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分け与えるというDNA

先日、長年サルの研究をされていた武蔵大学の丸橋珠樹名誉教授が、よみたん自然学校に来てくださった。3年保育「幼児の学校」とフリースクール「小学部」の子たちに話をしていただくとともに、大人向けにも講義をしていただいた。その講義を私も聞かせていただきましたが、一番印象に残ったのは、サルとヒトの違いについての話でした。

まず、サルの実験動画を見ました。サルAのいる檻の外に2匹でロープを引っ張らないと引き寄せられない餌台があり、2カ所に餌が置かれました。サルAは何度か1匹で引き寄せようとしますが、うまくいきません。すると、サルAは隣の檻との間のドアを開け隣の檻にいるサルBを招き入れ、一緒に引っ張りました。そしてそれぞれ1カ所から餌を取って食べました。

今度は、1カ所だけに餌が置かれました。同じようにサルAはサルBを招き入れ、一緒に引っ張りました。そして、サルAだけが餌を食べ、サルBは餌を食べることができませんでした。丸橋先生によると、猿には上下関係があり、上の位のサルが優先されるというのです。次に、もう一度、1カ所だけに餌が置かれました。同じようにサルAはサルBを招き入れようとしますが、サルBは協力しようとしませんでした。丸橋先生によると、サルは見返りがないと協力しないのだそうです。

続いて、ヒトの動画を見せてもらいました。1歳ぐらいの子がいて、おやつが二つあると、一つずつ分けていました。さらに、おやつが一つしかない場合でも、それを半分にして分けようとするのです。1歳ぐらいの子ですから、別に親にそう躾けられてやっているわけではありません。丸橋先生によると、おそらく、何百万年というヒトの歴史の中で、例えば、シカを捕まえた時、これはオレが捕まえたから誰にもあげないと言って争うタイプと、食べ切れないからみんなで捌いて分け与えようとするタイプがいて、後者のタイプが繁栄し残っていったのだろうと考えられ、ヒトには分け与えるというDNAがあるのだろうというのです。

この話を聞いて、みなさん、どう思われますか?現代人はDNAどおり分け与えることをしているという実感はありますか?今、私たちが暮らす社会はどうなっているでしょう?良い成績を取って、良い学校に行って、良い会社に入るなんて発想は、昭和や平成初期の発想じゃないかと思っていましたが、今でも早期教育という名のもと、保育園でも習い事がたくさん設定されていて、早くから他の人より多くの知識と技術を得ようとする傾向が強くなっているように感じます。

時には他人を蹴落とし、人よりも上に立ち、多くのお金を稼げる人になろうとする競争社会が長らく続いているのです。そりゃあ、鬱になる人や自殺する人が増えるはずです。なぜなら、分け与えるというDNAに反することをひたすらしているのですから。最近では、人より優位に立つことを「マウントを取る」というそうです。この「マウントを取る」という言葉こそサル社会の言葉です。上下関係があり見返りがないと協力しないサル社会の言葉です。分け与えるDNAがあるヒトの社会ではしっくりこないはずです。

そこで、私は提案したいのです。もう、競争ばかりするのをやめて、分け与える社会に変えていきませんか?自分だけ良い成績を取ろうとせずに、一緒に学び合い学びを分け与えませんか?貧困にあえぐ人たちを横目に自分だけ稼ぐのをやめて、仕事を分け与えその対価である報酬を分け与えていきませんか?私は、ここにも、「誰一人取り残さない社会」を作るヒントがあると思うのですが、みなさん、どう思いますか?


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