質」としては異なるかもしれませんが、職人技であることや、五感に様々な作用を与えること、芸能として評価できる表現力の高さからも「サウナにおける芸術点」として例えても違和感はありません。

また、応用芸術の視点で見れば「サウナ室」の空間デザインや機能は総合芸術にも似た多くの要素を詰め込むこともできます。

その為「総合演出の質が高く、芸術性の高い表現を実現しているサウナ室」というのもあり得る概念です。


まとめ:サウナの可能性は底知れない

2000年の歴史を持つサウナはカルチャーとしての土台がしっかりしている特徴がありますが、土台がしっかりしている為、様々な要素と掛け合わせることでまだ見ぬ一面や、体験を得ることもできます。

また、新たな視点に気づくという体験は非現実的なサウナ体験という枠組みに留まらず、ビジネスや日々の生活の中、学校生活、創作活動などにおいて新しいアイデアへたどり着くきっかけになる可能性があり、サウナを利用することの習慣化やカルチャーを根付かせる要素として「アート×サウナ」は価値を発揮する可能性もあります。

また、直接アートと結びつけなくとも温浴施設内にギャラリーを設置したり、アロマや工芸品などの体験の場を設置したり、サウナ施設のそばに店を構え、サウナ浴後の方に商品に触れてもらったりと関連付けさせることも可能です。

奥深いサウナの世界はサウナ以外の世界にも視野を広げ、自身の見聞を深くしてくれることでしょう。



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S.Uto
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