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映画「パルプ・フィクション」レビュー
パルプ・フィクション(原題:Pulp Fiction)
第47回カンヌ国際映画祭パルム・ドール
第67回 アカデミー脚本賞
第52回ゴールデングローブ賞 脚本賞
など
<監督>
クエンティン・タランティーノ
<出演>
ジョン・トラボルタ
サミュエル・L・ジャクソン
ユマ・サーマン
ハーヴェイ・カイテル
ティム・ロス
アマンダ・プラマー
ブルース・ウィリス
など
<公開>
1994年10月14日(米国)
1994年10月8日(日本)
■紹介文
この作品を紹介する段になって思いついた2つのワード。
群像劇と偶然性。
この映画は、シーンによって中心人物が変わるいわゆる群像劇である。
そして、登場人物たちのところに偶発的な事象が起こり、彼らはあらぬ方向へと導かれてしまうのだ。
たとえるならドラクエのパルプンテみたいだ(パルプンテとはランダムで何かが起こる呪文。唱えてみないと何が起こるか分からない)。
そんな気まぐれさと遊び心がこの作品の魅力の一つだと思った。
印象に残るシーンがたくさんある。
映画の冒頭でタイトルにあるパルプ(pulp)の意味が説明される。
質の悪い紙に印刷された煽情的な内容の出版物
一つ一つの出来事は、要約して文章化したものを眺めてみると、たしかにくだらない。
だが、だからといって「こんなもんいらねっ」といってポイっと捨てられる作品ではない。
くだらないけど、不思議な魅力がある。
矛盾した言い方だが、センスあるナンセンスなのだ。
作品を改めて観て、なんとなく思い出した。
大掃除の日に、いらなくなった少年時代のおもちゃを捨てようとゴミ袋に入れようとしたとき、はたと手をとめて、やっぱりとっておくことに決めたのを。
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ここからラストシーンを含むネタバレです
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■オープニングシーン
まず、オープニングシーンがいい!
前述の単語(pulp)の説明後、ファミレスっぽい感じの店でカップルがくっちゃべっているシーンに入る。
二人とも絶妙にクズの雰囲気が出ている。
男が女に強盗について語りだす。
以下、男の理屈↓↓↓。
酒屋を強盗するとなると、最近外国人経営が多くて脅しても英語が通じないし、彼らは執念深いから殺す羽目になる。でも殺しはしたくない。
バー、酒屋、給油所は強盗を警戒している。
でもレストランは無防備だし、安い時給のウェートレスは抵抗なんてしないだろう。
等々。
てなわけで今いるレストランで強盗をすることに納得した女。
感動すらしている。
キスを交わしたあと、男は立ち上がり、拳銃を構える。
「皆騒ぐな! 強盗だ!」と叫ぶ。
そして、女も拳銃を取り出し、立ち上がる。
このとき女にバチンとスイッチが入って、ものすごいテンションで叫ぶ。
「ちょっとでも動いてごらん! 一人残らず脳ミソぶっ飛ばすわよ!」
ぐわあああクレイジー!!!
いい!!
そして、ここでストップモーション!
つまり映像が静止する。
ここでDick Dale & His Del-Tonesの「Misirlou」が流れて、オープニングクレジット!!
くううぅぅーー、きまったーーー!!
憎いほどにきまった!
ちょっとダラッとしていた雰囲気が一気に変わる緩急がすごい!
曲調、曲のかかるタイミング。
心沸き立つ。
この曲はバラエティー番組なんかでもよく使われている曲なので、一度は聴いたことがあるんじゃないだろうか?
それにしてもこの曲、見事にハマっている。
これから何かが起こるぞーって感じがして、めちゃくちゃしびれる。
ちなみにサウンドトラックのCDにも、男と女が叫ぶ声が収録されていて、その次に「Misirlou」が流れるようになっている。
ファンにとっては嬉しい粋なはからいだ。
オープニングクレジット中、この曲の途中でラジオのチャンネルを変える音がして、違う曲が流れ始め、ヴィンセントとジュールス中心のシーンに切り替わる。
ものすごく斬新というわけではないが、こういうちょっとした遊び心のある演出は楽しいし、効果的だ。
■構成
この映画の構成において、印象に残ったのは群像劇のつながりと順番である。
前述したようにこの作品は群像劇であるが、それぞれの物語が霧散せずにつながる。
登場人物からすれば偶然だが、観ている私からすれば、こうあるべきものだし、そうこなくっちゃって感じだ。
それにしてもブルース・ウィリス演じるボクサーのブッチ中心のシーンで、ヴィンセントが呆気なく死ぬところには面食らった。
正確に時間を計ったわけではないが、登場人物の中では、トラボルタ演じる長髪のヴィンセントがいる場面の時間が一番長いと思う(誰がスクリーンに映っている時間が一番長いのかは計ってみないと分からない)。
時間だけでなく、存在感、役どころを考えてもこの映画において占めるウェイトは大きい。
それなのに、である。
トイレからふらっと出てきたところを銃殺されて簡単に死ぬ。
何でもない脇役のごとく。
この思い切りのよさ!
