自分の本に足りなかったもの
新しい本ができました。
20冊目と21冊目の文庫本。
今回は、ついにロマンサーを経由せずに、Wordから直接、PDF化したものを入稿原稿にしました。
これまでどうしてWordから直接PDF化しなかったかは、以前、どこかで書いたことがあったような気がしますが、もう一度まとめておこうと思います。
そもそも、どうしてロマンサーを使っていたかと言うと、「電子書籍化に必須のEPUB原稿を作る&限定公開原稿をネットでシェアする」という目的があったからでした。
本格的に文庫本化することにしてからは、電子書籍化はやめていますし、WEBで原稿を公開しなくても紙の本が実店舗(棚ですが)に並ぶこととなり、サトちゃんが「限定公開URL」でネット上で作品を読む必要もなくなりました。
ロマンサーの利点は(しっかり確認さえすれば)、原稿の仕上がりが非常に綺麗なことです。ルビも綺麗におさまり(そのあとのCalibreの設定もありますが)、満足でした。
が、やはりいろいろなツールを間に挟むことの弊害もありました。
弊害のなかみは色々ありますが、なによりも最初の原稿のチェックが甘いと、後から間違いに気が付いても直しようがない、というのがいちばん大きな問題でした。
その点Wordは、原稿を直すことが容易です。これはとても有難いことです。どんなに気を付けても、本になってから気が付く間違い、というのは無くすことは難しいです。でもできる限り気が付いたところは直したい。それが可能なのが、PDF前の原稿を直すことができるWordの良さです。
Wordそのものも、Word365になって、エディタの性能もある程度は上がった気がしましたし、なによりPDF化がスムーズに行えるようになっています。ページ設定やルビの問題も、改善しているように思えました。なによりも『青音色』の活動をしたことで、海人さんや渡邊さんから教えてもらったことも多く、Wordでの作成に踏み出す勇気が出ました。
自分の校正技術(能力ではなく)も多少なりとも身についてきました。最初の頃は「自分だけの本だし、この程度でいいだろう。とにかく文庫という形になりさえすればいいんだから」と妥協していたことが多かったのですが、実際に手に取ってくれる人がいる以上、そうも言っていられなくなったというのもあります。
そこで、思い切って、WordからPDF化で本を作ってみようと思いました。
最初は大失敗でした。『非時香果』は、できるだけページ数を減らすためにフォントを小さくしたら、老眼じゃなくても読むのがキツいくらい、ページにぎっちり文字が詰め込まれたものが出来上がってしまいました(お値段半額で現在吉穂堂にあります)。
『音楽のようにことばを流す』のほうは、こちらもページ数を減らすために行を詰めたら、詰めなくていいところも詰まってしまったり、ルビが外れてしまったところが多々あっただけでなく、目次に失敗し、さらにページが入れ替わったりして、目も当てられない状態でした。ロマンサーにお任せだったところが、全部裏目に出てしまった感じです。
勉強代、と思い、印刷をやり直しました。
もちろん自腹です。笑
パーフェクトには遠く及びませんが、それでもある程度許容範囲のものが出来ました。
Wordからでも本にできる自信がつきました。
本を作り始めたばかりのころは「出来上がった本のイメージ」を具体的に想像することが難しく、いろいろ失敗しましたし、行き届かないところがたくさんありました。
カバーはあるけど、表紙がない。
目次がない。
ノンブル(ページ番号)がない。
奥付はロマンサー仕様の簡素なもの。
内扉がない。
宣伝がない。
帯がない。
などなど、ないものづくしでしたが、そこは少しずつ、チャレンジを重ねているうちに、形になってきたように思います。
その点、今回の本は、いよいよ「文庫本」らしさが増したと思っています。
電子書籍版(680円)には、記事を推薦してくれた人のお名前と、記事に対する自分のコメントを載せていましたが、今回の文庫版では純粋に「エッセイ集」としてエッセイだけを掲載しています。
