見出し画像

#大学入試 #面接対策|学校という組織での面接対策とは?【高校教員応援マガジン】

今回は、私自身の様々な面接に係る体験、特によくある失敗事例を踏まえ、「大学入試の面接対策」についてアドバイスいたします。

面接対策は重要です。生徒の進路希望を実現する以上の大切な何かがあると思います。

私は、校長として面接のロールプレイ研修を行ったり、(よくある校長の「最終」面接ではなく)若手教員と一緒に面接練習に参加し、面接の本質を探究する経営を進めたりもしました。

また、これまで、「管理職試験」や「教員採用試験の面接」について相談を受けてきました。近年は、大学の年内入試(総合型・学校推薦型選抜)が増加しているからか、「学校で行う面接対策」の相談も増えています。


〈関連記事〉



これからお話しすることは、全て基本的なことであり、シンプルです。
しかし、皆さん、意外とできていないこともあるのではないでしょうか。


「面接対策をする」…ことは大切ですが

面接の重要性が上がっているからと、私たちはついつい慌てて、「難しいこと」「凄いこと」をやろうとしてしまいます。

しかしながら、シンプルに基本をしっかりとやる。
組織全体でやる。

その積み重ねこそが成果に結びつきます。

1.「面接対策」のプランニング/5W1Hを整える

はじめに計画ありき。
当たり前のことです。
しかし、本当に有効な計画ができているでしょうか。
よくあるのは「詳細は後で」です。

まずは大枠を示し、受験が近づいたら具体を詰めていく。
それが結果的にギリギリになり、まるで行き当たりばったりで、生徒や先生に無理な負担がかかることが多くあります。

最初の段階で詳細な計画を立てる。

状況の変化や、気がついていなかった問題があれば、よりよい計画に作り直す。その方がよいと思います。

計画は5W1Hで考えます。


① Why
「面接対策」が目指しているのは何か。
そもそも、本校の進路指導の目的は何か。
「生徒の進路実現のため」と言っても、「進路」に対する考え方は先生によって異なっています。

他の指導もそうですが、進路指導「観」には、その先生の経験や価値観が強く反映されています。
したがって、自明のこととせず、「何のため」の面接対策なのか、擦り合わせが必要です。
入試に係る変化の肯定的な面を捉えることができず、「大学はあくまで一般型で、つまり学力検査で入るところ」という固定観念にこだわっている先生が少なくないように思います。
そうすると指導にも力が入りません。

「指定校推薦」は学校に与えられた枠であり、どうせ落ちない。
「総合型選抜」は、自己推薦=自己責任だから、本人が頑張ればよい。
そんな考えを耳にしたことがあります。
「面接対策」の目的を組織決定することは極めて重要です。


② What
事前指導はどのように行うか。
どれぐらいの時間、どんなメニューで面接練習をするか。
生徒の志望校に対応した内容になっているか。


③ Who
誰が担当するか。
全体の役割分担は適切か。
教員の教科と生徒の志望学部の関係を、どの程度考慮するか。
管理職の出番はどの程度か。
複数の面接教員の引継ぎをどう行うか。


④ When
いつから、どれぐらいのスパンで、何回練習するか。
試験日程を考慮して、生徒ごとに偏りがないよう調整しましょう。


⑤ Where
実施スケジュールがしっかりと共有されていなければ、使用教室のバッティングも起こります。
面接練習のスケジュールを共有できるシステムを作りましょう。
できる限り、面接練習に相応しい教室を使いましょう。

Howに関しては、次項でじっくり述べます!


面接の準備や改善には一定の時間を要し、なかなか指導側が思うようには進みません。
余裕を持ち、想定外の事態に柔軟に対応できる計画を整えることが大切です。

 

2.面接練習「How」を組織的に探究する

面接計画をつくり、あとは各々の担当者にお任せ……となってはいけません。
「面接練習”ぐらい”誰でもできるはずだ」と安易に考えてはなりません。

私は、ベテラン教員が多い学校にも、初任者が多い学校にも管理職として勤めましたが、いずれのケースでも面接練習に向けた研修は必要だと思っています。

面接練習にも、面接における生徒の回答にも、唯一絶対の正解はありません
結果的に、面接練習で何を問うのか、どのように問うのか、どう評価するのか、どの点の改善を促すかは、教員によって異なります。


