住むということ、生きるということ。
浜中雄一、七十二歳。妻のるり子、七十四歳。
ふたりは、池袋から東武東上線で三つ目、大山駅近くのURの団地に住んでいる。
駅の南側に通称ハッピーロードと呼ばれる全長五百六十メートルのアーケード商店街が続く。そこを抜けて川越街道を渡った少し先に五階建てが二棟建っている。エレベーターはない。四階の五十六平米の3DKにもうかれこれ三十年も住んでいる。
狭くはあるが、ひとり息子のあきらが十年前に独立してからはそれほど不自由を感じたことはない。息子の部屋はそのままにしてあって、息