そのため厚さが1.5cmほどになっております。約半分の厚み。
お値段は、Amazonの紙本の半分の900円です(現在、Amazonの紙本は販売していません)。文庫化はなかなかにお金がかかるもので、電子書籍と同じ金額にはちょっとできませんでした。すみません。
この辺のお話は、先週金曜日に更新したWEBでしています。
もし、ご興味のあるかたがいらしたら、どうぞ。
Amazonの紙本「小さな鈍器本」には興味はあったけれど購入までは、と思われていた方は、ぜひ、今回の文庫本をご検討くださいませ。
ここで、本文部分も「完璧!」と言えればよかったんですが、ここはまだ課題が山積しています。
WordでPDF化した時に一字下げや行あけが詰まってしまったり、校正した時に消さなくていい字を消してしまっていたり(これは自分のPC・・・というかマウスが壊れてたのが原因)、ルビの直し漏れがあったなど、正直色々ありました。まだまだです。
それでも、これまでの文庫本よりも読みやすくなっている部分もあります(フォントや余白など)。
2冊の新刊は、来週にも吉穂堂に搬入予定です。
お近くにお住まいの方は、ぜひ、手に取ってご覧いただければと思います。吉穂堂(PASSAGE)のオンラインでもお求めになれます。
さて、最近こちらの企画に参加されている記事をよく拝読しています。
青豆ノノさんの狐人企画『小説を書いたり読んだりする人が答える20の質問』への回答記事。
20問という設問が、答えやすく読みやすく、プロフィールを伝えるにもちょうどよいなあ、と思います。
中でも「Q3、内容を知らない小説(文庫本)を手に取ったら、まずどこをチェックしますか。」という質問が秀逸で、私は皆さまのこの質問へのお答えに大いに注目しております。
というのも、本を作る時に、作家ではなく素人の本である私の本を手に取った時、どんなところに注目されるのか、ということを、私はあまり考えたことが無かったからです。なにしろ「本」という形にするのが精いっぱいで、そこまで全く気が回らなかった、というのが本当のところです。
みなさん、いろいろなところに注目されて本を選んでいるのだなあと、非常に参考になりますし、この個所を読んで、やっとやっと、「素人の作った本ね」と思って手に取った時も、きっと同じように「見る」「眺める」こともあるだろう、と思うに至りました。ごく最近まで「購入いただいた方は、知り合いだから気を使って買ってくださっているんだな、私を全く知らなかったら購入まではされないだろうな、まあでも、私の本はそういう種類のものなのだし、購入いただけるなんて夢のようで、有難いばかりだ」という気持ちがどこかにあり、本当に私のことを全く知らない方が手に取ることもあるという現実に目を向けていなかったことに、改めて気が付きました。
中でも偏光さんの記事『オクラ畑に埋めといた君の切れっ端【小説を書いたり読んだりする人が答える20の質問】』を読んで、さらに気づきがありました。
そうか!「出版に対する熱量か!」と、ハッとしました。
私はどこかで、年甲斐もなく小説など書いて、その作品をアピールすることが恥ずかしい、と思っていて、とにかく「私のことを知らない人は読まないんだから、いいや」みたいな気持ちがあったのだと思います。
知らない人にも読んで欲しい、という熱意。そのために、自分の作品を紹介しようと思うことは、恥ずかしいことでも何でもない、ということに、改めて気づかされました。
だって最初は、みんな初めて。
どんな文豪の本だろうと、初めて出合う時は初対面です。
頑張って書いた作者のみならず、出版社の人も「この本を読んで欲しい」という熱意と愛があるから一生懸命本を作るのだし、読者は、そこをちゃんと汲み取ってくれるものなのだと思います。
私は作者であり出版社なのだから、そこのところをちゃんと伝える努力をしなければいけないんだ、と気持ちを新たにしました。
4、5年前にはコロナ禍もあって家で引きこもりのような生活をしていた専業主婦が、今やkindle本のみならず20冊も自分の本を出しているのも我ながらびっくりしますが、神田の共同書店の棚主になって自作本を売ったり、文学フリマに出店したり、同人誌に参加したり、noteの授賞式に招待されたり、本当に異世界転生くらいの世界線にいるなあと思います。