普通はこういう重要な登場人物というのは、死にかけて助かるとか、死ぬにしても、もっとドラマチックに丁寧にその死を描かれる。
でも、この映画ときたら笑っちゃうくらいぞんざいな扱い。
驚き。唖然。
そして、こんな風にできるのは贅沢だなーとも思った。
金持ちが高級品を雑に扱っているのを眺めている一般庶民の気持ちである(ちょっと違うか?)。
そして、何といっても冒頭のカップルのストーリーとヴィンセント&ジュールスのストーリーが最後につながるところが素晴らしい。
冒頭のカップルも明日から足を洗うという話をして、ジュールスも足を洗う発言をしていた直後に出会い、物語のクライマックスを迎えるというのも面白い演出である。
っていってもこんなこと、初めて観たときには気づかなかったのだ。
初めて観たときは、冒頭でカップルがそんな話をしていたことすら忘れていたのだ。もうチコちゃんにボーッと生きてんじゃねーって叱られそうだな。
映画というのは2回3回と観ることで新たな発見があるし、興味深い趣向に気づけたときは嬉しいものだ。
また、この映画は繰り返し観る価値のある作品だと思う。
そして、この出会いはシーンを見せる順番によってさらに引き立てられている。
時系列通りにシーンが並べられているのではなく、ごちゃごちゃした順番になっている。
回想シーンと現在を行きつ戻りつというのだけだったらもう少しわかりやすかったが、そんな風にはいかないのがパルプフィクションだ。
でも、これがそのまま時系列通りに流れていたら、どうだったろうか?
もちろん、魅力的なシーンのたくさんある作品だから、駄作とまではならなかっただろうが、作品の価値は下がっていたと思う。
カップルと、ヴィンセント&ジュールスのコンビの出会いのインパクトも弱まっていただろう。
ちなみに実際にはどういう時系列になっているのかについては、「パルプフィクション 順番」とでも検索すればいくらか解説サイトが出てくる。
では、他の順番だったらどうか?
試しに私は、色々な順番を入れ替え差し替えあーだこーだ考えてみた。
やっぱりオリジナル通り、最初と最後にカップルのシーンを持ってくる順番がいい。
これがしっくりくる。
またヴィンセントが死ぬシーンが先に映されるので、そのあとに流れるシーンを私は不思議な気持ちで観ることとなった。
最後にヴィンセントとジュールスが短パンに銃を入れて、レストランをあとにするわけだが、「ああこのあとヴィンセント死んじゃうんだよなー」と思うと不思議な余韻と感慨がこみ上げる。
やっぱりこの順番だ。
「気まぐれ」と、記事のはじめの方で述べたが、それと同時によく練られた作品でもある。
ただ単にめちゃくちゃやったわけじゃない。
気まぐれな部分と計算した部分がうまい具合にミックスされていると思う。
■おわりに
上記に加えて、他に好きなところをいくらか挙げようと思う。
・二人が短パンに銃をしまうときのシンクロ具合、大好きだ。
・ユマ・サーマンの存在感。
ストーリー的にはあまり重要な役柄ではないが、彼女の存在は印象に残る。
これぞ、ザ・女優って感じ。
ただ綺麗なだけじゃ女優としてはダメなんだなと思わされた。
・ヴィンセントとジュールスが死体処理と車の掃除を終えたあと、ジミーから借りた服に着替えたシーン。
絶妙なTシャツのチョイスと、その似合わなさ。
最高。
・この作品観たあと、ハンバーガー食べたくなる。
他にも好きなシーンは色々あるし、魅力的な役者がいっぱい出てくるけど、この記事ではとりあえずこの辺で。
あっ、あと最後に、構成に関してもう一つ言っておきたいのは、時系列通りに並べた映画が全部悪いとか、順番を変えていたら良い作品というわけではないってことだ。
そういうのは一概にはなかなか言えないし、ケースバイケースだ。
この映画では順番をあれこれ変える構成がうまくハマって功を奏したという話である。
それではまた!
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