なぜ、自然豊かな環境なのか
前回の最後に、子どもたちの好奇心や関心を程よく刺激する環境として、「自然豊かな環境」が大事だということを書きました。
今回は、その点についてもう少し掘り下げたいと思います。
子どもの時に自然豊かな環境で育つと、自然を好きになって自ずと自然を大切にする心が育つという考えを時々耳にしますが、私はその考えは間違っていると思っています。なぜなら、今の世の中を作ったのは、今の若い世代よりも私たちの世代よりも、もっと自然豊かな環境で育った人たちだからです。ただ、自然豊かな環境で過ごすだけで自然を大切にする心が育つという考えが通用しないことは歴史が証明しています。だから、もっと違った価値を自然という環境に見出し、子どもたちの学びの場として活かしていくことが必要であると思います。
私たちが自然豊かな環境がいいと考えている理由の一つは、その多様性です。例えば海に遊びに行った時、子どもたちは海で泳いで遊ぶだけではありません。魚など生き物に興味がある子は、磯や潮溜りで魚やカニなど捕まえようとします。しかも、沖縄の海には3歳児でも捕まえられる生き物がいます。それはオカヤドカリです。ほとんどの生き物は捕まえようとすると逃げますが、オカヤドカリだけは殻の中に収まり動かなくなります。誰でも捕まえることができる超初心者向けの生き物と言ってもいいかもしれません。また、海で泳ぐことにも生き物にも興味がない子は砂浜で砂遊びをしています。このようにさまざまな子どもの好奇心関心に応えてくれるのが、まさに自然豊かな環境の多様性です。公園の遊具ではなかなかこうはいかないでしょう。
一方で、子どもたちを見ていると自然は程よい刺激を子どもたちの好奇心・関心を与えているなと思います。人はかつて自然の中で狩猟をしながら生きていたことから、自然界にあるものの危険性と安全性を見分けていく能力を身につけるために、探究する欲求が備わっていると言われています。子どもたちが自然豊かな環境の中で、大人の想像もつかないようなことを次々と試す様子を見ていると、まさにその探究する欲求を発揮しているなと思います。
このように、「自然豊かな環境」は子どもたちの好奇心・関心に応えてくれるとともに、子どもたちの好奇心・関心を刺激してくれると言えます。つまり、子どもたちにとって内的環境である好奇心・関心の多様性と、外的環境である自然の多様性が相互に作用しあっているのです。これこそが、私たちが自然豊かな環境に見出している価値と言えます。
そして、子どもたちの学びの場に欠かせないのが、そばにいる大人の存在です。次回は、そのことについて書きたいと思います。