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【紹介記事】国立大学法人化20年/高等学校改革推進事業/日本の若者の意識調査

日々報じられる様々な媒体の教育関連情報から、今後教育業界への影響が高いと思われる内容について、それぞれの私見を述べます。

教育・学校・入試について関心がある方々にとって、考えるヒントとなりましたら幸いです。


🔽国立大学法人化 20 年 関連記事 3本

▼国立大学法人化 20年 反省踏まえ研究力強化を(毎日・4/7)

▼削ることができる時間は…「研究」交付金減で忙殺される国立大
(朝日新聞・4/11 *会員限定記事)

【記事概要】 
国立大学が法人化されて 4 月で 20 年となったため、新聞各紙を中心に取り上げられました。

毎日新聞、朝日新聞でも、運営交付金の減額や人材難、国際競争力の低迷など様々な課題が報じられています。

参考までに、20 余年前、文科省は法人化にあたりその理由を次のとおり述べています。

文部科学省【国立法人化をめぐる10の疑問にお答えします】

Q&Aでは、財政支出の削減が目的ではなく、必要な措置を行うことや採算の取れないような基礎研究の重要性なども語られています。

また、法人化そのものが目的ではなく、「国立大学こそが社会変革の原動力」であり「地方創生に貢献する役割」を担っているとして、国立大学改革方針(令和元年 6 月 18 日)が示されています。

しかし、残念ながら、学長をはじめ、大学現場の声を踏まえたメディアの論調は厳しいものでした。

何よりも、運営費交付金の減額に対する激しい批判があります。
法人化以降、ほぼ毎年度減額され、人件費、研究費にダメージを与えています。

「集中と選択」の方針により、研究資金を「競争的資金」から得ることになり、そのための書類作成、事務手続きに忙殺されていると指摘し、研究時間は、2002 年度から 2018 年度までで、10.6 ポイント減じています。

法人化以降の20年を痛烈に批判するのは、名古屋大学特別教授・野依良治氏です。

▼<再考 学び舎>「失われた20年」取り戻すには 学長が決める 改革の肝  名古屋大学特別教授・野依良治氏(日本経済新聞・4/10 *会員限定記事)

 「大学は失われた 20 年」「教授たちは教育や研究に専念すべき」「十数の大学が公的研究資金の 90 %程度を獲得」「教育資金配分の公平性を保つ工夫がいる」と述べています。

他方、反論もあります。

日本総研『大学マネジメント JUL 2018』「特集 高等教育に関する『俗論』を排す」では、河村小百合氏が「国立大学の研究力低下は運営費交付金の減額によるものか」において、組織や人事のマネジメント、客観的な評価を活用する体制が不十分ではないかと指摘しています。

「国立大学の研究力低下は運営費交付金の減額によるものか」河村百合

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【研究員はこう考える】

もちろん、これらは白黒つける問題ではありません。
何事にも成果と課題があります。

国立大学に限りませんが、高等教育における研究と人材育成は国の最重要テーマの一つです。 日本の研究力、技術力の低下は産業、経済の発展に深刻な影響を与えます。

また、運営費交付金に限らず、研究者の年齢や男女のバランス、博士号取得者の少なさ、大学院の在り方など様々な課題が指摘されています。

20 年を振り返り、データと意見を整理し、関係者が本音と本気で議論し、
ビジョンと戦略を共有し、具体的な方策を進める必要があります。

野依良治教授は「国の覚悟」が必要だと言っていますが、
それは「私たちの覚悟」でもあります。

 


🔽令和6年度 「各学校・課程・学科の垣根を超える高等学校改革推進事業(学びの機会の充実ネットワークの構築)」の採択機関について(文部科学省・4/17)

【記事(参考記事・資料含)概要】
高等学校の現状と今後の課題の一つとして、離島・中山間地域などの小規模校の教育条件改善があります。

「中間まとめ」において、高等学校の全日制・定時制課程における不登校生徒の学習機会の確保のための遠隔授業及び通信教育の活用や、小規模な高等学校の教育条件の改善に向けた遠隔授業の活用の推進等が提言されました。

少子化を要因とした高校の小規模校化や統廃合が進んでいますが、都市部から離れた地方の子どもたちに学びの機会を保証する手段として、遠隔授業に大きな期待が寄せられています。

学校教育法施行規則の一部を改正する省令も、2023 年(令和5年)12 月 28日に公布されるなど、国は遠隔授業の推進に力を入れています。

2 月 13 日の通知では「多様な科目開設や習熟度別指導等を行い、生徒の多様な進路実現に向けた教育」のため、遠隔授業の要件が緩和されています。

2024 年(令和 6 年)2 月 20 日、令和 6 年度「各学校・課程・学科の垣根を越える高等学校改革推進事業(学びの機会の充実ネットワークの構築)」の公募が開始され、4 月 17 日に採択機関が公表されました。
岩手、静岡、島根、高知、長崎、熊本、宮崎県の各教育委員会です。

