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「できない自分」の認め方

「おれ、できねぇもんって、言ってしまったほうが楽だぞ~」

成男と書いてシゲオと読む、たばこが大好きな理科の先生だった。5、6年生のときの担任の先生。今やったら色々問題だろ・・・ってことも言っていたけれど、私にとっては良い先生だった。

いつ、どんなシチュエーションで言われたのか、全く覚えていない。

それでも、この言葉だけが、たばこのヤニまじりのしゃがれ声で私の中に残り続けている。


「できないって、言っていいの?」

小学生だった私の単純な疑問だった。


当時いわゆる優等生タイプ。4人姉弟の長女である。期待をかけられたわけでもなく、勉強しなさいとは言われたこともなく、ただ「汲み取って」ここまでやれば8割、ここまでやれば褒められる、このレベルにたどり着きたい・・・そんな自分になりたい!その一心で、勉強していたように思う。


ポジティブ心理学を学んでいる今ならわかる。

私って「条件付きの自己肯定感」の持ち主。

ある一定の成果をあげられない自分は認められない。できない自分は、嫌なのだ。

偏差値で言えば60くらいには、いたい。偏差値75の奇人にはなれないけれど、偏差値30になる度胸もない。ちょっとよく見られたい、他人の目線がそこにはある。


いったい誰と、比べていたのでしょうか。

いったいなぜ「できない」と言えないのでしょうか。


今でもそんな恐怖にかられることがある。育休明けの異動で、初めての分野で、大ピンチだった時もそうだ。

大学出てるのにこんなこともできないの?

丸一日かけてこれしかできないの? 

そんな声がコワイ。忙しそうで周りに聞けない。でも、聞かないと何がどこにあるかもわからない…まさに大ピンチ。

最大の問題は「できない」「わからない」が言えなかったからだ、と今なら思える。(あと感謝。)



最近の学びから、感情や行動の前には思考があるらしい。

この場合、【できないと言えないから頑張って無理してしまう】という行動の前には、【不安・恐れ】【恥・心が傷つく】という感情があるのかな、と。

その感情の前にどんな思考があるかというと、

●【不安・恐れ】という感情の前には、将来悪いことが起きるんじゃないかという「未来への脅威」●【恥・心が傷つく】という感情の前には、自分が関係性に値しないのではないかという「関係性の喪失の恐れ」(参考:ニューヨークライフバランス研究所  Ari's Academia 2021年4月講義「ネガティブな感情を大切に幸せに生きる方法」より)


あー、わかるわかる。

学校生活でいえば、部活でミスばっかりしてチームメンバーにシカトされたとき・・・とか(関係性の喪失)

このテストで90点位以上取らないと、志望校にいけないぞ!って先生に脅されるとき・・・とか(未来への脅威)

いまだに、そういう場面のネガティブな感情は覚えているものだ。

関係性の喪失は本当に怖い。信じていたと思ったのに急に態度を変えられたときとか、気を許してプライベートな話をしてみたら、噂話のネタにされていた、とか。日常的にありふれている。

「ない」ほうがいいと思ってしまうくらい目につくことほど、「ある」のが常なのかもしれない。


それでも人は、


関係性が生きることの理由


怖いとか、恥ずかしいとかっていう感情は、

大切なものがあることの証


なんだそう。たしかに。たしかに。


「ネガティブな感情って、水の入ったコップみたいなものです。これ、重たいですか?重くないですよね。でも、これを一日中持っていなさいって言われたら、どうですか?急に重くなりますよね。」

ポジティブ心理学の松村亜里先生の言葉がとてもわかりやすい。

ネガティブな感情を持つことは悪くない。

でも、ずっと持っていることは悪影響。

「流せば良いんですね」と、続く。(おー、単純で難しい)

コップに溜まったネガティブな感情を、3割入ってるな〜、5割入ったな〜って。私って今怖いって感じてるんだな〜って、認めてあげる。

そしたら、コップを逆さまにしてみる。

ジャーっと、流せるらしい。


気の合う人とだけ一緒にいたらいい、万人と上手くいくのは難しい、仕事だと割り切って…など「関係性の喪失」を恐れていても仕方ないじゃないか、的なアドバイスはよく聞く。

けれども、急がば回れ。

ネガティブな感情を持たないように蓋をして生きるより、さっと認めて流してあげた方が恐怖心とか羞恥心をずっと持たずに済むのか。

だって、怖いし、恥ずかしいんだもん。



「おれ、できねぇもんって、言ってしまったほうが楽だぞ~」

小学生のときに出会った言葉は、とても的確だった。適当に生きろでもなく、挑戦せずに逃げまくれでもなく、なんとなく良いアドバイスとして私の中に残っていた。なんでだろ、10歳だった私の完璧主義を見越して、30歳過ぎの私にアドバイスをくれたのかな。

今更ながら、感謝があふれてきた。

ありがとう先生!

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