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科学コミュニケーターになるには

「科学コミュニケーターを名乗るには、やはり、CoSTEPを修了しないといけないのですか?」と質問されたことがある。「CoSTEP」とは、北海道大学の科学コミュニケーター養成プログラムの略称だ。

もちろん、そんなことはない。現在のところ、国が「科学コミュニケーター」という名の資格を設けているわけでもないし、職名として「科学コミュニケーター」を用いている機関もごく一部に限られているのが現状だ。

今回のnote記事では、そんな「科学コミュニケーター」について考える。

科学コミュニケーター養成講座の広がり

2000年代に入り、「科学コミュニケーション」という言葉や理念が日本でも広がり始めたと同時に、大学院教育や博物館において、科学コミュニケーター養成のための講義や講座が取り入れられ始めた[1,2]。北海道大学CoSTEPもそのうちの一つだった。

以下のウェブページでも、科学コミュニケーションを担う人材の養成の広がりが紹介されている。

以下には、北海道大学CoSTEPを含む三つの養成講座における科学コミュニケーターの説明文を掲載した。

科学コミュニケーターに関する説明文

科学技術に関することがらについて、異なる価値観を持つ人びとをつなげる入り口の役割を担うのが、科学技術コミュニケーターです。今日、こうした人材が、大学や研究機関のみならず、社会のあらゆる場面で必要とされています。

拓く未来|北海道大学CoSTEP

人と自然と科学が共存する持続可能な社会を育むために、誰もが科学について主体的に考えて行動できるきっかけを提供し、人と人あるいは科学と社会をつなげる、それがサイエンスコミュニケータです。

サイエンスコミュニケータ養成実践講座|国立科学博物館

科学技術をわかりやすく伝えるとともに、科学技術のあり方や未来社会をどう築いていくかについて、社会のさまざまな立場の人と対話をしながら考えていくのが科学コミュニケーターの役割です。

科学コミュニケーターについて|日本科学未来館

これらの説明文からは、科学コミュニケーターとは職種ではなく「役割」であることが分かる。したがって、「養成講座を修了した=科学コミュニケーター」というわけではないのだ。

ただし、日本科学未来館では、「科学コミュニケーター」という名称でスタッフを採用しているので、事情は少し異なる。もちろん、日本科学未来館のスタッフでなければ科学コミュニケーターではない、なんてことはない。

科学コミュニケーターという「役割」

科学コミュニケーターが資格でもなく職種でもないとすると、その意味に当てはまる人も自然と多様になる。文献[1]では、科学コミュニケーターを

「あるテーマをめぐる科学技術コミュニケーションの場に積極的に、かつある程度継続的に関わる人々のすべて」(科学技術の専門家か非専門家かを問わない)

杉山滋郎「科学技術コミュニケーターの育成」科学教育研究 第31号4巻 287-294 (2007)

と設定している。科学技術の専門家かどうかも関係ないのだ。

大切なのは、科学コミュニケーションに「積極的に、かつある程度継続的に」関わっているかどうか、なのだと思う。

繰り返すが、科学コミュニケーター養成講座を修了していないからといって、科学コミュニケーターを名乗ってはいけない、などというルールはない。逆に言えば、科学コミュニケーター養成講座を修了したからといって、科学コミュニケーターなのかどうかも不透明だ。

科学コミュニケーションに関する勉強も大切

そうはいっても、「積極的に、かつある程度継続的に」科学コミュニケーション活動に携わっている“だけ”では不十分だ、と僕は考える。

科学コミュニケーションに関する基礎知識や実践例を学ぶこと、科学コミュニケーションに必要とされるスキルなどを(ある程度)習得することも必要だと思う。

そのための手段として、先述した養成講座に参加することは非常に有益だ。それは、科学コミュニケーションを専門とする人たちと関われることや、自分とは異なる科学コミュニケーション活動に携わる人たちと直に情報交換や意見交換ができるためだ。

オープンアクセス文献もオススメ

ただ、養成講座に参加するにはお金も時間もかかる。加えて、数えるほどの講座しかないため、居住地からの制限も付いてしまう。

そこでオススメなのが、オープンアクセスの科学コミュニケーション関連誌での勉強だ。以下には、代表的な二つの雑誌を挙げた。

『科学技術コミュニケーション』は全ての記事がオープンアクセスだ。一方の『サイエンスコミュニケーション』は1年くらい経ったバックナンバーがオープンアクセスとなる。

これらは、科学コミュニケーションに関する議論や実践例が掲載されている雑誌だ。僕もこれらの記事を読んで、情報収集したり、科学コミュニケーションに関する理解を深めている。

もちろん、科学コミュニケーションに関する書籍(有料)も発行されているので、興味のある人は調べてみてほしい。

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