<参考記事・資料>
令和 6 年度「各学校・課程・学科の垣根を超える高等学校改革推進事業(学びの機会の充実ネットワークの構築)」の公募について(2024 年(令和 6 年)2/20 文部科学省)

第 11 回高等学校教育の在り方ワーキンググループ資料1「高等学校教育をめぐる最近の動向」(2024 年(令和 6 年)4/9 文部科学省)

▼離島・専門高校生向けに遠隔授業拠点 多様な教科提供へ(日本経済新聞・4/9 *会員限定記事)

「高等学校等における多様な学習ニーズに対応した柔軟で質の高い学びの実現について」(2024 年(令和 6 年)2/13 文部科学省)

「高等学校教育の在り方ワーキンググループ中間まとめ」( 2023年(令和 5年)8/31 文部科学省)

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 【研究員はこう考える】
文科省は配信拠点の機材の整備や配信校と受信校の連絡調整を行う職員の配置などのため財政支援を行います。
2021 年時点で、すでに公立高校のない市区町村は全国の 28 %を占めます。小規模校には、多様な科目の設置や習熟度別授業実施のための教員は不足しており、その結果、生徒の学びの個別のニーズや進路希望に十分対応できません。

双方向的で、教員と生徒がオンラインでやりとりできる遠隔授業が進むことで、学習環境を改善することが期待されます。

先行して、北海道と高知県が配信センターを設置しています。

北海道高等学校遠隔授業配信センター 

高知県遠隔授業配信センター

ある学校にいる教員が、時間のやりくりをして遠く離れた小規模校に配信するのではなく、配信のみ行う教員が集まっています。

北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)は開設 4 年目を迎えました。文部科学省「地域社会に根ざした高等学校の学校間連携・協働ネットワーク構築事業(COREハイスクール・ネットワーク構想)」の北海道における中核事業の一つです。

現在 31 校、8 教科 32 科目、週当たり 235 時間配信し、受講生徒数はのべ779 名にも上り、大学入試に必要な科目や選択科目を配信し、生徒の興味・関心や進路に応じた学びを支えています。

また、長期休業中には大学受験に向けた講習を行い、2023 年度は夏期講習10 日間( 20 講座)、冬期講習 8 日間( 18 講座)合わせて、のべ約 900 名が受講しました。

看護・医療系セミナーの実施、公務員の仕事の説明などキャリア教育の面でのサポートにも取り組んでいます。
メタバース空間をつくり、個別の質問や相談に応じたり、複数の小規模校をつなげる試みも行っています。

少子化による統廃合も限界にきていると言われています。

私は、遠隔授業の拡充、推進が、これからの学校教育、日本の未来にとって重要な意味を持つと考えます。


🔽日本の若者、自国の将来「良くなる」15% 米英中など6カ国中最低(毎日新聞・4/9)

<参考記事>
▼日本財団 18 歳意識調査結果 第62回テーマ「国や社会に対する意識(6カ国調査)」(4/3)

【記事概要】
調査は今年の 2~3 月に実施され、日本、米国、英国、韓国、インドの無作為に抽出された 17〜19 歳の男女各 1,000 人が回答。

「自分の国の将来についてどう思うか」との質問では、「良くなる」と答えた割合は、中国が 85 %、インドが約 80 %、韓国が約 40 %、米国と英国が25 %前後だったのに対し、日本は 15.3 %。「どうなるか分からない」が31.5 %で最も多く、「悪くなる」29.6 %、「変わらない」23.6 %と続きます。

「自国は国際社会でリーダーシップを発揮できる」も6カ国中最下位。

「自分の行動で国や社会を変えられると思う」は 46 %で最下位。

自分自身について「夢を持っている」は 60 %、「自分には人に誇れる個性がある」は 54 %で、いずれも最下位であり、最下位のオンパレードです。

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【研究員はこう考える】
私には、調査結果から単純に結論を出すことへのためらいがあります。
各国それぞれの歴史や文化、社会制度を背景とした価値観、判断尺度の相違があるからです。

アンケートの捉え方や問答というものの認識にも違いがあると思います。
したがって、% の数字や順位に基づき、安易に意見を述べることに抵抗があります。むしろ、この結果について、若者自身が大人も交えて対話的に探究することが大事ではないでしょうか。

数字をどう捉えるか。数字をどうしたいか。そのためにどうするべきか。

また、自己肯定感はよく使う言葉ですが、肯定と否定の二項対立で考えるやり方は適切でしょうか。肯定できる面と否定する面の両方に目を向けた方がよいと思います。

そして、やはり、肯定する点、否定する点について、他者の考えを聴きながら掘り下げていくのです。

アンケートの問いは「中立」に見えて、そうではありません。
ものの見方・考え方のあるスタイルを反映しているのです。

経年比較のためには問いを変えない方が都合がよいのでしょうが、これだけ変化の激しい時代なのですから、問い自体を変え、より生産的な議論や創造的な探究ができるようにしてはどうでしょうか。 


よろしければ vol.02-2 もご覧ください📒




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