なによりも、noteでたくさんのかたと出会い、その出会いから世界が広がったのは間違いがなく、noteが違う世界線への扉だったのは間違いありません。
そしていつか、今のこの時を懐かしく誇らしく思う日がくるはずです。
「できっこない」と思っていたことが「できた」こと。
勇気を出して精一杯がんばったこと。
その積み重ねで、いちどでも夢をかなえたこと。
その記憶は生涯の宝です。
ところで青豆さんから、先日とても素敵なプレゼントをいただきました。『飛鳥』の感想です。死ぬまで大切にする宝物なので内容は非公開ですが、青豆さん、錚々たる読書と鑑賞の記録の中に私の本をちゃんと入れてくれました。
改めまして、お礼を言わせてください。
ありがとうございます。
ちなみに『飛鳥』は上下巻で、こんな本です。
上下巻5冊印刷して、もう印刷はしないことにしようと思っていましたが、青豆さんに好評価をいただいたので、あと5冊だけ増刷してみようかという気になっています。その際は、本文の校正をきっちりやり直す所存。
青豆さんには、有難いことに他にもいくつかの本を読んでいただき、とても丁寧な感想をいただいています。そして「シリーズ物の楽しさを知った」とおっしゃっていただきました(言葉はそのままではありません)。
そう。こちらのシリーズ物は、「この人が、あの人だったんかい!」「この出来事の裏に、こうした事情があったんだ!」「子どもの頃可愛かったんだな」「こういうじいさんになるとは」「若い頃はいけ好かない感じだけど、年を取るといいおばあちゃんじゃない」という発見があり、世代をまたいだ世界や人物のリンク具合が楽しいものなのです。
読めば読む程面白くなっていくものではありますが、なにしろこの世は今「タイパ全盛期」。
昨日自分も「なんかシャツの裾がもたついてるな。上手く処理できないものか」と思って「シャツの裾 アレンジ」で検索したら、出て来た動画はすでにインスタ劣勢、ティックトックがずらり。
タイパよ、ここまでかよ・・・
と思ったほどなので、世界が「ゆっくりのんびり時間をかける」ということに意味を見出せなくなっているのは理解しています。
でもさ、時間かかっても、面白いものは面白いんで。
老舗のおでん屋のおでんくらい沁みる、という青豆さんのお墨付きなんで!(←ここですかさず言っとく)。
そしてあえて言うと、私は「ラノベ・エンタメと純文学の垣根を外し、読みやすくかつ深い文学」を目指している、ということを、最近自己発見しまして。
文学的テーマをライトな感覚で読んでいただけるのが私の小説の特徴なのだと思います。小説好きなタイパ世代(そんなものがあればですが)には向いてると思います。
あー・・・
慣れない自画自賛をしたら疲れました。笑
もちろん、そんな大層なものではないのは重々承知です。でも「ちょっとだけ自己推薦してもいいかな、いいよね」と思うほど青豆さんの感想は、私の心を軽くし、熱くしてくださいました。
生涯、忘れられないものとして心に刻まれています。
繰り返しになりますが、ありがとうございます。
今年はいろんな出来事があり、これまで経験したことのないことを経験し、たくさん学んだ年でした。
途中、noteはもう卒業したほうがいいのかなと悩んだこともありましたが、でも、noteは私を成長させてくれる場所であり、なにより創作の仲間と出会える場所でした。
今は、人との出会いに勝る喜びはない、と思い直しています。
これからも、精進します。
学び続けます。
最後に、文学フリマ東京39に向けて『青音色』の宣伝を。
ワンコインで買える創刊号は、本当に「お得」だと思います!!
文学フリマにいらした際は、ぜひぜひ、手に取ってみてくださいね。
文学フリマに行けないよぅ、という方にも、なんとかお届けできるよう、3人で今、アイディアを振り絞っております。
12月1日は青音色の日。
ぜひ、「ウミネコ制作委員会」さんの「さ39・40」ブースに足をお運びください。