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自分を責めずに生きたいから【死にたい夜に効く話.27冊目】『嫌な気持ちになったら、どうする?』中村英代著

ネガティブな感情っていうのは、本当に厄介だ。

ズルズル引きずって、いつまでも頭から離れない。

相手がイライラしていると、負のオーラが移ってくる。

うっかり人と比べて劣等感に陥る。

ちょとしたことで、すぐに落ち込む。

自分で自分を責めていく。

世の中には、数えきれないほどの「ネガティブ」で溢れている。


きっと、そのネガティブを感じる「加減」も「ポイント」も人によって様々だろう。
だから、「これさえやっておけば、ネガティブなんて一瞬で消えますよ!」なんて都合のいい話はない。

どうやって、自分の中にあるネガティブと付き合っていくか。
一人一人が、自分にあった方法を身につけておけば、生きていくのが随分楽になるはずだ。

『嫌な気持ちになったら、どうする?ーネガティブとの向き合い方ー』

社会学者・中村英代先生による著作。
大学で教鞭をとられる中で、学生たちとの関わりから見えてきたリアルな声や、先生ご自身の体験を交えながら、日々避けては通れない「ネガティブ」な感情とどう向き合い、対処していくといいのかを教えてもらえる。

最初に、本書の目的が書かれているので、まずはそちらから。

本書の目的
①  ネガティブを理解する
②「相談なんか、しなければよかった」という現象を考える
③「問題の外在化」技法をマスターする
④  相談上手、相談され上手になる

中村英代『嫌な気持ちになったら、どうする?-ネガティブとの向き合い方-』筑摩書房、2023年、p.18


若者の目線に合わせて語りかけてくれるような先生の文章は、とてもわかりやすく、頭にスルッと入ってくる。
わかりやすい例として、妖怪ウォッチが出されたり。

それは、本書の目的の中の「③「問題の外在化」技法をマスターする」のところにあたる。

そうです。「問題の外在化」とは、ある人に妖怪がとり憑いていて、その妖怪のせいでその人は問題を起こしている、と考えてみることなんです。

同書、p.127

先生オリジナルの妖怪たちが例に出されるが、量がすごい。きっと「これは自分のことだ」と思うものが一つはあるはず。

 たとえば、自分へのダメ出しが始まったとします。この時、問題を外在化させると、「ホント、俺ってダメ」(内在化)ってならず、「今日は〈ダメダ神〉が頭のなかで猛威をふるっている(外在化)。風邪かも。宿題は明日にまわして早く寝よっ(問題に対抗)」みたいになるんです。
(略)
 さらに発展させると、自分がとり憑かれやすい妖怪を把握して、事前に対策を立てられるようになります。同時に、他人が何か変なことをしでかしても「ああ、妖怪が憑いてるんだなぁ」と寛容になれたりもします。

同書、p.129

他にも、ネガティブな感情を上手く転換させるための方法が紹介されている。


長年染みついた考え方のクセを変えるのは、一朝一夕でどうにかなるものではないだろうけれど、積み重ねによって変わっていけるのだと思う。

学校の勉強も大事かもしれないが、自分の気持ちをどうやって処理すればいいのか、それを知るための勉強も、若いうちにしておいた方がいい。

自分もこれまで散々ネガティブに振り回されてきた。でもある頃から、こういうネガティブを感じてしまうのは自然な反応なんだと受け入れられるようになってきた。

冒頭、先生もこのように書かれている。 

 そうして、いろいろな経験をするなかで、「嫌な気持ち(ネガティブ)」はとても大切な感情なのだ、なくてはならない感覚なのだ、ということがわかってきました。
 体だって「痛み」がなければ、怪我や病気の治療もできずに人は死んでしまいます。
 それと同じように、ネガティブはたくさんのことを伝えてくれるメッセンジャーです。私たちを守ってくれる存在ですらあります。私たちは痛みや苦しみに苛まれながらも、ある意味では彼らに守られ、そこから自己や世界を理解していきます。

同書、p.11

生きている限り、きっとまだまだネガティブなことは起きるんだろう。
引きずって、悶絶する夜も、またやってきてしまうかもしれない。

それでもなんとか、辛い夜を乗り越えよう。


〈参考文献〉
中村英代『嫌な気持ちになったら、どうする?ーネガティブとの向き合い方ー』筑摩書房、2023年

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