マガジンのカバー画像

小説、詩、ことば

31
よるが描いた世界
運営しているクリエイター

#ひとりごと

波に酔う

波に酔う

文学をこねくり回してた時代のがよかったな. 女の主体性を論じれば空でも飛べる気がしてた. あなたが読む本の擦り切れたページには. 母を恋ふという文字を丹念に撫でた跡. 海に行きたいとわたしがあなたに言ったとき. わたしは死んでしまうあなたを想った. 波に. 呑み込まれて. 孤独に. 押し潰されて. 眠れない夜に流し込む液体は. あなたから愛を奪った. わたしから安らぎを奪った. 葉っぱを吸う女の子

もっとみる
かこう

かこう

遅めの衣替え、あなたの聴いていた音楽をかけながら。粗く編まれたセーターの生地、額に汗が伝う。”You know I’m trying” この歌詞がきらいだ。だってわかっていた、あなたがどれほど努力してきたのか、あなたがどれほど失ってきたのか、どれほどの他人を傷つけ、自分を痛めつけてきたのか。あなたと一緒に過ごした服たちはまた今年も着られないままにタンスの奥へ押しこまれてゆく。まるで何もなかったみた

もっとみる
無題

無題

愛をほかの人に託して、
責任転嫁。
広い宇宙のなかで、
あなたの代わりを探すのだけれど、
かたちのとおりに埋まらぬくぼみ、
どこか満たされない、ずっと泣いてるふり。
愛を、与えて欲しくて、
必死になって駄々こねる。わたし、
やっぱりあなたじゃないと、なんて、
使い古された皺くちゃのことば、
もう飽き飽きだよそんなの。懲り懲りだよ、
なのに、永遠を瞬間に感じるほど
あなたを待ちつづけている。
あなた

もっとみる

わたしのために怒って欲しい、わたしのために泣き喚いてほしい、どれだけわたしがあなたなのか、むね引き裂いて感情ぜんぶ見せてほしい、怒鳴って、殴って、悲しんで、ちゃんと、縛って、掴んで、握っててちゃんと、俺のために生きてってゆって、さみしいんだ僕ってゆって、ちゃんと、愛してあげるから

To be honest

To be honest

すこしだけ眩暈がする。街灯を眺めながら、冷めた夜風にあたっていると、世界がベランダに縮小されて、すべてがどうでもよくなってしまう。早すぎた下駄が裸足を叩く音がする。わたしの貧乏ゆすり。何万回やっても、人とつながりつづけることは私には難しい。今日言われたおめでとうの数が、去年からの成果。1年後にはまた、ぜんぶ遠くなっている。真っ当に祝われるのは居心地が悪くて、忘れられてるくらいなほうが、何故かほっと

もっとみる
 neutralmonaural

neutralmonaural

思い出しちゃったなんで文章書いてるか、劣等感まみれの私、世界に対して怒ってるけどそれってわたしに対しての怒りだよね。なんで認めてくれないのって、世界にゆって、自分に対して駄々こねてる。「ばかじゃない? あきらめな」って言われたほうがまだはやい、鋭い感情を持て余したからわたしは表現をはじめた、これからもかわれない認めないなら一生、創造をつづけていくべきだとおもうそれしか生きる道はない。

他者になり

もっとみる

お願い、いなくならないで、いなくならないで、って、祈ってるんだけど。なにに対してか分らないの。無対象のわたし、消えゆく記憶に引き摺り込まれてゆく。”あ な た を あ い し て る” ……そう口でなぞったら、かなしみが私をちょうえつした。あなたが誰なのかもわからないのに。

忘却の恋歌

忘却の恋歌

とりもどしつつあるわたし あなたのことなんてこれっぽっちも 心なんてこれっぽっちも動いてないから 哀しいのはいやだよ ひとりにするのはやめてね 憎しみも向けたくないし ころしたくなんかないよ だからおねがい もうすこし もうすこしだけ騙されていてください あの風船が萎むころ 彼女はきっともどってくるから、ね。

階段

階段

物語を終わらせることができないのは何かの病気かと思っていたけれどただ単に忍耐が足りなかった.頭の中でつまらないからはやくやめなと警鐘が鳴っている.私が綴っても綴らなくても世界は変わらなくて救った気にも救われた気にもならない事に気がついてしまった.自己満足していた頃にもどったら窮屈だけれど幸せだろうか.自分のことを定義づけられたらやっと終えられる気がする.幻想を抱いていた方がよっぽど健康だねそうだよ

もっとみる
Sober

Sober

忘れたくて 必死で 自分のなかにあるものを 吐き出した 脳が麻痺して わからなくなってく あなたが誰だったのか 私達が何をしたのか
気がつけば 泣いていて 欲しくて たまらなくなる この感覚が気持ち悪くて 大嫌い なのに 症状は治らない
あなたの名前を見るたびに 高揚 緊張 焦燥 絶望 する 記憶が 引っかかって あなたの体を 蘇らせる ずっしりと重たい からだ わたしは 呼吸が浅くなる 動悸が

もっとみる
milk

milk

どんなに沈んだって
きっと明日にはもとどおり。
陽の光に抱きおこされて、
水面まで顔を出してしまうわ

どんなにへこんだって
時が過ぎればもとどおり。
暖かい空気に熱されて
膨らみはじめるのがわかる。

あなたがわたしを必要としていようと、 私にできることなど何もなくて、
ただ、笑う
ただ、泣く
ただ、喜び、怒り、悲しみ、感情を
前におしだす

あなたがわたしを必要としなくなったら
私は役目を終え

もっとみる

Just

音の流れないイヤホン

青い空にオレンジ色の光が点滅している

段差を叩く傘はスタッカートみたいに弾んで

踏み込んだ足は電車とホームの数センチの差を埋めた。

規則的なリズムに乗せて思うのは君のこと、

いまごろきっと… って泣きたくなるのは君のことだから

僕はきみにとってどれくらい必要な存在なのか

電光掲示板には答えが書いていないよね

あんなに大荷物で、一体どこへ行くというのだろう

もっとみる

正しさのために言葉を綴ることなんてしたくない。わたしはわたしでいるために、わたしを忘れるために、私を生きるために書くのだ。