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おなかがすく話

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日本文化とごはん、カルチャー類 うつくしいものを書き留めます
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桜の森の満開の下で

桜の森の満開の下で



舞台を満開にする、幾万もの桜の木を、
今年に入って2度も目にすることになるとは
思ってもいなかった。

幸せと不幸せは紙一重みたいなもので、
ああ言えばこう言う、くらいのもので、
生きることと死んでいることも
そんなに大差がないんじゃないかと思っていた。

でも、確実に、死は存在する。
その魂を想い、恋し、悔しみ、
もうひとまわり、強くなる。
その強さは、涙がでるほどに愛しいものだ。

父の魂

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永い、永い言い訳

永い、永い言い訳



なんだかどうしようもなく苦しくて、何度も何度も顔を覆い隠して、深いため息をついた。どうしてそんなこと言うの、どうしてそんなことするの。そんなことの連続で、愛しきれない主人公と自分が、いつの間にか重なっていることに気がついてしまったりして、また深いため息をついた。

私の3メートル上くらいから見下ろすカメラのようなものがあって、他人ではないほどよく客観的な私が、あーだこーだ言ってくれたら、もっと

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おっさんとドローンからみた新世界

おっさんとドローンからみた新世界



アナログな人間だから未来を嫌っているわけではなく、ただただ、テクノロジーに洗脳されて自分の感覚が弱くなることにおびえているだけ。近未来的なものにワクワクしないし、強くなりたくもない。土にまみれて遊んで、効率とは遠くても魂と近い世界で生きていたい、ってそう思う。

ただ、未来はおっさんにも私にも70歳のおばあちゃんにもおとずれる。長く生きすぎたって、私もいつか言うのかな。一生懸命覚えたかけ算も漢

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映画「言の葉の庭」



「あなたがいたから僕がいる」

あなたと食べたラーメンや一緒に観た映画、知らなかった音楽とバンド、好きだといってくれた髪型、住んでいた街、夜中の2人乗り。もう引き返せないほど孤悲をしていた。強烈な孤独と戦う、私が私を信じることでしか相手と向き合えなかった。もっと、吐きそうなほど怒鳴り合いたかった、怒りをぶつけて泣き叫べばよかった。もっと、甘えればよかった、わがままを言えばよかった。可愛くなかっ

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Art / 岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ

Art / 岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ

岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ

カッコよく、美しい女性になりたいと思った。

まつげがお人形さんのように長く太く、

唇が分厚くて、グラマラスな体型。

女性らしい肉感があり、猫目でキリっとしている。

自分の直感を1番大事にしていて、

美しいものと、可愛いものが好き。

好きな人には優しいし、

それ以外には興味すらない。

ファッションとヘアメイクが好きで、

自分らしいスタイルを持っ

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恋のはじまり

恋のはじまり

理由をたくさん並べるよりも、「逢いたい」のひと言がいちばん伝わることもある。どうして逢いたいのか、いつ、なぜ。

そんな言い訳みたいな言葉はただの文脈を整えるための飾りで、そこに本心があるのかというと、また別問題なのだ。

たったひと言を伝えられる、勇気。

言葉は自己満足であってはいけない。

相手を幸せにするものでありたい。

紡ぐひとつひとつの言葉が真心であり、本能であり、

喜びや面白さ、

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しろいろの街の、その骨の体温の

しろいろの街の、その骨の体温の

「しろいろの街の、その骨の体温の」村田沙耶香

無償に泣きたくなった。

覚えてもないような思い出が

走馬灯のように身体を掻き毟る

痒い 怖い 寂しい

あの頃は全然楽しくなかった

すごく美しい恋愛映画を観て泣いた

魔法使いになるための努力だってした

本と映画とカラフルな絵に救われてた

本を抱えて帰ることが誇りで、

大人に褒められることで頭の悪い子たちを蔑んでいた

小さな三角形の中

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普遍的なこと

普遍的なこと



非常に普遍的なものが世の中には存在していて、誰かが誰かを気にしている、という人間同士の循環は、それはそれはロマンチックな世界をうむ。大きな道路に何台もの車が通って、決して鳥の声など聞こえなくて、そんな飽きれるほど冷たい世界でも、それでも人同士が生きる世界の中では、今日も誰かが誰かを気にしている。

普遍的な食べものが好きだ。それはあたたかく、いつ食べてもいつ行っても、ある、という絶対的なもの。

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