子どものスマホ依存【学校教育だからこそできる】時間マネジメントのレッスン
子どものスマホ依存【学校教育だからこそできる】時間マネジメントのレッスン
小中学生のスマホ使用の調査結果が記事になりました。
▼小中学生の21.1%が「眠る直前までスマホを使用」、中にはスマホを触りながら寝落ちする人も。睡眠不足を感じる小中学生は57.3%(ニフティ・キッズ)
iPhoneが日本で販売されたのは、2008年です。16年経ち、子どもたちのスマホ使用はごく普通のことになりました。
▶令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)(こども家庭庁)
10歳でスマホの専用と共用の割合が逆転し、子ども専用の割合が65%を超えています。高校生は98%以上です。
端末も含めた利用時間は、およそ、学習に1時間、趣味・娯楽に3時間、コミュニケーションに1時間となっています。
この記事では、就寝の直前までスマホを使用していること、睡眠不足になっていること、日中の心身の状況にも影響を与えていることを指摘しています。
💡研究員はこう考える
▷必需品となったスマホ
もはや、子どもの調査結果を見ても、大人は驚かないかもしれません。子どもたちと大人に大差がないからです。
街に出ると(札幌です)、「歩きスマホ」はごく日常の光景です。人混みの中でも、ハイレベルの目配りにより、ほぼぶつかる人はいません。
地下鉄の中では、スマホ使用が普通です。紙の本での読書は圧倒的に少数派です。ゲーム、動画、SNS、音楽、、、老若男女、指を素早く動かし、思う存分、スマホライフを享受しています。
スマホは仕事中も使います。わからないことがあれば、即座に調べることができます。思いついたアイディアをメモすることも、資料を撮影して記録することもできます。
一昔前は、会議中にスマホを出している人がいると怪訝そうに見る人がいました。むしろ、怒っていたかもしれません。今は、誰も気にしないし、注意もしません。
その場に関係のない連絡をしていたとしても、支障がなければ、咎めることもありません。
スマホが、場を緩くし、マルチタスクを可能にしました。
スマホが生活の一部、欠かせない必需品になっています。
それはテクノロジーの進展により、ラジオ、テレビが普及していったことと同じです。車が欠かせなくなってモータリゼーションが進み、人々の生活が激変したことと同じです。
▷スマホの「無限性」と「依存性」
しかし、大きな違いは、「無限性」と「依存性」だと思います。
「オリコン年間BOOKランキング 2021」で第一位となった本と考えてみましょう。
▼アンデシュ・ハンセン『スマホ脳』(新潮新書)2020年
教育大国スウェーデンの精神科医・作家のハンセンは、スマホが鬱、睡眠障害、学力低下、依存症をもたらしていると警鐘をならします。
私は、依存性を強めているのは、対象の無限性とアクセスの容易さではないかと思います。
テレビが勉強を妨げると言っても、それは有限でした。放映時間もチャンネルも有限です。しかし、今は視聴できる番組は無限にあると言っても過言ではありません。
マンガにはまっても、それは有限でした。購買力には限度があり、せいぜい、友人と貸し合う程度でした。また、読みたくても、発売日まで待たなければなりませんでした。今はサブスクもあります。無限です。
音楽が好きになっても、それは有限でした。自分で買うか、友人から借りるか。レンタルレコード屋が登場し、劇的に変わりましたが、今は無限です。人生で音楽を聴ける時間に対して、アクセス可能な曲の数は圧倒的に凌駕しており、無限です。
人と関係を結ぶとき、その相手は有限でした。今はどうでしょう。見たことも会ったこともない人から数多くの「いいね」をもらうことができます。他者との関係は、無限に広がります。そして、新しいタイプの人間関係ができました。もし、何千もの人とつながったとして、「時間をかけて友情を育む」という関係ではありません。しかし、無限ゆえの楽しさがあります。
▷無限に可能性があるのは素敵なことである、のですが…
無限の可能性。それは素敵なことです。一回一回お金を払わずとも、さまざまな音楽と出会うことができます。物理的な距離を超え、知り合いを増やすことができます。
