辛くて、苦しくて、心臓が痛い 『BLUE GIANT』
93点/100
ニートが毎日、映画をレビューしようとすると、高く設定するのは、ダメだと思って、低めに設定することを決めた。
だが、自分の思い出補正で、今回、高くなっている部分を許してほしい。
これでも、抑えたつもりだ。
高校の頃
当方は、高校の頃、軽音部に所属し、ドラムを叩いてた。
やたらと、催しものが多く、バスで、どこかに行くことが多かった。
一人、バスの車内の中、座席テーブルを出し、タオルを敷き、スティックで、カタカタ叩いてた。
修学旅行にも、スティックを持っていき、カタカタ叩いてた。
部活の先輩にも、うるさいと言われ続けた。
だが、叩き続ければ、変わると思って、1打1打、打ち続けた。
テストの赤点を出しながら、ドラムしかないと叩き続けた。
周りがグリップテープをスティックに巻く中、自分は、それに頼らなかった。
自分の汗がスティックになじみ始めると、一番、持ちやすくなる。
その頃になると、スティックが折れる頻度が圧倒的に下がる。
ただ、ドラムを叩き続けた。
だが、諦めてしまった。
坐骨神経痛になって、ヘルニアになった。
ストレスなのか、ドラムのやり過ぎなのかわからない。
歩くこと、座ることもままならなかった。
そんな当方には、玉田の気持ちがグサグサ刺さって、大の実直なひた向きさに劣等感のような悔しさが溢れる。
"これは、観れん"
初の給料をもらい、Blue Noteの前で、夢を語るシーンで、思わず、停止ボタンを押す。
玉田が買ったYamahaのDTXは、自分も、古い型だが、中学の頃から叩いていた。
Rolandのエレドラ(エレキドラム)は、強弱のニュアンスを出してくれる。
だが、学生に、50万は、出せない。
よって、Yamaha一択になる。
最初のライブで、周りに遅れる。手が止まる。汗が止まらない。
ドラムは、自分のプレイに確固たる自信が無ければ、叩けない。
当方も、どれだけ、練習しても、リズムキープが上手くならなかった。
ライブに出ては、帰ってきて、泣きながら、上手くならねぇって、叩いてた。
練習とライブでは、天と地、月とスッポンぐらい違う。
緊張と焦りから、体から力が抜けなかった。
あの頃、リズムキープの地味で、マメな練習が続けられなかった。
才能に勝てなかったのだ。
曲を作り始めると、派手なドラムフィルよりも、リズムキープの方が、いかに大事か痛感する。
他の人の音を聴こうと努めたが、あの頃、余裕がなかった。
向いてなかったんだと自分で、納得してたのに、『Blue Giant』を観ると、実直さが辛い。痛い。
停止ボタンを押したまま、ここまで、書いてしまった。今日は、寝る。
翌日
重い腰を上げて、再度、視聴。
今作の特筆すべき点は、
音に説得力があった。
特に、下手な演奏をしっかり描いていた点だ。
玉田がドラム教室に行って、練習してきた後、8beatを叩く。
そのドラムがビートからズレている。
大が沢辺に最初、演奏するシーンも、繊細なブレスの音が出せず、力いっぱい吹いてる感じがよく出てた。
だから、Jassのメンバーが上手くなって、成長する様に、説得力があって、納得させられた。
だから、陰ながら成長を応援してくれた白髪の老人の言葉にグッと来て、玉田同様、涙が出た。
彼らが汚い服装で、BlueNoteに行く気持ちがわかるだろうか。
当方も、10年前ぐらいに、『Incognito』というバンドを観るために、BlueNoteに行ったが、GUの安いコートをフロントに預ける感じは、恥ずかしいやら、苦々しい思い出だ。
ご婦人方のテーブルに相席し、金もないから、ウーロン茶だけ頼んで、観ていた。
それでも、演奏は、最高だった。
『セッション』との類似性
後半で、沢辺が事故に遭い、ピアニスト生命を絶たれる。
映画『セッション』を想起する。
だが、当方が嫌いな映画にディミアンチャゼル監督の『セッション』『ラ・ラ・ランド』がある。
なぜか。
音楽が映画の単なる道具としてしか、機能してないからだ。
特に、『セッション』は、顕著で、当時、映画評論家の町山智弘氏とサックス奏者、spank happyの菊池成孔氏の間で、激論が重ねられていたと記憶する。
だが、今作は、前述で述べた通り音楽に説得力があり、彼らのストーリーが音や映像として、表現されていた。
音楽が単に、道具じゃなく、ストーリーの中核として、機能していた点が今作の素晴らしい点である。
感想
原作を未読でも、大変、素晴らしい映画だった。
熱が伝わってくる。
その熱で、自分の思い出も蘇った。
声優の俳優陣も素朴で、よかった。
沢辺のその後が知りたいので、原作を読みたい。
話が変わるが、当方が音楽を始めた影響になったバンドは、RADWIMPSだ。
ドラマー 山口智史氏は、ジストニアになり、無期限休養中だ。
RADWIMPSの『愛し』という曲の出だしのシンバルワークが天才的で、野田洋次郎氏の歌声の繊細さとすごくマッチしている。
山口氏が音大のJazz科に通ってたからこその技だと思う。
是非、復帰するのを楽しみにお待ちしている。
ここまで、読んで頂き、ありがとうございます。
愛してるぜ!!