連鎖するきっかけたち

物語と現実の境界線…

少しずつ今回のワークショップに参加した役者さんのキャラクターが出始めたころ、今度は役者と作品の登場人物たちの世界の境界線がどんどん曖昧になっていくのを感じました。

それまで、演技として、その人物の言葉として、声に感情を乗せているように感じていましたが、少しずつ役者自身の言葉として感情が揺れ動くのを感じたんです。

「声で演じようとしないこと」

これは読み合わせの序盤にナカベさんがおっしゃっていたことです。

「声で演じないお芝居っていったいどういうことなんだろうか?」

というのが、私が感じた疑問でした。。

しかし、役者の皆さんはすごいです!
読み合わせを積み重ねていくごとに、観ているだけの私にもわかるくらい「自分の中から出てきた言葉と声」になっていく、そういった変化を感じました。

役者の一人に、「言葉をネガティブに発してしまう癖がある」と言っていた人がいました。その役者さんから、ふっと明るいトーンの言葉が聞こえてきた瞬間があって、すごくいい違和感を感じたんです。

何度も同じお芝居を見ていた中で、その瞬間、ものすごく自然に言葉が入ってきました。

一通り見終えた後に、ナカベさんがその点についてその役者さんに質問していました。本人も「少し声のトーンを上げてみた。」といっていましたが、たぶんその演技は「その瞬間に演じた役に共感して、少し希望が見えたから、自然と声のトーンも明るくなったんじゃないか」とナカベさんはフィードバックで伝えていました。

「上げた」のではなく「上がった」のかなと…

きっと意識的に声で演技をしていたのなら、外で観ている私がその瞬間に、はっとすることはなかったんじゃないかと想うんです。

それまでゆったりとしていた時間が、急にその言葉に引き付けられた感覚が確かに残っていて、私の心がその瞬間、すごく動いていたんだと想います。

意識的に声色を作って、口先だけで演技することが目的になってしまうともったいない。
演劇は自分が伝えたい想いをもって、自分自身の言葉として、声になって生まれてくるのだ…と感じました。

きっと動作についても同じことが言えて、少しずつ役者さんと登場人物の人生が重なり始めてから、言葉を交わす際の目線の配り方や、手元の動きまでナチュラルになっていったんです。

もちろん、同じ役を別の人が演じることもあるので、同じ所作は、全く見れないんですよね。

それがまた面白くて、役者さんの数だけその役の人生は広がっていくんだな…なんて考えてしまって、それは本当に素敵なことだ!って目の前で展開されていくお芝居を見て感動していました♡

同じ人がいない十人十色の世界で、こんなに素敵な掛け合わせが表現の中に生まれていることが、今の私にとって希望でしかなくて、勇気づけられました!!♡

きっかけを作ること!

キミノアオハルさんのワークショップに参加して一番感じたことは、コミュニケーションってとても大事なんだなぁ…ということでした。

言葉が持つ力は大きいですが、言葉単体でできることは実は限られていて、そこに人がどのように息を吹き込んでいくのかによって言葉の
力の質が変わってくみたいです。

そんなお話をナカベさんはワークショップ中に音楽のセッションや、キャッチボールに例えて伝えているのが印象的でした♡

この例えのすごいところは、みんな見たり聞いたり、実際に一度は経験、体感しているような内容を使っていることなんです。

みんなが知っている。けど、みんなが別々の感じ方をしていると想います。
例え家族であっても、同じ事を同じ気持ちで体感することはできないから、そこにうまれてくるものはもうその人自身のオリジナルなんですよね。
まさに、十人十色です。

そしてナカベさんは、言葉は「きっかけ」であるとおっしゃっていました。

聞いた誰かがそれを受け取って、そのきっかけに反応して次の言葉を投げ返す。

言葉でなくても同じで、誰かが目配せをして視線を感じた誰かがまた言葉を発していく。

そんな連鎖反応のような出来事が、コミュニケーションなんですね。

すごく勉強になりました。

以前、キミノアオハルさんの舞台を観劇した方が、「セリフを言っている人だけでなく、その周りにいる役者もしっかり世界を表現しているのが興味深かった。」と言っていたのが印象的だったんですけど、そこに居た役者さんは本当にその場所でその世界を生きているかのように自然にそのシーンを演じていたんです。

「きっかけ」は与えることもあるけど、どこか「きっかけ」を待っている、期待している時って日常の中に少なからず存在していて、そういう時の所作って演じようと想ってできないと想うんですよね。

なので、どれだけいつも通りの自分と登場人物を重ねたり馴染ませたりするのかが大切になってくるのかなぁ?と想いました!

その上で、
どんな想いをとどけたいのか、
どれくらいの速さで、
どれくらいの大きさで、
相手にどうやったら届くのか

これらを頭の上に置きつつ演じるのが役者さんの凄さなのかもしれないなと想いました!!♡

終盤に現れ始めた変化

ワークショップが進むにつれて、役者の皆さんのコミュニケーション能力がかなり高まっていくのを感じました。

数時間前に初めて出会った人同士だとは想えないくらい会話のテンポ感や強い想いのぶつけ方、受け止め方が変化していったんです。

そこには、ただ広い空間が広がっていたはずなのに、いつの間にか、この演劇の舞台である、『4人が大学4年間を共に過ごした稽古場』の様子が想像できるような世界観が少しずつ生まれてきていました。

その変化はきっと演技のテクニックの変化だけじゃなくて、目に見えない、もっと感覚的なものであったように想います。

時にはセリフが、時には登場人物の年齢や設定が変化しながら役者さんに馴染んでいって…私はすごくその世界が暖かくて素敵だなって思ったんです。

未来に想いを馳せて…

このワークショップが終わりに向かうにつれて、私はすごく寂しい気持ちになって行きました。やっぱり映像で観る演劇と、生で見る演劇って全然違ったんですよね。

その場の空気が動くというか、循環していくあの独特な感触は生で見るからこそ、感じられるのだと想いました。

そして今回何よりも価値を感じられたのは、作品を作る現場を生で見て、そこで生まれる「言葉」「反応」を体感することができた事でした!!♡

参加された役者の皆さんが今後どのような役を演じていくのか、キミノアオハルさんがどんな人と出会い演劇を生み出していくのか。

これからも目が離せないです⭐︎

次のワークショップは3/29(月)ですね!
きっとまた今回とは違うドラマが生まれていくのだと想います…!!♡

もう来週ですね、待ちきれません!

ワクワクですね⭐︎

3/1に参加された役者の皆さん、ありがとうございました♡

2021.03.01 WS 大阪市立芸術創造館にて

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