しかし、私たちは有限です。命にも、時間にも限りがあります。有限なのに、無限なるものが可能である。
様々な無限をコントロールできるかどうかという問題が発生しています。
無限の波に流され、飲み込まれそうになる。主体性、能動性が失われる危険があるのではないでしょうか。
無限の中から選択する場面が多く、決定する力が求められます。決めることは緊張を伴います。
無限とどうつきあうか。
無限をしたたかに、しなやかにマネジメントすること。
無限の管理が現代人の課題となったのです。
▷時間マネジメントのレッスン
ここで、学校教育の出番です。
これは、スマホだけではなく、時間管理の問題です。
学校で、生徒が決められた時間どおりに、チャイムや先生の指示に従って勉強していても、マネジメントの力は身につきません。
チャイムはやめましょう。
教室や廊下に時計があれば、それを見て動けばよい。
授業の中でも、学びの時間配分を意識させましょう。
読むのにどれぐらい時間がかかるのか。
教科書2ページ分のテキストのわからない箇所を調べる。10個の英語の重要フレーズを覚える。他者との協働作業。プレゼン。40分の学びを80字で要約する。
普通はその時間を先生が決めています。開始と終了を支配しています。
支配ではなく、指導してはいかがでしょうか。
全ての学びのアクションについて、時間のマネジメントを生徒に試行錯誤させるのです。
先生は伴走しながら、コーチします。
「なぜ、30分かかったのか。10分で終わらす工夫はないか」
「20分でできたなら、次は15分を目指そう」
「40分でやったことを、50分かけて、より質を高めることができないか」「所要時間の観点から、改善プランを話し合ってごらん」
などなど。
何よりも、1日全体の時間のマネジメントのエクササイズが大切です。
▷手帳の効能 有限な時間のコントロール
私がある高校の校長のとき、学年主任から「手帳を購入させたい」という提案がありました。
どんな力を育成したいのか。どうすれば、本当に毎日使うか。先生はどうやって関わるか。そんな問いかけをしながら、実施内容を詰めていき、導入しました。
最初は、忘れてくる生徒がいます。ただ机の上に置いている、指示されたことしか書かない、そんな生徒もいます。
しかし、生徒の現状を見ながら、「そんなときは、こういう視点から書けばよい」「その使い方は改善につながるからとてもよい」と具体的に、丁寧に、そして粘り強く指導していくうちに、変わっていきました。
朝のSHRでは、全員が手帳を開いています。常に持ち歩き、授業の前後でも、面談でも、自分で必要だと思ったことを書き留めます。
自分で考え判断し、アウトプットする習慣がついていきました。
そして、大切なことは、時間の記録です。
授業時間以外の時間をどう使っているのか。
通学、食事、入浴、睡眠の時間がどうなっているか。
自由裁量の時間をどう使っているのか。
記録を取り、改善を図ります。
自分の生活のアップデートをしていくのです。
無限なるものに対しひたすら受動的な姿勢をとることに甘んじるのではなく、有限な時間をコントロールする訓練を続ける。
枠を意識し、その中で自分の自由をフルに活用する習慣を身につける。
これは学校生活でしかできないことです。
▷無限なるものに負けないために
無限の可能性にはロマンを感じます。
それはまるで宇宙のようです。
しかし、意志を捨て、身を委ねることは、他者の意のままに生きることになります。
人生の主人公は自分です。無限なるものに負けてはいけません。
生き生きと挑戦し、充実した人生を送っている人は、時間管理に卓越しています。
▼大谷翔平が社食で牛丼を食べた夜。「時間の使い方」こそ一番の才能。(Number Web 2018.11.26)
学校で、これまでの学びを工夫し、時間マネジメントの練習をすることで、自分らしく生きる力を身につけることができます。
いやあ、それにしても、学校教育にしかできないことがあり、先生はやりがいのある仕事です。
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