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小説、詩、ことば

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よるが描いた世界
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#詩

波に酔う

波に酔う

文学をこねくり回してた時代のがよかったな. 女の主体性を論じれば空でも飛べる気がしてた. あなたが読む本の擦り切れたページには. 母を恋ふという文字を丹念に撫でた跡. 海に行きたいとわたしがあなたに言ったとき. わたしは死んでしまうあなたを想った. 波に. 呑み込まれて. 孤独に. 押し潰されて. 眠れない夜に流し込む液体は. あなたから愛を奪った. わたしから安らぎを奪った. 葉っぱを吸う女の子

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かこう

かこう

遅めの衣替え、あなたの聴いていた音楽をかけながら。粗く編まれたセーターの生地、額に汗が伝う。”You know I’m trying” この歌詞がきらいだ。だってわかっていた、あなたがどれほど努力してきたのか、あなたがどれほど失ってきたのか、どれほどの他人を傷つけ、自分を痛めつけてきたのか。あなたと一緒に過ごした服たちはまた今年も着られないままにタンスの奥へ押しこまれてゆく。まるで何もなかったみた

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無題

無題

愛をほかの人に託して、
責任転嫁。
広い宇宙のなかで、
あなたの代わりを探すのだけれど、
かたちのとおりに埋まらぬくぼみ、
どこか満たされない、ずっと泣いてるふり。
愛を、与えて欲しくて、
必死になって駄々こねる。わたし、
やっぱりあなたじゃないと、なんて、
使い古された皺くちゃのことば、
もう飽き飽きだよそんなの。懲り懲りだよ、
なのに、永遠を瞬間に感じるほど
あなたを待ちつづけている。
あなた

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 neutralmonaural

neutralmonaural

思い出しちゃったなんで文章書いてるか、劣等感まみれの私、世界に対して怒ってるけどそれってわたしに対しての怒りだよね。なんで認めてくれないのって、世界にゆって、自分に対して駄々こねてる。「ばかじゃない? あきらめな」って言われたほうがまだはやい、鋭い感情を持て余したからわたしは表現をはじめた、これからもかわれない認めないなら一生、創造をつづけていくべきだとおもうそれしか生きる道はない。

他者になり

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かえりたい。、。

隣りに寝ている女は僕の本当を知らない。女はよく食べ、よく笑う。僕のはなうたを聴いて涙をながし、瞳のなかをのぞいて憤る。白くて柔らかい肌を吸い上げると小さく嬌声をあげて、僕の身体を強く締め上げる。女は傲慢で罪深い。僕の魂を留めようとする。女の髪は短く、微かに木材の香りがする。振り向いてもこちらを見ていない。僕を見透かしてどこか遠い過去を覗いている。僕は嫌になって鍵盤を叩くけれど、女はもっと大きな音を

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ばかつまんないな世界 はよフィクション完成させてください よる持て余しすぎなんじゃないのきみ 君といったらきみのことなんだよ そうだ カフェインをトリスギルト目が冴えちゃうよねえ いいから黙って目瞑れよ弱虫

お願い、いなくならないで、いなくならないで、って、祈ってるんだけど。なにに対してか分らないの。無対象のわたし、消えゆく記憶に引き摺り込まれてゆく。”あ な た を あ い し て る” ……そう口でなぞったら、かなしみが私をちょうえつした。あなたが誰なのかもわからないのに。

上下線運転見合わせ

上下線運転見合わせ

2021.2.10

「何してるんだろ」

そう思った時が始まりで

車体が傾いた。

どうにもならない圧力で

他人が身体を預けてくる

あ、焼き鳥の匂い

肘がやさしく胸に触れる

なかったらいいのにこんなもの

スイカが地べたに這いつくばって

なぜか少しだけ可愛らしい

重い荷物ふたつ。

ロングスカートは階段をうまく登れない

なんて不便なんだ

馬鹿なのか

プラットホームの横で晩酌を

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さよならまでここに居てね

さよならまでここに居てね

振られる小説ばかり書く文化 機械の声がすこしだけ優しい 伸びきらないリードを先ゆく子犬 正面が怖くて目を逸らすのは私の癖 なんだか解けそうな気がする 呪縛 まだ次があるような気がする 線路をほじくり返す小学生 主婦の田中さんはやさしくて好きだ あいつは私のことを忘れているだろうか 想ってもいない わたしのこと 世界に真理なんてあるはずなくて 信じようとした私は美しかった もう戻らない一つひとつの時

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Sober

Sober

忘れたくて 必死で 自分のなかにあるものを 吐き出した 脳が麻痺して わからなくなってく あなたが誰だったのか 私達が何をしたのか
気がつけば 泣いていて 欲しくて たまらなくなる この感覚が気持ち悪くて 大嫌い なのに 症状は治らない
あなたの名前を見るたびに 高揚 緊張 焦燥 絶望 する 記憶が 引っかかって あなたの体を 蘇らせる ずっしりと重たい からだ わたしは 呼吸が浅くなる 動悸が

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Just

音の流れないイヤホン

青い空にオレンジ色の光が点滅している

段差を叩く傘はスタッカートみたいに弾んで

踏み込んだ足は電車とホームの数センチの差を埋めた。

規則的なリズムに乗せて思うのは君のこと、

いまごろきっと… って泣きたくなるのは君のことだから

僕はきみにとってどれくらい必要な存在なのか

電光掲示板には答えが書いていないよね

あんなに大荷物で、一体どこへ行くというのだろう

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