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沈黙はペテン師 1

「ごめんくださァい」
あぁまたうるせぇババアが家に来た
「これね、余ったんだけどね、肉じゃが、
あなた、ろくな物食べてないでしょ?そんなボーッとした顔で見んと、早う受けとんな!」
この人は近所の佐々木信子さん、うるせぇババアだが何かと助かることがある。
「あんた最近、少し顔が明るくなったね」
そう言われ、少し嬉しかった。


「山本さ〜ん! この写真って、、」
そう言って後輩の伊藤がある写真集を持ってきた。
私は3年ほど前から自分で独自の事業を立てて絵やら服やら色んなことをやっている。
伊藤は大学3年の時に新入生として入ってきて何故か私にずっと着いてくるギャルだ。
伊藤が持ってきた写真集は
去年私が引っ越してきた。小さな村の景色の写真集だった。そこに、佐々木さんの姿があったのだ。伊藤はよく、家に遊びに来るためこの佐々木さんのことも知っている。
「なんか、変なんですよねぇ」
そう言われよく見ると背筋がゾッとした。

1か月前、、、

「ニュース速報です」
「一家惨殺事件の犯人が捕まったようです!名前は畠山 裕二!畠山は東京都内の飲食店で食事をしている最中に、私がやりました!と
店員に自白したそうです!」
物騒な事件の犯人が捕まってよかったと思い
私はラーメンをすすりながらテレビを見上げると、畠山の顔に何故か見覚えがある気がしました、気のせいかと、ラーメンを食べ終え
いつものように器を洗わずにそのまま流しに置きました。
プルルルルル
「もしもし!お前!あれみたか?あの犯人
畠山なわけないよな?!」
私はそう言われ一瞬頭の中が真っ白になりました。
「あれ?覚えてないの?畠山だよ!中学の時
一緒によくつるんでたじゃないか」
私は驚きました。見覚えがあったなんてものじゃなかった。畠山は小学生の時の同級生でした。何故、忘れていたのか、
テレビ画面に映っていたのは少し大人の顔になったものの、その畠山で間違いありません。
「絶対に違うよな?犯人、あいつじゃないよな?」電話の向こうの意見に私は同意しました。

ある日、公園でかくれんぼをしている時のことでした。一人の子が叫びました。
「うおおおああ!」
「おい!見ろよこれ」
そこには鳩の死骸がありました。
「BB弾で撃たれてるぜ。これ、、」
この頃、私の周りではエアガンが流行り
友人の間で打ち合いっ子するのが遊びのひとつでした。
「誰かが撃ったってことだよな?」
「これは!」
「名探偵!山本悠斗の出番ですな!」
と、犯人探しが始まりました。
まずは学校で聞きこみ調査です。
「最近、僕ら以外でエアガンを持っている人って見かけなかった?」
「あぁ、たしかねぇ」
「畠山くんと施設の子達がエアガン持って遊んでるところ見たわよ!」
これはこれは、初っ端から有力な情報です。
さっそく畠山くんに聞いてみることにしました。
「畠山あああ!!!」
「お前さ、鳥ころした?」
まだ、幼稚だった私は、率直に聞いてしまいました。
「ん?なんのこと?」
「いやさ、公園で、、、、ってのがあってさ」
「あぁ俺そこの公園いかねーよ?」
私はすこしがっかりと共に安心しました。
「じゃあさ、施設の子は?」
「施設の子!エアガン持って公園行ってない?」
「んーーいってないんじゃねーか?」
おっとここで名探偵は挫折しかけました。
「あっ!」
畠山くんは思い出したように言いました。
「須藤の兄ちゃんがさエアガンあつめてんだよ!あいつさ顔も怖くてさ、学校も行ってねーし、そいつじゃないか?」
キーンコーンカーンコーン
ここで昼休みが終わって
ムズムズしたまま授業を受けました。
須藤と言う奴は隣のクラスの
馬鹿でとても陽気な奴でした。
「兄ちゃん??ずっと家にいるよ?」
「じゃ、放課後お前の家行っていい?」
「いいぜー!俺家で鼻くそためてんだー!」
放課後になり須藤くんの家に行きました。

「おじゃましまーーす」
須藤くんの家は共働きで
家には兄のカケルさんしかいませんでした。
「なにしてあそぶーー??」
「そんなことよりさ、カケルくんと話がしたくて今日来たんだ」
そう言うと、すぐ呼んでくれました。
「にーーちゃーーん」

「なんだい」
と低い声でヒョロヒョロのカケルが現れました。
「おにーさん!最近、公園でとりをころしました?」
カケルさんはびっくりした顔をして
こう言いました
「鳥を殺す?僕が好きな銃って言うのはね人と戦うためにあるんだよ!鳥なんて、そりゃ猟やそんなんで殺す人もいるだろう。でも僕はね人を殺す銃が好きなんだ!」
まだ頭が幼稚だったため、この人を殺すという言葉に違和感を感じませんでしたが、カケルさんでもないことが分かりました。
さて、どうしたものか
もう考えられる人は見当たりません
そうだ!とそれから毎日、放課後には
公園に行き、なにか無いかと探しました。
すると、また、鳥がエアガンで撃たれて死んでいるのを倉庫の裏で見つけました。
これは!定期的に殺されているんだと
気づいた私は公園に毎日、張り込みをするようになりました。
「今日もなにもないなぁー」
すると、スタスタと黒い服を着たエアガンを持った人が2人歩いてきました。
しかし、私には門限というものがあります
これを破るとこっぴどく叱られるので
顔が見えないまま帰りました。

家に帰って整理をしました。

犯人らしき人物は、小学生ではなく
大人だと言うこと。
鳥殺しは定期的に行われ、
夕方6時にやってきたという事

「んーー6時かぁ」
この頃の私は門限というものは絶対に守らなければならないものでした。
学校で6時以降に公園に行ける人がいないか
また聞き込みを行いました。
みんな、5時やら5時半やらと
6時に外出できる子はいなく諦めかけていました。
その時!
「俺!脱出できるぜ!」
と畠山が話しかけてきました。
やったと思い
畠山に話をしました。
「いいぜ!6時に公園だな!俺捕まえてくるわ!」
と言いました。
「ちょっとまって!まだ時間はわかるけどいつくるか分からないんだ!それがわかってから頼むよ。」と
それから毎日私は公園に通い
門限ギリギリを責めて
黒服の人間が来るのを待っていました。
その黒服は毎週月曜日6時キッカリに来ることが分かりました。
次の日畠山に話をしました。
「毎週月曜!月曜だったよ!」
「じゃ、今度の月曜にみてくるな」
と、1週間をすごし
月曜日がやって来ました。
その日の放課後はは家族で外食の予定が入っていたので
ムズムズしながら飯を食い
明日を楽しみに待っていました。

待ちに待った火曜日
畠山は来ませんでした。
先生が言うには急に引越したと
言うのです。
私は絶対に何かがあったと思いました。
その放課後に施設に行ってみました。
「畠山くんねぇ」
「昨日ちょうど、お母さんたちが帰ってきてね連れて言っちゃったのよ」
と施設の人は言うのです。
そんなタイミングが良いことがあるものかと思いましたが。
すっかりとその事は忘れて大人になってしまいました。


続く

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