生徒からよくある質問は
「複数の先生から、異なる(時には矛盾する)アドバイスをもらったのですが、どうすればよいですか?」です。

こちらとしては、どういうアドバイスかをよく聞き、自分で比較して考えさせたいので、「最後は、自分自身で考えて、どうするかを決めなさい」と言うことになります。

しかし、教員側でもこうした生徒の戸惑いをなくすために、改善できる点があるはずです。

面接の研修を行い、実際に生徒にどのような指導をするのがよいのか、組織的に探究することをお勧めします。

具体的には、次の点を組織全体で確認していきます。


①  身だしなみ、入室・退室や礼、姿勢や態度、声の出し方など
ノックの回数や礼の際の身体の角度に係る指示が異なっていて、生徒が困ることなどありました。

② 一般的な質問項目と進学・就職先に応じた特殊な質問項目
進路先に係るデータを踏まえずに質問している先生がいました。

③ 面接練習の準備、記録の取り方、リフレクションに係る指導事項
練習時に生徒にメモを取るよう指導しない先生がいました。
引継ぎをしない先生もいました。 

そして、最も大事なことは
④ 生徒の回答をどう評価するかです。


私の経験から申しますと、皆さん「印象」「雰囲気」を重視しすぎではないかと思います。

もちろん、それも大切です。
明るく元気な方がよい。
真面目で誠実に見える方がよい。

しかし、練習では発言内容をブラッシュアップするべきです。競争する相手も、礼儀正しく、明るくハキハキと答えていれば、回答内容の勝負になるからです。そのためには、面接者が適切に評価し、フィードバックを行なって生徒に再考を促す必要があります。

評価の観点は次のとおりです。
この観点から、再質問することが鍵を握ります。

  • 問いが求めていることに、本当に応じているか。

  • 目的や理由、根拠が明確か。

  • 意欲や感情が伝わってくるか。

  • 抽象的ではなく、具体的か。


これらの条件が不十分であれば、再質問して生徒が再考できるようにアシストしましょう。

 

3.「面接」と日常の教育活動

面接には特別な対策が必要です。
準備、練習しなければなりません。
付け焼き刃で面接に臨もうとしてもうまくはいきません。

鋭い面接官は会った瞬間に「どんな人かわかる」と言います。
回答内容が、長い時間をかけ、努力を継続し形成されていったものなのか。
仮に受験決定からの期間が短かったとしても、それまでの高校生活が充実したものだったかが問われます。

つまり、生徒だけではなく、指導してきた学校の教育活動も問われます。

学校生活でのどんな部分が面接に影響してくるのでしょうか。

第一に、『日常の先生と生徒とのコミュニケーション』です。
言葉のキャッチボールをし、問答し、互いの理解が深まっていく。
生徒の視野や考え方を広げるような会話をする。
心理的安全性がある中で、気軽にやりとりができていることが大切です。

とは言っても、「友だち」のような関係を否定はしませんが、私は「親しき中にも礼儀あり」で、きちんとした言葉遣いが必要だと思います。
日頃から敬語を使い慣れていることで面接時も適切な言葉遣いができるでしょう。

また、皆さんは個人面談を年何回、行なっているでしょうか。
学習や進路に係る面談の中で、先に述べた質の高い問答ができていれば、大学入試の場面でも面接の手助けになるでしょう。


第二に、『日常の授業』です。
私は、授業は「教材」を介した先生と生徒、生徒同士のコミュニケーションではないかと思います。
一方的に知識を伝達する場ではありません。
もちろん、教えるべきことは教えます。説明すべきことは説明します。
その上で、生徒がどう考え、どう思うのかが大切です。
知識を覚えさせようとする、与えられた知識をひたすら覚えこもうとするのは学びではありません。
覚えることは学びの一部に過ぎません。

「学びの主語は生徒」です。
通常一日6コマもある授業の中でこそ、批判的・論理的思考力やメタ認知能力を高めることができます。
その力が面接でも生かされます。
アウトプットのアクティビティを授業に組み込みましょう。


〈関連記事〉




第三に、『総合的な探究の時間』です。
各校様々な内容と形態で進めていると思いますが、探究の基本的な「型」があります。
それは「問い→仮説→検証」です。

もちろん、単なる流れではありません。
問いの設定、仮説の考案、検証の方法の適切さが問われます。

検証してわかったことを、次の探究にどうつなげてアップデートするかも問われます。
この探究が形ばかりではなく質の高いものであれば、生徒の見方・考え方は面接に十分対応できるものになるでしょう。


4.終わりに

面接の問答で問われる力は、大学入試でのみ求められるものではなく、日常の教育活動やコミュニケーションと地続きです。

自分が発した答えに対して、次の二つの質問に明確に答えられるかどうかは、授業内外、様々な場面で大切なことだと思います。


  • それは何か。正確に、具体的に何か。誰が聞いてもわかるように伝えられるか。(※単に「よく言われる模範解答」になってはいないか)

  • それはなぜか。理由と結論のつながりを、誰が聞いても説得力があるように伝えられるか。(※思い込みになってはいないか)


問いかけること、そして回答に対する評価とフィードバックは生徒を成長させる重要なものであり、教員自身の力量が問われます。
進路目標達成のために「面接対策」を行いますが、最上位目標は生徒の成長です。
そのことを踏まえ、組織的に面接=面談に取り組むことが大切です。



〈参考書〉


〈関連記事〉
学校組織に関して、こんな記事も。



高校教員応援マガジンでは、高校教員の皆さまからのお悩み相談も受付中!
ベテラン教員や代ゼミ研究員が回答いたします。本記事のコメント欄にてお気軽にご相談ください♪(お悩み回答はランダムです)

#マネジメント #先生 #教師 #教員 #高校教師 #面接対策 #面接 #管理職 #学校組織 #代ゼミ教育総研 #代ゼミ #教育総研note #面接対策の5W1H #教育  #仕事での気づき