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読書感想 太宰治 「斜陽」

 今回は太宰治の斜陽について書かせて頂きます。
太宰治を改めて人気作家に押し上げた、ベストセラー小説。
初出 文芸誌『新潮』にて掲載
単行本初版発行は1947年 昭和22年 新潮社

「斜陽」新潮文庫版

あらすじ
 この作品により、後に「斜陽族」という言葉が生まれた、貴族の没落と、「デカダン」という虚無感や退廃的な人物、若しくは作家、集会。
このふたつが主軸となる内容で、シンプルに言うと斜陽とは=話しの中心となる元貴族の母、娘、息子が、戦中から戦後という時代の流れの中で、金銭的に一市民化していく様。
それに対して、仲間達を連れ歩き、付けで飲み廻るデカダン作家上原が描かれていく。

 感想としましては
まず、純文学作品には珍しく、今回の斜陽は一気読みしてしまいました。
没入感が凄まじく、登場人物が限られている事と、設定上の場所の移動が極めて少ないので、読み物、純文学としては、読み始めから入り込み、そのまま最後まで読み切ってしまう構成になっていると感じました。
娘 姉のかず子の心境としての独白が中心となり、後半に弟の日記、という流れも小気味良く進み、太宰らしく胸が痛みながらもラストまで一本道を歩いていくストーリーです。
これが当時の人達に広く受け入れられたのかと考えると、分かる様な、分からない様な。
すごい時代だったのだろうなと思ってしまいます。
太宰治作品の魅力である、退廃的である内側に秘めた純粋さが、かず子、母、弟の描写からひしひしとにじみ出る度毎に胸が締め付けられ、しかし、誰も正しいであるとか、ましてや正義であるとは表現されておらず、そのテキストの巧みな進行がさすがの太宰治だなと感じさせられます。

もうひとつ読了後に感じた事は、この作品は読む人によって、見方、つまり、どの登場人物が印象強かったか?、どの場面が重要だと思ったか?
それが全然違ってくるのでは?と思いました。
私は40歳男性ですが、私が読了後に一番印象に残ったと感じたのは登場人物としても、場面としても、お母さんでした。
さてさて、皆さんはどうお感じになりますでしょうか???
太宰治 「斜陽」

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